表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伊達政宗の七男に転生?!転移?!         ~伊達宗高伝~  作者: 榊原ヨッチロ
第一部 伊達政宗の七男宗高

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/79

第二十一話 「新品種そら豆  誕生」

 村田の田畑は、澄川用水路の完成で息を吹き返していた。水が安定して流れ始めたことでた田畑は豊かさを取り戻し、人々の顔に笑みが戻った。そんな中で宗高と右近が特に力を注いでいたのが、新品種のそら豆の栽培である。


 試験畑のそら豆は、通常の倍ほどもふっくらとして、淡い翡翠色のさやを陽光に輝かせていた。


「……見事ですな、殿。ここまで粒が大きく、しかも甘みまで強いとは。蔵王の加護に加え、殿の工夫あってこそでございましょう」


 右近が誇らしげに言うと、宗高はさやを一つ摘んで軽く振り、中の豆がころりと転がる音を確かめる。


「澄川用水路の水が良いのだ。あの水は土を傷めず、豆の甘みを引き出している。だが――右近、加工こそが本番だぞ」


「承知しております。黒前掛け組の面々が、すでに幾つか試作品を作っております」


 村田城の調理棟では、湯気と香りが立ちのぼっていた。黒前掛け組の若者たちが、煎りそら豆、甘煮、乾燥粉末、さらにはそら豆味噌まで試作している。


「殿、こちらをご賞味くだされ!」


 差し出されたのは、軽く塩をまぶして煎ったそら豆。しかし、噛んだ瞬間、ほのかな甘さと香ばしさが口に広がった。


「……これは、都でも売れる味だな」


「でしょうとも!」

と右近は胸を張った。


 別の器には、そら豆を丁寧にすりつぶし、白味噌と甘葛とで合わせた柔らかい緑色の味噌がある。宗高が舐めると、思わず眉が上がった。


「上品な味だ。茶会の菓子代わりにも使えそうだぞ」


「はい、殿。都での評判を得られれば、村田の名は一気に広がりましょう。新たな名産品にございます」


 宗高はうなずき、試作品が並ぶ長机を見渡した。

 ――この地の未来が、確かに形になりつつある。


 そのとき右近が、ふと真顔になった。


「殿。新品種に名を付ける時が参りましたな。名が無ければ領民にも売れませぬし、ましてや都では扱ってももらえませぬ」


「うむ……名は重要だ」


 宗高はそら豆を光にかざし、静かに考え込む。

 蔵王の加護で災いを退けた日々。

 澄川の清水がもたらした豊穣。

 村田の人々の汗と笑顔。


 それらが脳裏に浮かび上がる。


「右近。この豆の甘みは、澄川の水あってこそだ。だが同時に、民の汗と想いが詰まっている。ならば――」


 宗高はゆっくりと名を口にした。


「『澄王の恵 村田そら豆』(ちょうおうのめぐみ むらたそらまめ)これが良いのではないか」


 右近は目を瞬いた。


「澄川の“澄”と、蔵王の“王”……。

 なんと、見事なお名にございます!」


「清らかな水の恵みと、王の如き味わい。村田を象徴する名にしたかった」


「殿、すぐに札を作らせましょう。これより村田領の名産として、都へも献上できまする!」


 右近は嬉しさを隠さず、飛び跳ねるように作業場へ戻っていった。


 宗高は試験畑に目を向ける。風がそら豆の葉を揺らし、その緑は小さな波のように広がっていく。


 ――名が与えられた瞬間から、作物は文化となる。

 村田の未来は、この緑色の宝でさらに拓かれるだろう。


 宗高は深く息を吸い込み、そら豆の香りを胸いっぱいに満たした。


「これで、村田はもっと良くなる……必ず」


 そこへ戻ってきた右近が、息を弾ませながら言った。


「殿! 札だけでなく、箱の意匠も考えましょう。都で売るなら、見栄えも肝要にございます!」


「ふふ……慌てるな右近。だが、その意気は良い。共に村田を豊かにしていこう」


 新たな名産品「澄王の恵 村田そら豆」はこうして誕生したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