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伊達政宗の七男に転生?!転移?!         ~伊達宗高伝~  作者: 榊原ヨッチロ
第一部 伊達政宗の七男宗高

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第四話 「影と味の盟約」

 夜。

 月は雲に隠れ、蔵王の裾野に冷たい霧が降りていた。

 村田城の蔵の灯を落とし、宗高は一人、土間の奥に立っていた。

 父・政宗の言葉が、まだ胸の奥で響いている。


 「忘れるな。民の腹を満たす者は、武よりも尊い。だが、味の力を侮るな――それは国をも動かす。」


 民を守る手は、光の届かぬところにも伸ばさねばならない。


 そのとき、闇の中で草履の音がひとつ、ふたつ。

 黒ずくめの影が、静かに姿を現した。


「……宗高様にお目通りを願う。」


 声は低く、乾いた風のようだった。

 影の中心から、一人の男が一歩進み出る。

 浅黒い顔に、鋭い眼差し。腰には短刀を二本差し、脚には黒い脛巾はばき


「名は?」


「黒脛巾組頭、鷹丸たかまると申す。」


 宗高は彼を見据えた。

 政宗の命で、村田領の治安と商路を監視していた伊達の忍び――それが黒脛巾組だ。

 その鷹丸の存在は、噂では聞いていたが、実際に会うのは初めてだった。


「父上の遣いか?」


「いえ。政宗公より“見よ”とのみ命ぜられました。

 宗高様がどのような御方か、我の眼で確かめよと。」


「なるほど。見張られていたわけだな。」


「……左様にございます。」


 宗高は笑った。

 忍びの男が一瞬たじろぐ。その笑みには恐れも怒りもなかった。


「良い。ならば見せてやろう。――民を飢えさせぬ策を。」


 宗高は足元の甕を指した。

 蓋を開けると、ふわりと香ばしい香りが広がる。

 麦と味噌を合わせ、炭火で練り上げた新しい保存食――「蔵王焼き味噌」だった。


「これを商人たちに運び、城下へ売り捌きたい。

 だが、街道には野盗が出ている。商人どもは怯えて動かぬ。」


「……そこで我らを使うと?」


「取引ではない。“協力”だ。

 我が黒前掛け組が“味”で民を支え、

 お前たち黒脛巾組が“影”でそれを守る。

 光と影、両輪でこの地を動かす。」


 鷹丸は目を細めた。

 これまで多くの武将を見てきた。

 だが、この若きお方は違う。

 恐れぬ心と、民を思う温かさを併せ持つ――まるで炎のようだ。


「宗高様。ひとつ伺いたい。

 我ら忍びは、裏で血を流す者。

 日の下に立つ者とは、決して交わらぬ定めにございます。それでも、共に行けと?」


「血を流す者こそ、血を止める力を持つ。

 ――ならば、共に歩こう。

 お前たちの刃を、民を守るために使いたい。」


 その一言に、鷹丸は深く頭を垂れた。

 忍びの男たちが、静かに片膝をつく。


「黒脛巾組、宗高様の影とならん。」


 宗高は一歩進み出て、甕の味噌を手に取り、鷹丸に差し出した。

 その手は、かすかに震えていたが、決意に満ちていた。


「これが盟約の証だ。味を守るのは、お前たちの刃だ。」


 鷹丸は頷き、味噌を舐める。

 舌に広がる旨味に、わずかに笑みを浮かべた。


「……なるほど。これは戦にも勝る力かもしれませぬな。それでは、前に報告を差し上げた笹丸をお側で、仕えさせて頂きたくお願いしたく。」


「良いだろう。笹丸を側に置こう。戦わずして国を守る――それが俺たちの戦だ。」

 

 蔵の外では、夜風が蔵王の山を撫でていた。

 その風の音が、まるで二つの影の契りを祝福するかのように響く。


---


 その夜から、村田の商路に影が走り始めた。

 黒脛巾組が護衛し、黒前掛け組が運ぶ。

 味噌の香りは街道を越え、やがて仙台城下へと届いていった。


 そして人々は語る。

 「村田には黒き前掛けと黒き脛巾がある」と。

 それは光と影の盟約――

 民を守る、新たな伊達の両輪になるのだった。

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