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伊達政宗の七男に転生?!転移?!         ~伊達宗高伝~  作者: 榊原ヨッチロ
第一部 伊達政宗の七男宗高

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第四十九話 「決意」

 江戸湾に薄いもやがかかる早朝。

 蔵王丸は白い波を切りながら、ゆっくりと入港した。


 宗高は船首に立ち、江戸の町を見つめる。

 普段なら賑わっているはずの街道が、どこか沈んで見える。


「……やはり病が広まっておるな」


 右近がうなずく。


「はい。庄太郎殿からの報せどおりでございます。

 町人たちも外に出ず、活気がまるでない様にみえます」


 宗高は深く息を吸い、命じた。


「上陸前に全員、調合した薬草水で手を洗い、喉を潤せ。

 それから白石木綿の手拭いで口と鼻を覆い、町に入る」

「体調がすぐれぬと思ったら迷わず伝えよ」


「はっ!」


 船員たちは続々と桶に集まり、強い薬草の香りを放つ水で丁寧に手を洗う。

 口覆いの手拭いを結び、荷物の確認を始めた。


 宗高も白い手拭いを結び、結姫からの薬草袋を服の内に忍ばせる。


「江戸に少しでも安らぎを届けるぞ。皆、心をひとつに」


「おおっ!」


 士気は高く、船は静かに桟橋へと着いた。





 上陸してすぐ、宗高たちは江戸の異様な静けさに目を見張った。


 普段なら商人の声が響く道は、寝静まったように沈んでいる。

 閉じられた暖簾、門前に積まれた薬草を求める札。

 遠くから聞こえる咳の音。


 そこへ、息を切らせて走る一人の若者が近づいた。


「宗高様っ! 右近様!」


「庄太郎!」


 大沼庄太郎は目の下に深い隈をつくり、しかし必死に笑った。


「……よく、よく来てくださいました……。

 蔵王会の店は何とか開けておりますが、病が急に広まりまして……

 薬草も薬酒も求められ、店には朝から人が押し寄せております」

「店の者にも病にかかる者が出始めて…それでもなんとか…」


「よく耐えた。ようやってくれたな」


 宗高の言葉に、庄太郎は胸を震わせた。


「皆の命に関わることです。

 村田の名を守るためにも、踏ん張らねばと思いまして……!」


 しかし続く言葉は苦しかった。


「ですが、人手が足りませぬ。

 養生処をつくりたいと考えていますが、

 幕府への許可を取りつける力が、私には……」


「それをこそ、我らが為す」


 宗高は庄太郎の肩に手を置いた。


「庄太郎、おぬしは店を守れ。

 江戸の町衆へ必要な物資を届けるのだ。

 幕府への口上は、我と・右近が行う」


「……はいっ!」




 宗高たちは江戸城の詰所へ向かい、伊達家中の案内で老中の前へ出た。


「村田城主・伊達宗高、ならびに家老の福地右近、参上いたしました」


 老中は病が広がるなか、すでに疲れた面持ちで宗高を見た。


「聞くところ、おぬしは薬草袋や布を持参したとか。

 何故この時期に江戸へ?」


 宗高は一歩進み、深く礼をして答えた。


「江戸に流行り病の兆しありとの急報を受け、

 村田より救援の物資を運んで参りました。

 薬草、薬湯の材料、そして口覆いの手拭いでございます」


 老中たちの目が変わる。


「ほう……。確かに町には薬草が不足しておる。

 それを分け与えるつもりか」


「はい。しかし無秩序に配れば混乱が増すだけ。

 寺社へ“養生処”を設け、

 幕府の御名にて配布・療養を行わせていただきたく存じます」


 宗高の声は静かだが力に満ちていた。


 老中たちは互いに目を見交わす。


「……伊達政宗殿の七男という噂は聞くが、

 噂以上に胆が据わっておるな」


「この状況、放置すれば江戸は乱れ、商いも治安も崩れます。

 どうか――お許しを」


 しばし沈黙ののち、老中は頷いた。


「許す。

 寺社奉行から寺社の者へも手配しよう。

 おぬしらの働き、将軍家にも必ず伝えようぞ」


「かたじけのうございます!」





 詰所を出た瞬間、右近が安堵の息をついた。


「宗高様、上々の応対でございました」


「これで救える命も増える。

 庄太郎にもすぐ知らせねばな」


 宗高は江戸の空を見上げる。


 重い雲が垂れ込めているが――

 その向こうに、必ず光を取り戻す未来があると信じて決意した。


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