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伊達政宗の七男に転生?!転移?!         ~伊達宗高伝~  作者: 榊原ヨッチロ
第一部 伊達政宗の七男宗高

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第二十話 「澄川の水を村田へ サイフォンの奇跡」

春の終わり、蔵王の雪解け水が澄川に勢いよく流れ始めた。

 その川沿いに、宗高と福地右近、そして七翼が並んで立っていた。


「……澄川は豊かな水を抱えながら、村田の田畑には届かぬ。

 堤が高く、標高が合わず、流れが逸れてしまうからです。」


 右近が地図を広げ、村田近郊の標高差を指し示した。


「だが殿。この高低差ゆえ、どうしても水は越えませぬ。

 水は高きから低きへ。これは天地の理。」


 宗高はゆっくりと川へ視線を向けた。

 静かに、しかし確信を秘めて言った。


「――その理を曲げずに、越える方法がある。」


 七翼の面々が顔を合わせる。

 赤坂兵部が眉を上げた。


「水が……高いところを越える、ですと?」


「うむ。

 南蛮の言葉で“サイフォン” という仕組みだ。」


 宗高は地面に棒で図を描く。

 川から取水し、一度低地へ落とし、

 封じた管の中で水が引かれる力を利用し、

 “丘を越えて” 田畑側へ水を送る構造。


「管の中を満たせば、水は自ら流れ続ける。

 ――まるで蔵王山の息吹が畑へと駆けるようにな。」


 説明を聞いた右近は、長く息を吐いた。


「殿……それが本当に可能であれば、

 村田だけでなく、小泉の田まで潤います。」


 勘平が目を輝かせ、

「街道沿いの茶屋も米が増えれば活気づく!」

 権七は腕を組んで笑った。

「殿、こりゃあ村田どころか、仙台を揺るがす大事業ですぜ。」


 

◆ 工事開始


 数日後。澄川沿いには人夫と職人が集まり、木の樋、鉄鉢、縄、炭材が山と積まれた。


 宗高は木樋を指さす。

「まずは管を通す。継ぎ目は “漆と麻布” で固く塞げ。

 水が漏れれば、サイフォンは動かぬ。」


「承知しました!」と職人たちが声を上げた。


 右近が宗高の側に立ち、静かに言う。

「殿。領民は期待しております。必ず成功させましょう。」


「もちろんだ。……右近、計測を頼む。高さの差は一分でも狂うな。」


「御意。」


 日下十蔵は記録を取り、

清三郎は木材と人足の算段に奔走し、

権七と勘平は現場を走り回る。


 まさに七翼総動員の大事業となった。


 

◆ 運命の日


 宗高の権能の力もあいまって、半年と短い工期を経て、巨大な木樋サイフォンが姿を現した。

 宗高は深く息を吸い、皆に告げた。


「――水を引く。」


 縄が引かれ、澄川の水が取水槽に流れ込む。

 ゆっくり、ゆっくり樋が満ちていく。


 その瞬間、右近が声を荒げた。


「殿! 継ぎ目三番、わずかに漏れ!」


 宗高は叫ぶ。

「兵部、権七! 木栓と麻布を押し当てろ!」


「任せろッ!」


 二人が樋に飛び付き、応急で塞ぐ。

 水圧が増し、樋全体が軋んだ。


 周囲は固唾を呑んで見守る。


 やがて――


 樋の向こう、丘陵の反対側。

 乾いた水路に、ぽたり……ぽたり……と水が落ちた。

 そして細い流れが太くなり、一気に奔流となった。


「……流れたッ!!」


 職人が叫び、村人たちが歓声を上げる。

 右近はその場に膝をつき、震える声で呟いた。


「殿……成功です。澄川の水が、村田へ……」


 宗高もゆっくりと目を閉じ、天を仰いだ。

 風が吹き、蔵王の雪の香りが運ばれる。


「これで今年の田は救われる。

 右近、皆……よくやってくれた。」


 その声に、七翼は一斉に頭を垂れた。


「殿のご慧眼あってこそです!」


 

◆ 澄川の恵み


 数日後。

 新しい水を得た田は早速潤い、村人たちの顔には笑顔が戻った。

 これで稲だけでなく、紅花や空豆の新畑にも水が行き渡る。


 右近は宗高の隣に立ち、静かに呟く。


「殿。これで村田は――変わります。」


「変えるのだ、右近。

 私たちの手で、未来を。」


 蔵王から流れた水は、

やがて村田の大地を豊かにし、

その恩恵は大河原までを潤すことになる。


 その始まりが、

この“澄川サイフォン”であった。


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