主人公パーティーに、ケモ耳女の子が仲間入りするのは、なろうあるある
巻藁・・・棒を軸に藁を束ねたもの。 弓術・剣術・空手の稽古の為の的(武道の種類によって巻藁の形状が違う)
あ〜、なんか昨日から疲れが、取れねぇな〜。
俺達は、冒険者ギルドの東屋の椅子に座って項垂れていた。
その館から、釘を金槌で打ち付ける音や板を鋸で断ち切る音が、ひっきりなしに聞こえる。
ただ、東屋や裏庭は、まだ一般客も利用可能。 立ち入り禁止は、館内のみ。
「・・・・・・これから、どうしましょうエクサキューさん・・・・・・」
「何、ギルド以外でも、冒険者達が集まる場所は、見当がついている。 少し休んだ後、酒場に行こうか」
「分かりました」
俺とエクサキューさんが、同時にため息をついた。
いかんいかんっ! これから長旅をするのに、気が滅入ってどうするっ・・・・・・!
自分の両頬を叩く!
「ソウク殿・・・・・・?」
「くよくよしっぱなしじゃ、成功するものも成功しないぞっ! せっかく修練場に来たんだ、魔法の練習でもするか」
心機一転、気分転換、気晴らしでもしねぇとやってられねえ。
勢いよく立ち上がった俺は、東屋から出て、裏庭の方に向かう。
エクサキューさんも俺と共に行く。
ギルドの修練場は、俺のよく知っている城の方と似ており、芝生が敷かれていて、そこの中央には、巻藁が放置されていた。
敷地の端には、未使用の巻藁が大量に積まれている。
その巻藁は、冒険者は、もちろん一般人も無許可で自由に使える・・・・・・って、東屋の柱の張り紙に書いてあった。
もちろん、周囲の安全が確保できる状態でのみ使用と、敷地内でもしも問題が起きてもギルド側は、一切の責任を負わないとも記載されているのだが。
「見て下さいよエクサキューさん。
これから俺が、あの巻藁に魔法を見事命中させますから!」
「おおっ、それは、見ものだなっ!!
だが例の魔導書を使用するのだろう・・・・・・?
無駄撃ちは、後々重要な戦闘で困ることになるのでは?」
「フッフッフッ・・・・・・大丈夫です。
この虫食い本に記載されている魔法の内、明らかに使い所が乏しい術が存在します。
今回は、そんな不便な術を消費しますから、エクサキューさんが想定するような不利なことは、起きませんよ?」
不敵に笑った俺は、この魔導書をめくり、木属性のページを開いた。
そして意気揚々と術名を唱えたのだ。
「木属性魔法 ブーメランスロウッ!!」
魔導書を持って無い方の腕を、頭上に掲げる。
すぐさま、上げた掌先の虚空から、くの字型の木製武器が生成されたのだ。
もちろんそれは、ブーメラン。
巻藁めがけて、空中に垂直面に立てられたそれを、投げた。
正確に言うなら、直接この武器に触れずに俺の投擲のジェスチャーを合図にするよう、念力みたいな力で飛ばしたのだが。
それは、狙い通りに巻藁のど真ん中に命中・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・することは、なく弧を描くよう回転しながら明後日の方向に飛来し、ここの敷地から抜けて、そして・・・・・・。
「・・・・・・あ」
大通りを歩いている狐耳のお姉さんの額に軽く刺さった。
練習もせず慣れない飛び道具の魔法・・・・・・それも癖の強いものを投げれば、思い通りに飛ばないのは当たり前である。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
ブーメランを投げた俺と額に微量な血を流す狐耳のお姉さんは、少しの間お互い見つめ合う。
魔力で生じたブーメランが、石畳の上に落ちて カランカランッ と乾いた音を鳴らす。
フッ・・・・・・と漏らすよう笑った彼女は、次の瞬間。
「上等だ貴様ぁああああああああっ!! 宣戦布告と捉えようっ!! 妖獣の恐ろしさ。存分に味合わせてやろうではないかぁあああああああああああああああああああああああっ!!」
激高しながら九本の尻尾を逆撫でた!?
狐耳お姉さんの特徴・・・・・・見た目の特徴は、二十代前半。 髪型は、ショートで髪色は、毛先と旋毛のみ茶色がかっている艶やかな金髪。
少し高身長。 厚い服着てもわかるぜ、巨乳だろ?
