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伊達政宗の七男に転生?!転移?!         ~伊達宗高伝~  作者: 榊原ヨッチロ
第一部 伊達政宗の七男宗高

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第八話 「二つの名の間で」

夜。蔵王の風が静かに吹く。

宗高――いや、かつて“髙橋高宗”だった男は、月を仰いでいた。

村田の城下からは笑い声が聞こえる。黒前掛け組の者たちが「峰雪の雫」で祝杯を上げているのだ。

すべては順調。だが、心の奥に拭えぬ影があった。


「俺は……誰として生きているんだろうな。」


火山の噴火を鎮め、領を豊かにし、村田伊達家の誉れを取り戻した。

領民は彼を“殿”と呼び、敬い、慕ってくれる。

けれど、その呼び名を聞くたび、胸の奥で何かが軋む。


「俺は伊達宗高じゃない。……髙橋高宗なんだ。」


現代で暮らした記憶。

蔵王の山を登った日。

友と笑い、家族と語らい、あの日の空に広がっていた青。

そのすべてが、遠く霞の向こうへ消えようとしている。


時折、夢に見る。

スマートフォンの光、コンビニの明かり、テレビから音。

それらが恋しく、懐かしく、そして……痛い。


だが同時に、目を閉じれば、村田の領民皆の笑顔が浮かぶ。

働く者たち、笑う子供たち、そして笹丸やお八重――

宗高がこの時代で救った命の数々。


「令和の時代には戻ることなど、もうできぬ。

 ならば……俺は“宗高”として生きる。」


唇に微笑を浮かべながらも、心の奥では決意と哀しみが交差していた。

現代の知識は、この時代では奇跡にも、呪いにもなり得る。

一歩誤れば、あやかしと呼ばれる。

それでも――彼は進むしかない。


「蔵王が俺をここへ導いたのなら、きっと意味がある。

 この時代に、俺が残せる“未来”があるのなら……。」


「髙橋高宗としての俺も、ここに生きている。

 この命は、二つで一つだ。」


夜空を渡る風が頬を撫でた。

蔵王の峰が月光を反射し、まるで応えるように白く輝く。


「――行こう。まだ、この先がある。」


宗高の瞳には、迷いの奥に宿る確かな光があった。

それは、“現代の青年”と“伊達の武士”がひとつになろうとする、静かな覚悟の現れだった。

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