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【完結】前世で死に別れた忍者に、現代で溺愛婚を申し込まれました  作者: りすこ


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3-4

 わたしはカナちゃんと新宿に出かけた。日向様の家は都心にあり、山手線は三分に一度も電車が来ると知って、思わず目を丸くした。


「初音ちゃんの町は電車が来なかったのか?」

「一時間に一本でした」

「マジか……」

「乗り遅れると大変でしたね」

 

 電車内の人の多さに、めまいがした。ひっきりなしに扉が開閉され、人の波が去っては流れ込んでくる。息苦しさを感じながら電車を降りて、駅の広さに迷いそうだった。


「あの、カナちゃん……出口にA1とか、A2とか。なぜ、出口Aがたくさんあるのでしょう?」

「あー、なんでだろ? 迷わなきゃそれでいいって。こっち、こっち」

 

 地下迷宮のような駅を歩いて、階段を上り見えた景色にぽかんとした。山のような巨大なビルが、いくつも聳え立っている。見上げると、自分が小さくなった気がした。

 ガラス張りのビルは全体が磨かれた鏡のようで、上半分には澄み切った青空が映し出されていた。それが一棟ではなく、何棟もある。


「駅から山が見えないのですね……」

 

 思わずそんな感想を零すと、カナちゃんがくすくす笑った。


「でっかい街だからなー。なんでもそろうよ。早く、行こう」

 

 カナちゃんに手招きをされて、わたしは歩き出した。しばらく歩いていき、一棟の商業ビルに入る。自動ドアをくぐると、宝石箱のようにきらきらした世界が広がっていた。長いエスカレーターを登りながら、ぽつりとつぶやく。


「絵本の中に飛び込んだみたい……」

「くくっ。初音ちゃんは可愛いこというな。洋服を買いに行こっか」

 

 カナちゃんに勧められるがまま、白い内装がエレガントなショップに入った。


「三国さん、こんにちは」

「あら、若林様。お久しぶりでございます」

 

 ショートヘアでたれ目の美女が出迎えてくれた。


「三国さん、この子に洋服のコーディネートをしてあげてほしいんだ」

「かしこまりました」

 

 三国さんと呼ばれた美女は、ふんわりと笑ってわたしを店内に案内してくれる。

 彼女に勧められるままに、次々と洋服を試着した。

 白百合のようなフリルがたっぷりついたブラウス。チューリップを逆さにしたような、裾がすぼまったスカート。動きやすいデニムパンツ。着せ替え人形になったみたいに、次から次へと試着していく。


「ヤバ、全部、似合うじゃん。これも買い」

 

 カナちゃんはわたしを見ては目を見張って、どんどん服を買っていく。


「そんなに買ってもいいのでしょうか……」

 

 なにせ値段がすべて二万円以上だ。並ぶゼロの多さに、思わず震えた。


(上限はないと言われたけど……)


 気後れしてしまう値段だ。

 

「いいんだって。初音ちゃんは元がいいんだから、いいもの着た方がいいよ。次、これね」

 

 カナちゃんはもこもこのショートコートを手にして、わたしを試着室に閉じ込めた。

 

 値段は見てはいけない気がする。タグから目をそらし、わたしは恐る恐るふんわりとした白いショートコートに袖を通した。


(あ、……可愛い)

 

 着心地も良く、もこもこしたシルエットに和んだ。


「初音ちゃーん。着たあ?」

「は、はい! 着ました」

 

 試着室のカーテンを引くと、カナちゃんがパッと目を輝かせた。

 

「いいじゃん! 可愛い! 絶対、買おう!」

 

 カナちゃんの笑顔につられて、わたしもはにかむ。三国さんが藍色のワンピースドレスを持ってきて、わたしに勧めてくれた。


「こちらもお似合いになると思いますよ」

「天の川みたいなデザインで綺麗ですね」

 

 それは夜空に星が瞬いているようなドレスだった。日向様が着ていた浴衣に似た色だ。


「試したいです」

「どうぞ」

 

 ドキドキしながらワンピースドレスに腕を通す。鏡に映った自分は、どこかの令嬢のように清楚に映った。このドレスを着たら、日向様の隣に立ってもおかしくはない。契約とはいえ、彼に恥ずかしい思いをさせるわけにはいかないのだから。


(まるで、魔法ね……)

 

 シンデレラがドレスアップしたみたいだ。タグに書かれている値段を見て、息が詰まりそうだった。


(贅沢してはいけないのだろうけど、これは欲しい……)

 

 彼との思い出に、どうしても買いたくなってしまった。わたしは小さく拳を握って試着室のカーテンを開いた。


「いかがですか?」

「わお! そのドレスが一番、似合っているよ!」

「よくお似合いです」

 

 ふたりに褒められ、自信がむくむく沸き上がった。それも、合計金額を見た瞬間に、一気に吹き飛びそうになったが、カナちゃんとのショッピングは楽しいものだった。

 

 ショッピングを終えた帰り道、カナちゃんが「夕ご飯はどうする?」と尋ねてきた。

 

「わたしが作ってもいいですか?」

「えっ、いいけど。せっかくだからどこかで食べてもいいんだよ?」

「家事を全くやらないと落ち着かなくて……」

「あー、なんでも食うよ!」

「じゃあ、肉じゃがでも作りましょうか」

「いいね! 賛成!」

 

 カナちゃんが万歳をして喜んでくれて、わたしも笑顔を作る。それからカナちゃんと電車に乗って、日向様の家の近くのスーパーに寄った。

 

「あ、お米を見てくるの忘れました……」

「あー。冷蔵庫のものも見なかったなー」

「……買ったらご迷惑ですよね……」

「別にいいんじゃない? いつかは消費するんだし」

 

 それもそうか。わたしは二キロのお米と肉じゃがの材料を買った。分からないものは避けて、最小限だけ買いそろえた。


「ずいぶんと大荷物になりましたね……カナちゃん、そんなに持って大丈夫ですか?」

「へーき、へーき。米2キロぐらい軽いよ」

 

 カナちゃんはにっこりと笑って返事してくれる。明るい笑顔を見ていると、わたしも笑ってしまう。


「美味しいものを作りますね」

「おー、期待してる!」

 

 わたしたちは微笑みあって、それぞれの荷物を抱えながら家路についた。

 

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