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伊達政宗の七男に転生?!転移?!         ~伊達宗高伝~  作者: 榊原ヨッチロ
第一部 伊達政宗の七男宗高

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第五十九話 「安らぐ場所」

 村田城下に、ようやく静かな朝が訪れた。

宗高は発足式から三日ぶりに戻ってきた。

結姫は雪王丸を連れて城門前まで出迎えていた。


雪王丸はまだ三歳。

父の姿を見つけた瞬間、ぱっと顔を輝かせ、転がるように走っていく。


「とと様っ!!」


宗高は笑みをこぼし、膝をついて両腕を広げた。


「雪王丸、今、帰ったぞ!」


勢いよく抱きついてくる小さな体を抱き上げると、

結姫が袖を揺らしながら微笑んだ。


「お帰りなさいませ、殿。……お疲れではありませんか?」


「結の顔を見ると、疲れも吹き飛ぶわ。」


結姫の頬がわずかに赤く染まり、城下の風がそっと二人を包んだ。



城内の奥、小さな庭を望む座敷にて。

結姫は宗高のために、薬草と果実を組み合わせた温かい甘茶を用意した。


「どうぞ。蔵王の青葉を少し混ぜてあります。

 身体の疲れが取れるように。」


宗高は湯気の立つ茶を受け取り、香りを吸い込んだ。


「……落ち着くな。結の茶は、どれほど忙しくとも変わらぬ味だ。」


結姫は嬉しそうに微笑む。


雪王丸は隣で、木彫りの蔵王丸(船の模型)を揺らしながら、

父に報告を始めた。


「とと様! ゆきおう、お手伝いしたのです! 畑で、そら豆の芽を抜かぬで守ったのです!」


宗高は笑いながら雪王丸の頭を撫でる。


「おお、そうか。よく守ったな。お前も立派な村田の侍だ。」


「えへへ……!」


結姫はふたりのやりとりを優しい目で見つめた。


「雪王丸は畑の者たちにも可愛がられておりますの。

 “若君さまは働き者だ”と。」


「そいつは頼もしい。」


宗高の胸に、久しく味わえなかった安堵が滲んだ。



昼前、家族三人で蔵王薬草果樹園へ向かった。

宗高の目には、結姫が蓄えてきた知識の跡がはっきり映る。


「ここは桃の若木……いや、配置が変わったな?」


結姫が嬉しそうに頷いた。


「はい。陽の光がよく入るよう、右近殿と相談して植え替えました。

 今年は薬果酒も“桃の清水”が多く作れましょう。」


「そうか……俺の留守を、よく支えてくれた。」


「殿の志が、皆を動かしているのです。」


照れたように言う結姫。

宗高はそっとその手を握った。

雪王丸は前をぴょこぴょこ歩き、蝶を追いかけている。


「とと様! かあ様! はやくー!」


親子の笑い声が、果樹園に柔らかく響いた。




夕刻、久しぶりに三人で囲む食卓。

“そら豆の葛餡煮”と“薬草蒸し鶏”が並ぶ。


雪王丸は好物を前に頬を光らせた。


「とと様、これ、おいしいです!」


「いっぱい食べろ。雪王丸が元気でいてくれるのが、父の喜びだ。」


結姫はそっと宗高の顔を見た。


「蔵王会と青葉会のこと、負担になっていませんか?」


宗高は少し考え、正直に答えた。


「……大きな役だ。だが、それだけに村田、伊達家の未来が開ける。

 怖くなるほど、責任も重い。」


結姫は手を伸ばし、宗高の手を包んだ。


「殿が迷った時は、わたくしが支えます。

 どうか独りで抱えないでください。」


宗高の胸に静かに沁みた。


「ありがとう、結。……俺の帰る場所は、ここだ。」


雪王丸が笑いながら二人の間に割って入る。


「ゆきおうも!」


「もちろんだ。」


宗高は息子を抱え、三人で寄り添うように笑った。




雪王丸を寝かしつけたあと、

結姫は灯りを落としながら小さく囁いた。


「今日の殿は、とても良い顔をしておりました。」


「家族の顔を見れば、良い顔にもなるさ。」


結姫はそっと寄り添う。


「殿……これからも、どうかお傍で歩ませてください。」


宗高は静かに頷いた。


「共に、未来を作ろう。村田のため、雪王丸のため、そして――俺たちのために。」


結姫は幸せそうに微笑み、そっと肩にもたれた。


夜風がそよぎ、

村田城に、久しぶりの安らぎの時が流れた。


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