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伊達政宗の七男に転生?!転移?!         ~伊達宗高伝~  作者: 榊原ヨッチロ
第二部 受け継ぐものと創るもの

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第七十九話 「そら豆うどんの開発」

 村田の台所に、新しい香りが立ちこめ始めたのは、澄姫の名が定まり、城内に穏やかな日常が戻った頃だった。

蔵王薬草果樹園の一角。

収穫されたそら豆が、籠いっぱいに並べられている。

「今年の出来は、さらに良いな」

宗高は手に取り、さやを割る。

中から現れた豆は、張りがあり、色も濃い。

結姫が微笑む。

「土と水が落ち着いた証です。

 治水の恵みが、こうして形になりますね」

宗高は頷いた。

「ならば――

 この恵みを、もっと広げる」

そこへ、黒前掛け組の頭領がやって来る。

「殿、そら豆の新しい使い道、

 考えてまいりましたが……」

「言ってみよ」

「粉にして、練り込むのです」

宗高の目が細まる。

「……麺か」


数日後。

村田城の台所では、試作が始まっていた。

蒸して潰したそら豆。

乾かして挽いた粉。

それを小麦と合わせ、水で練る。

「水加減が難しいな……」

「豆の甘みが出すぎると、

 麺として締まらぬ」

職人たちが額に汗をにじませる。

宗高は、黙ってその様子を見ていた。

「薬膳として考えよ」

その一言で、空気が変わる。

結姫が続ける。

「そら豆は、気を補い、

 胃を整えます」

「ならば、消化を助ける薬草を少量――」

「葛粉を少し加えましょう。

 つなぎにもなります」

試作は何度も繰り返された。

柔らかすぎて切れる麺。

色がくすむ麺。

香りが弱い麺。

だが、ある一打で、それは完成した。

完成

「……これだ」

茹で上がった麺は、

うっすらと緑を帯び、

ほのかに豆の香りを放つ。

箸で持ち上げると、

しなやかで、しっかりとした弾力。

宗高が一口すすった。

「……旨い」

それは派手な味ではない。

だが、身体にすっと入る。

「優しいが、弱くない」

結姫も口にする。

「薬膳としても、

 日常の食としても成り立ちます」

黒前掛け組の頭領が、思わず笑った。

「これなら、子どもから年寄りまで食えますな」

名付け

名を決める場で、雪王丸が口を出した。

「みどりのうどん!」

周囲が笑う。

宗高は、少し考え、言った。

「“そらまめうどん”でよい」

「飾らず、

 そのまま伝える」

結姫が頷く。

「作る者の心も、

 その方が届きます」


まずは村田の市で振る舞われた。

「なんだ、この麺は?」

「ほんのり甘い……いや、違う、旨い」

「腹に重くないな」

評判は瞬く間に広がる。

やがて荒浜港から、

乾麺として出荷が始まった。

「村田の新しき麺――

 そらまめうどん」

江戸の蔵王会の店でも扱われると、

薬膳と珍しさから人気を呼んだ。

 

ある夕刻。

宗高は家族でそらまめうどんを囲んでいた。

雪王丸は勢いよくすすり、

澄姫はまだ小さな手で器に触れている。

結姫が静かに言う。

「この麺も、

 治水から生まれたものですね」

宗高は、箸を置いた。

「川を治め、

 畑を守り、

 食が生まれる」

「それが、国を治めるということだ」

外では、蔵王からの風がやわらかく吹いている。

戦ではなく、

食で人を支える時代。

その象徴として、

そらまめうどんは、静かに人々の暮らしに溶け込んでいったのであった。


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