第十話 「蔵王七翼 結成」
夕暮れ、村田城の館に朱が差していた。
宗高は地図と帳簿を前にしながら、窓の外に沈む蔵王の峰を見上げた。
雲の向こう、薄く雪を戴く姿はまるで天へ羽ばたく鳥のようだった。
「……翼、か。」
呟いた宗高の背後で、赤坂兵部が膝をつく。
「殿、これより領政の枠を整え、各々の職を明らかにすべきかと。」
「うむ。皆、ここへ。」
近習と小姓、七人の若者が一列に並んだ。
「おぬしらは、ただの家臣ではない。
我が志を形にする“翼”だ。」
宗高は立ち上がり、静かに続けた。
「蔵王は七つの峰を持つと伝わる。
火を鎮め、雪を降らせ、民を守る七つの力――
今、この村田にもその“七”が集った。
兵部、清三郎、十蔵、権七、勘平、直成、五郎助。
おぬしら七人を、**『蔵王七翼』**と名づける。」
一瞬、風が吹き抜け、蝋燭の灯が揺れた。
赤坂兵部が深く頭を垂れる。
「殿、その名に恥じぬ働きを、この命に刻みます。」
清三郎は胸を張って言う。
「数字の一つも間違えませぬ!」
十蔵は笑いながら筆を取った。
「では、今この時を記録に残しましょう。」
権七が拳を鳴らす。
「村田を伊達家一番の領内にしてみます!」
勘平は馬の鞍を叩き。
「街道は俺が拓きます!」
直成が静かに頷く。
「治安はこの手で守り抜く。」
五郎助は顔を真っ赤にして叫んだ。
「殿様の湯飲みは、毎朝磨き上げます!」
笑いが起こる。
だがその中には、確かな結束があった。
宗高はその光景を見つめながら、低く呟いた。
「蔵王の七つの翼があれば、この地は飛べる。
――天へ、未来へ。」
その夜、村田城に「蔵王七翼」の旗が掲げられた。
黒前掛け組が灯を捧げ、笹丸が影の中から見守る。
若き領主と七人の翼。
その名は、やがて仙台を、そして日の本を動かすことになる。
-------------------------近習.・小姓紹介----------------------
赤坂兵部景光
二十一歳
剣を執れば鋭く、筆を取れば理路整然。宗高の右腕にして護衛兼政務の要。
武士としての誇りと知恵を併せ持ち、外交や内政の折衝も担う。宗高を「殿」ではなく「宗高様」と呼び、忠義と友情の狭間で揺れる一面も。
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髙橋清三郎 十八歳
転生前と同じ“髙橋”の姓を持つ。実は髙橋高宗の縁戚のご先祖。
数字に強く、勘定方を務める。
几帳面だが、度々宗高の無茶に振り回されている。実直な性格で、兵部とよく意見を戦わせる。
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日下十蔵 二十歳
法と記録を司る文官。宗高の命で古文書をまとめ、新しい領内法度の草案を作る。
理屈っぽく見えるが誠実で、宗高の改革を「記録する使命」に燃えている。笹丸とも密かに親交がある。
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菅野権七 二十二歳
産業・街割り担当。手ずから設計図を描く。
「村田はただの宿場で終わらせねぇ」と豪語し、商人や農民たちの信頼も厚い。
黒前掛け組の新設された作業小屋の設計者。
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有見勘平 十九歳
街道整備と輸送係。馬を愛し、行動派。
黒前掛け組の物資輸送を一手に担い、旅人の安全を守る。
軽口を叩きながらも、危険な任務では命を惜しまぬ。
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佐藤直成 十八歳
領内警備の責任者。真面目で融通が利かないが、誰より忠実。
黒脛巾組との連携役を務め、笹丸から忍びの心得を学ぶ。
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油井五郎助 十五歳
最年少の小姓で、宗高の身の回りを世話する。
純粋で人懐こく、黒前掛け組の女性陣からも可愛がられている。
しかし一度怒らせると、宗高譲りの頑固さを見せる。