ここでは珍しい極東服を身に付けている。 タイプは、振袖だろう。初めて見た! その着物の柄は、金色の稲穂で帯は、紫色。
革靴ではなく無歯下駄を履いている。 買い物途中だったのか、風呂敷を抱えていた。
「よりによって怒らせたのが、妖獣の中でも魔力が高い九尾とは・・・・・・」
エクサキューさんが珍しく焦る!!
どうしよう・・・・・・やっちまった!?
こう言う場合、どうすればいいか俺は、分かっている・・・・・・固唾を飲み、一歩前に出て体勢を整える。
前のエクサキューさんの動きを思い出せ!
「お、おいソウク殿?」
さあ、この場にふさわしい、とっておきの切り札を見せてやるぜっ・・・・・・!!
「すいまっせんでしたあぁあぁあぁぁあっ!!」
相手に向かって、勢いよく正座をして両掌と額を地べたに擦り付ける絶技・・・・・・土下座だ!!
フッ・・・・・・決まった。
「許すかこの虚があぁああっ!!」
絶叫して全身から熱波を撒き散らす狐耳のお姉さん!?
何か、あまりの異様なその熱気に、彼女の姿が一瞬だけ蜃気楼の様にゆらめいていた気が・・・・・・俺の見間違い?
次に彼女は、呪文を詠唱し始めた!!
『火の象徴であるサラマンダーよ 我は命ずる 妖狐の火炎を補佐しろっ!!
方位はわが指先 威力は絶大 精霊の猛威を 我が前に示せ!
炎属性 金色の焔!!』
「いやその身なりで精霊形式の詠唱か!? てっきり貴殿は、八卦形式の方を唱えるかと思ったぞ!!」
「エクサキューさん! 呪文にツッコミ入れる暇ないっすよ!? 臨戦して下さい!!」
狐耳のお姉さんの背後から、魔力で生じた火炎が噴火の如く溢れ出したっ!!
土下座を止め、勢いよく立ち上がった俺は、魔剣『カウント』を鞘から抜く。
相手に恨みは無ぇ、それどころか完全に俺が加害者なのは百も承知だが、やるしかねぇっ!!
お姉さんに攻撃の隙も与えずに、掴んでいる剣を素振りした!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・また不発?
あの暗君暴君がああぁああっ!! よくもこんな不良品を押し付けやがったなぁあっ!!
彼女が、こちらに指を示した。
次の瞬間、俺らの眼前に爆炎が広がり、津波の如く押し寄せて来たっ!?
やばい・・・・・・避けねぇと、しかし炎の体積がえげつねぇなっ!? 三階建ての家なら余裕で丸呑みできるくらいだぞ!
避けようがねぇっ! あまりの荒々しい熱気につい目を瞑る・・・・・・俺は、ここまでなのか?
・・・・・・あれ? 熱さが引いている、何か浮遊感も?
恐る恐る瞼を開ける。
何と、エクサキューさんが、俺をお姫様抱っこして高く軽やかに飛翔していたのだ!?
いやいや、今の爆炎とんでもない範囲攻撃だぞ。 ジャンプだけで避けるなんてどんな機動力してるんですか!?
「大丈夫だ、ソウク殿。 我がついているから何も心配する必要は、無い」
そう余裕の笑みで俺を安心づける彼女。 なんて格好いい騎士様。 惚れるわ、こんなもん。
華麗に着地するエクサキューさん。 すぐに俺も彼女の腕から降りる。
戦いが長引けば長引く程、辺り一面に火の手があがり、関係ない一般人に迷惑がかかっちまう。
俺のせいで・・・・・・それだけは、何としても阻止せねばっ!
剣がダメなら、魔法だ! 魔導書の水属性の項目を慌てて探す・・・・・・あった!
『水属性重力複合魔法 ヘビーレインっ!』
術名を唱えた瞬間、雲一つない青空から、えげつない水量を誇る土砂降りがこの場一帯を支配した!
何とこの魔法の効果は、これだけでは終わらない!
狐耳のお姉さんを中心とするよう、広範囲に見えない圧力が炸裂する。
そう、生半可な戦士では、立ってられない程に、この場の重力が強化されたのだ。 降り注ぐ雨粒と合わされば、場にいる者は、呼吸するのも難しいだろう。
・・・・・・まぁ、今回俺が悪いんだけどね!
「おお!! でかしたぞソウク殿! これならどんな炎も鎮火してしま・・・・・・」
何で・・・・・・。
「何で、炎が消えねえんだよっ!?」
消えねぇどころか、火の勢いが弱まる気配すら感じないぞっ!! どうなってんだ!!
