貴族社会からおさらばします。
療養施設に入った私はまず食事療法から始まった。
最初は胃に優しい野菜スープから徐々に味が濃い物に体が慣れるようにしていった。
ある程度経った頃には体調もだいぶ良くなり施設内を歩けるようになった。
お医者様の適切な指示の元、私の体調は段々と回復してきた。
その頃にはお見舞いも許可されて親戚や友人達が会いに来てくれた。
友人曰く『目に見えるほどやつれていったので心配していた。 クレイド様にも意見を言おうと思っていたがなかなか言い出せなかった』との事。
友人達に心配をかけていた事なんて知らなかったので私は謝ったけど友人達は『とんでもない!』と言ってくれた。
親戚も元父親の態度には色々思う事があったらしく密かに国に訴える準備をしていたらしい。
『遅くなってすまなかった』と謝罪されたけど心配してくれていた気持ちだけでも嬉しかった。
もっと早くにSOSを口にすれば良かった、と申し訳無い気持ちになる。
自分で自分を追い込んだ結果がコレである、私自身反省しなきゃいけない。
そして、療養施設に入って一ヶ月経った頃、第2王子であるスレット様がやって来た。
「イレイナ様、本当に兄が迷惑かけてすみませんでした」
スレット様は私の顔を見るなり頭を下げた。
「スレット殿下、頭をお上げください。 スレット様は何も悪くないのですから」
「いいえ、今回は父上の代理としてイレイナ様に会いに来ました。 王家からの正式な謝罪と慰謝料を渡しに来ました」
そう言うとスレット様は机に金貨の入った袋をドサッと置いた。
「こちら、王家からの慰謝料となります。 どうぞお受け取りください」
「こ、こんなにですか……」
「はい、下手したら命に関わっていたかもしれませんからね、王妃教育を担当していた講師陣も必要以上に厳しい指導をしていた事を自白して解雇となりました。 調査をした結果関係者全員が『悪気は無かった』と言ってましたよ」
「私自身も必死でしたからね、冷静に考える時間も無かったんですわ」
そう言って私は苦笑いした。
「それでグラモンド公爵家の今後の事なんですがイレイナ様が跡を継ぐ事になるんですが……」
そうか、正式な跡継ぎは私しかいないのか。
「私、正直な話貴族生活に疲れてしまいました。 いっその事公爵籍を返上して1から人生をやり直したいと思っております」
「そうですか……、こちらから言う事はありませんのでイレイナ様のご意思を尊重してください」
「ありがとうございます」
その後、親戚とも話し合い私は公爵の籍を国に返上した。
歴史あるグラモンド公爵家はこうして私の代で終える事になった。