第三十四話 「医食同源の料理」
――蔵王薬草、村田の恵みで病を遠ざける“食”を作る
村田養生処が開かれてから数週間。
患者がぽつぽつと訪れるようになり、結姫は忙しくもやりがいのある日々を送っていた。
そんなある早朝のこと。
宗高は右近、蔵王七翼、黒前掛け組たちを集めた。
「皆、今日から新たな試みを始める。
村田で採れる薬草と果実、そして黒前掛け組の料理の技を合わせ――
“医食同源”の料理を作るのだ」
一同が息を呑む。
「医食同源、でございますか……」
右近が興味深げに眉を上げる。
「病を治す薬も、身体を作る食も、根は同じだという考えだ」
「つまり、食べて治す料理ってことですか?」
「うむ。蔵王薬草果樹園の恵みを活かし、病に負けぬ身体を作る。
養生処とも連携する村田の新たな柱だ」
結姫が静かに進み出た。
「わたくしが薬草の効能をお伝えします。
皆さまには、安全で美味しく、村田の力となる料理に仕上げていただければ」
黒前掛け組は一斉に胸を張った。
「お任せを!!」
◆薬草と料理の“出会い”
その日、蔵王薬草果樹園で採れたばかりの薬草や果実が集められた。
白蔵草、蔵王赤梅、山葡萄、香生姜、黄金人参……
どれも香り高く、生命力に満ちている。
「まずは白蔵草。熱を下げ、身体の巡りを良くします」
結姫が説明すると、笹丸がじっと見つめた。
「……これを、どう料理に?」
「苦味があるゆえ、煮込みに向きます。肉と合えば香りが引き立つはずです」
「ならば“白蔵草と鶏の薬湯”だな!」
黒前掛け組の若衆が一斉に動き出す。
「蔵王赤梅はどう使うのです?」
十蔵が質問すると、結姫が微笑んで答えた。
「疲労回復、食欲増進に良うございます。
酸味を活かせば、さっぱりとした料理になりますわ」
権七がそこで声を上げる。
「ほいなら、“赤梅と山葡萄の甘露煮”はどうでござんしょう?
薬にもなりますし、養生処の患者にも優しい甘さになります」
「良い」
宗高が頷くと、結姫も嬉しそうに同意した。
「村田の名物にもなりましょう」
◆試作、そして試食会
厨房には薬草と食材の香りが満ち、湯気が立ちこめた。
若衆が大鍋をかき回しながら叫ぶ。
「白蔵草、火を通すと香りが柔らかくなるな。
鶏の旨味に負けてねぇ!」
「蔵王赤梅、甘露煮うまいです! 」
「焦がすでないぞ!」
「は、はいっ!」
やがて――宗高、結姫、右近、七翼が試食席についた。
「まずは、白蔵草と鶏の薬湯を」
黒前掛け組の女衆が差し出す。
宗高がひと口含む。
「……旨い。薬草の苦味が影を潜め、鶏の滋味が際立つ。
これなら病人も食べられよう」
結姫もそっと味見して、思わず目を丸くする。
「身がほろりと崩れ……白蔵草の香りが鼻に抜けます。
これなら身体が温まり、巡りが良くなりますわ」
若衆の顔が真っ赤になる。
「そ、そんな褒められたら、おら照れるでねぇの!」
次に赤梅の甘露煮。
右近がひと口食べて、感嘆した。
「爽やかな酸味と甘み……。これは上等の菓子にもなりますぞ」
「山葡萄との相性も抜群です」
結姫が笑う。
「村田名物“蔵王甘露”として売り出せそうだ」
宗高が言うと、権七が歓声をあげた。
「名前まで頂けるとは光栄でござんす!」
◆新たな医食同源料理の誕生
こうして完成した村田の“医食同源料理”は――
◆ 白蔵草と村田鶏の薬湯
◆ 蔵王赤梅と山葡萄の甘露煮〈蔵王甘露〉
◆ 黄金人参と香生姜の巡り膳
◆ 果樹園の恵み茶〈結の香〉
いずれも身体を整え、病を遠ざけるための料理でありながら、
村田の恵みが詰まった“美味”として仕上がった。
宗高は深くうなずき、皆の顔を見渡した。
「これらを、養生処に、村田の食卓に広めよう。
“病に倒れぬ村田”を目指す第一歩だ」
「おおーっ!!」
一同の声が村田城下に響いた。
その声はまるで、未来へ続く希望そのものだった。