「・・・・・・フフッ!」
それどころか、高重力を浴びているはずのお姉さんは、怯むどころか、余裕の笑みを崩さない!?
顎に手を添え、深刻な表情を見せるエクサキューさん。
「まさか、彼奴・・・・・・『ギリシア フレイム』を使えるとでも言うのか!?」
ギリシアフレイム? と呟く俺に、彼女は、頷いて答える。
「噂によれば、炎魔法の中には、大量の水を与えても消えないどころか、その水すら燃料にしてしまう消火知らずの特殊な炎があるらしい。
最上級の手練れともなれば、水や消火液どころか、あらゆる魔法も大気も虚空も太陽すらも見境なく灰にできるとな・・・・・・」
「もしかしてそのとんでもない炎が、お姉さんの出している魔法だとでも言うんですか!?」
「私、妾を前に、無駄口叩くとは、良い度胸よな?」
何処からか取り出した鉄扇で口元を隠している彼女は、次に俺達に向かってその扇で仰ぎ、そこから魔法を炸裂させる。
第二波が・・・・・・来るっ!
『童子流 大吟醸 鬼一口のくしゃみ』
柄に手を添えていたエクサキューさんが、荒々しく抜刀を披露して大気を薙いだっ!!
彼女の素振りは、烈風へと昇華し、こちらに迫り来る猛火の雪崩へと迎撃するよう衝突した。
何て、風圧だっ・・・・・・!! 息をするのもやっとだ!
「へぇ? まさか西北の国で、我が故郷の剣技を拝めるとは」
「・・・・・・逃げるぞソウク殿!」
エクサキューさんが叫ぶ? 何だと・・・・・・俺達を狙う金色の炎は、強力な風攻撃を受けていたにも関わらず、延焼のスピードが微塵も遅くなることは、無かった!
慌てて彼女と共に逃げる。
ギルドの敷地から出て、大通りに向かった。
しかし、このままでは、家屋も民衆もお姉さんの炎の巻き添えを喰らっちまう!
何か、他に手は、無いのか!?
「逃がすとでも・・・・・・?」
雅でもあり麗しくもあるが、同時に畏怖を感じさせるような声が、俺らの背後に響き渡る。
やべえ、後ろ見てねぇけど、絶対追ってきてるってっ!
「どうします、エクサキューさんっ」
「我が囮になろう。 ソウク殿は、隠れそうな場所に身を潜み、機を狙って彼奴を高火力の魔法で気絶させるのだ。 それが無理そうなら応援を呼んでくれ」
クソッ! 仲間を危ない目に合わせたくないってのに。
「考え事をさせてくれる相手でも無さそうだなっ! 上を見ろソウク殿!」
上・・・・・・次は、こう来たか!?
俺達の上空一面に数多の火の玉が、揺らめいたかと思えば、それら全てが一気に急降下してきたのだ!
まるで灼熱の豪雨。
「あちちあちあちっ!!」
火の粉が肌に掠っただけでも相当熱いっ! モロに喰らえば即火ダルマだ。
降り注ぐ炎から掻い潜った俺達は、十字路に着く。
「我は、少しの間足止めをする! ソウク殿は、右へ・・・・・・!」
はいっ! と返答する。 無事でいてくれよ、エクサキューさん!!
え〜と、隠れそうな場所。 攻撃すんなら見晴らしの良さそうな高所に行った方が良いよな?
・・・・・・ん?
大通りの路傍のベンチに、幼女が酒瓶を抱いて眠っていた。
彼女の足元に、金属製の杖が転がっている。
まずいっ!! このままでは、文字通り彼女が戦火の巻き添えを喰らっちまうっ!!
「お、起きろあんたっ!! ここはもうすぐ火の海になるかもしれねぇっ!!
起きないとやばいって!!」
「う〜ん、ムニャムニャ。 あたしあたいあちきは、秋刀魚のハラワタも美味しく食べれるんだにゃー」
コイツこのヤロウ、寝ぼけてやがるなっ・・・・・・!?
『カウント』を鞘に納め、躊躇うことなくこの子の両肩を掴み、上半身だけ起き上がらせてガクンガクンと前後に振る。
「起きろ、起きなさい起きないと怒りますよ!! 俺が騎士見習いにいた時なんか、ちょっとの寝坊でも先輩にどやされたんだからっ!!
