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伊達政宗の七男に転生?!転移?!         ~伊達宗高伝~  作者: 榊原ヨッチロ
第一部 伊達政宗の七男宗高

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第三話 「父・伊達政宗」

 仙台城、本丸御殿。

 冬の朝、白銀の庭を渡る風が、静けさを破るように吹き抜けた。

 伊達宗高――かつて現代人・髙橋高宗だった男は、緊張を胸に、長い廊下を歩いていた。


「殿、まもなくお出ましです。」


 案内の家臣が頭を下げる。

 宗高は、手に握る木箱を見下ろした。

 中には、黒前掛け組が生み出した新たな味――「蔵王権現味噌」と、その味噌を使った「味噌焼き豆腐」が入っている。

 今日の謁見は、この功績を報告するためのものだった。


 襖が開かれる。

 薄明の中、座していたのは、一つの眼で鋭く全てを見透かす男――伊達政宗。


「宗高、久しいな。刈田岳の祈祷で、命を落としそうになったと聞いておったが……見事に蘇ったか。」


 その声には威圧と、どこか探るような冷ややかさがあった。

 宗高は深く頭を下げる。


「父上、宗高、蔵王権現の加護により一命を取り留めました。そして……この地を救うため、微力ながら働きを。」


「ふむ。村田の噂は耳にしておる。飢えが止み、商人が集い、城下に新しき香が満ちておるとか。」


「はい。“黒前掛け組”と名づけた料理衆の働きにございます。」


「黒前掛け、とな。……妙な名だ。」

「伊達の忍び集団黒脛巾組と掛けたのか。」


 政宗の片眉が動く。宗高は微笑み、箱を差し出した。


「恐れながら、これがその成果にございます。」


 蓋を開けると、温かな香りが広がった。

 深い琥珀色の味噌を溶かした汁が湯気を立て、香ばしく焼かれた豆腐の表面がきらりと光る。

 御膳の上に置かれると、政宗の眉がわずかに動いた。


「……ほう。良い香りよの。」


 政宗は箸を取り、一口、口に運ぶ。

 次の瞬間、その独眼が静かに見開かれた。


「……味が、生きておるな。」


「はい。米麹の割合と発酵温度を調え、短期間で旨味を引き出す工夫をいたしました。民が冬を越すための知恵にございます。」


「短き日数で、この味か。なるほど、民の腹を満たし、心を繋ぐ策……面白い。」


 政宗は口角を上げた。

 その笑みには、猛将の誇りと、父としての喜びがわずかに滲んでいた。


「宗高。おぬしは刀よりも“味”を武器とするか。」


「はい。刀は命を奪いますが、食は命をつなぎます。村田の地を豊かにし、仙台を支える力にいたしたく。」


「……ふん。奇異なことを申す。だが、伊達の血を引くならば、常道を破る胆も必要よ。」


 政宗は立ち上がり、宗高の肩に手を置いた。

 その掌は熱く、まるで蔵王の炎のようだった。


「よいか宗高。わしは常に“天下を見ておる”。

 だが、おぬしは“民を見よ”。

 上に立つ者と下を支える者――両の目がそろってこそ、真の国が成る。」


「……父上。」


「黒前掛け組、その名、気に入った。

 よって、村田領に“味の奉行所”を置くがよい。

 仙台藩の食と商を担うこと、そなたに任せる。」


「ははっ!」


 宗高は深く頭を下げた。

 背中に伝わる政宗の声が、厳しくも温かく響く。


「忘れるな。民の腹を満たす者は、武よりも尊い。

 だが、味の力を侮るな――それは国をも動かす。」


 宗高の胸の奥に、熱が宿った。

 蔵王権現の力ではなく、父から授かった“信”の炎だった。


---


 謁見を終え、雪の舞う庭を歩く宗高の背に、又兵衛が駆け寄った。


「殿! お顔が晴れやかにございますな。」


「ああ。これで村田は、ただの一領地ではない。――伊達の台所となる。」


 宗高は雪を踏みしめ、遠く蔵王の山を見上げた。

 その頂から吹く風が、まるで祝福するかのように彼の黒前掛けを揺らした。


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