起きなさいっこらっ!!」
「あら、せっかく幼気な女の子が、気持ちよく夢の中にいるのに、無理矢理起こすなんて可哀想だと思わぬのか・・・・・・?」
本来いつもより温度が高くなっているこの町で、俺の背筋だけ一瞬の間だけ、凍えるよう錯覚した。
先程発された声の方まで、恐る恐る振り向く。
茶味がかった金髪、稲穂柄の着物、九尾の尻尾、そして額の傷・・・・・・間違いない。 あの人だ。
狐耳のお姉さんの通って来た道が、金色に輝く炎で満たされている。
「ま、まさかエクサキューさんが、・・・・・・やられたのか・・・・・・?」
唇に人差し指を添えて、妖艶に嗤う奴。
「ふふっ、ご想像にお任せするわ」
「てめぇええええぇえええええええっ!!」
「うるさいですよ人が寝てる傍でぎゃあぎゃあとっ!!」
俺の後頭部に鈍い音と共に激痛が走った!?
頭を抱えながら振り向く。
たった今爆睡していた幼女が、目を覚ましてこちらを睨んでいる。
もしかしてさっき俺を、酒瓶で殴ったのか!?
彼女の特徴。 見た目の年齢は、十代前半、髪型は、茶髪のサイドテール。 小柄。 胸の大きさは控えめ。 ヒトデと貝殻を模したヘアピンを付けている。 可愛らしいつぶらな瞳の色は、紫。 服装は、緑のビキニ。 丈の短いプリーツスカートを履いている。
そして彼女の種族は、人間では無い。
頭に犬の耳と臀部に尻尾がある。
胴体には、六頭の犬の頭が、環状に並ぶよう存在してあった。
下半身は、魚で構成されていた。
そんな彼女が、瞼を擦っては、あくびをしている。
「何、何事、何なのよ。 町中でドンパチでもしてんです?」
「おおそうだった、あんた早く逃げろ!
あのお姉さんの背後に燃え盛る炎、見ただろ。 火の手がこちらに回る前に早くっ!!」
「炎・・・・・・?」
お姉さんの方を一旦、流し見た犬耳の女の子は、俺に向かってため息をついた。
「何? 炎なんか何処にもありはしないじゃないですか。無いですよ。無いですね」
そんなふざけたことを言う彼女に憤り、焦りながら指で示す。
「寝ぼけてんのか!? あんな金色の炎が派手に光を放ってんのに・・・・・・」
「さっきも言いましたけど、見えませんよ。
・・・・・・もしかして貴方、合法では無い方のお薬でもやってんじゃ無いでしょうね?」
「まっ昼間から酒瓶抱えてる奴に言われたくねええぇえぇええっ!!」
「ふむ・・・・・・。 狐耳の獣人。 無いはずの炎をあると断言する男。
・・・・・・察したわ」
顎に手を添えて長考する女の子。
次に彼女は、石畳に転がっている杖を拾い上げ、俺の頭の前にその杖をかざす。
「な、何だよ・・・・・・?」
『ESPエンチャント 清浄視』
な、何を・・・・・・。
何だ? 自分の頭が妙にスッキリするような感覚がするぞ?
悪い気分では決して無い・・・・・・それどころか清々しさまで感じる。
これは・・・・・・。
唐突な事に茫然自失となっている俺に、犬耳の女の子は、話しかけて俺の正気を取り戻そうとする。
「どうですか、スッキリしたでしょう?
[今]の貴方は、あらゆる精神汚染から全快しているはずですよ。 お姉さんの方を向いてくださいです」
そうだ! 呆然としている場合じゃ無い!!
今俺は、狐耳の人と戦って・・・・・・・・・・・・あれ?
なんか、さっきまで轟々と燃え盛った金色の炎が、今になって形も影も無く消え去っているんですけど・・・・・・?
唖然としている俺の顔を見た狐耳のお姉さんは、口元に手を押さえて吹き出し、とうとう高笑いし出したのだ。
「プ、アハハハハハハハハハハハハッ!!
ようやく気づいたか間抜け! いや、正しくは、気付かされたか。 隣にいる女の子に感謝するが良い。 本当なら、もう少しからかってやろうかと企んでいたがな!」
ま、まさか・・・・・・。
「今まで、あんたが出していた炎は、全部幻覚だったって言うのかっ!?」
「当然だろう。善良な一般人が、事故で軽く怪我した程度で、人も町も燃やす訳なかろうて」
その言葉を聞いた俺は、緊張の糸が切れて、力無くへたり込む。 ・・・・・・なんか、脱力感と恥ずかしさで動けねぇや。
[このタイミングで、彼のヘビーレインは、解除されました]
「なあ、俺の魔剣の呪いも、ヘビーレインも俺の相方の剣技も、あんたに効かなかったのって」
「もちろんその時お主らが見た妾の姿も幻影、偽物よ?
実は、激昂した時、すぐにこの場から離れてたの」
つまり俺らは、いない相手に延々と攻撃を繰り返して来たのか・・・・・・そりゃ効かないわけだよ。
「ソウク殿っ!!」
エクサキューさんがこちらに駆け寄ってくる。
彼女の声を聞いただけで安心する。
「ソウク殿。 大丈夫か!?」
「大丈夫だよエクサキューさん。
それと戦いは、終わったよ」
今までの経緯を、彼女に話した。
「・・・・・・そうだったのか。 どうりで一人で戦っている時に、唐突に炎と彼女の姿が煙の様に消えたわけだ。
自分の幻術をこちらにさとらせないために、初手で炎魔法の嘘の詠唱を我らに聞かせて、属性魔法だと印象付けたのか。 狡猾な」
「ふふふ、ギリシア フレイム なんて突拍子もない見当違いも甚だしい貴方の推理、本当に傑作だったわよそれ」
思い出し笑いするお姉さんに、エクサキューさんは、ウググ・・・・・・ と呻いている。
「まあ、それはそれとして・・・・・・」
エクサキューさんが剣を納めた。
俺と彼女が並ぶ。
そして・・・・・・。
「申し訳ございませんでしたっ!!
怪我をさせた事、深くお詫び申し上げます!!」
同時に頭を下げたのだ。 深々と。
「いや、え? え?」
いきなりの謝罪に、犬耳の幼女は、戸惑っている。
狐耳のお姉さんの方はというと、鼻を鳴らし、そして・・・・・・。
「え、熱ちちちちっ!?」
何だ!? 唐突に俺の手が、火傷みたいに熱くなったぞ!
見下ろすと、煙を出している葉っぱの粉が、自分の手の甲に引っ付いているのが見えた。
「これで手打ちにしてやる。 まぁ、妾は、医者だから、こんな擦り傷、すぐに治せるがな」
そう言って踵を返し、去ろうとするお姉さん。
させるか。
「ちょっと待ってくれよ! あんた、医者なんだろ? 俺達は、回復系を扱える魔導士を探してたんだ・・・・・・良かったら」
「断る。 誰が額にブーメランを、ぶつけた無礼者と、仲間になるか・・・・・・だが」
こちらに振り向き、ウインクする彼女。
「病気や呪いで困った時は、妾の方まで尋ねなさい・・・・・・鍼灸道士 那須野 俵 が、主らを手助けしてやる」
そう言葉を残したタワラさんは、俺らとしばしの別れを告げた。
・・・・・・スカウト失敗か。 さて他を当た・・・・・・。
「何、もしかして貴方あんたら、ヒーラーを探しているの、探しているんです?」
犬耳の女の子が話しかけて来た。
「え? まぁそうだけど」
薄い胸を張る彼女。
「それなら、丁度良いです・・・・・・あたし、あたい、あちしを雇ってくれませんか?
冒険者ギルドは、しばらく利用できないから、依頼の仕事もありつけなくて困っていたんです、ですな、ですよ」
「本当か!? 貴殿は、回復の魔法を使えるのか?」
「回復系の魔法は、自分は、使えません。
だけどね・・・・・・貴方あんたらを[一時的]にヒーラーにさせることは、出来ますよ?
どうですか?」
「ああ、それで構わないよ。 これからよろしくなっ!!
俺の名前は、ソウク。 隣にいる方は、エクサキューさんだ!!」
「あたしあたいあちきは、 ワンプサイ クラタイス ってんです。 よろしくね!」
俺とワンプサイは、握手を交わした!
・・・・・・ふうっ、今日だけでも二回も戦闘してとても疲れ・・・・・・あり? 何故か疲れが完全に取れてる。
※ワンプサイについて。 種族は、スキュラ。
胴体に存在している犬の顔の犬種は、それぞれ違っており、ゴールデンレトリバー・ドーベルマン・チワワ・ヨークシャーテリア・土佐犬・黒豆柴で構成されている。
下半身の魚の種類は、トビウオ。