都で名物のグルメを堪能するのは、なろうあるある
『ソウク殿・・・・・・やっと二人っきりになれたな・・・・・・』
深夜に泊まった宿屋の一室にて、エクサキューさんが顔を赤らめ、唐突に俺の方に近づいてきた!?
『有無を言わさず此方の世界に呼び出された貴殿は、さぞ元の世界に戻りたいと思ったであろう?
慣れない旅で不安に駆られるのだろう?』
な、なんか彼女の様子おかしくね?
『そこで、我は、考えた。
どうしたらソウク殿の不安を和らげることができるのか。
どうすれば心を癒せるのかをな・・・・・・』
『エ、エクサキューさん・・・・・・?』
俺と至近距離まで寄ってきた彼女は、あろうことか、胴衣を脱ぎ始めた。
『え、ええっ!? え?』
彼女は、躊躇うことなく全ての甲冑を外し、着ていたシャツとタイツも剥いで、残ったのは、下着のみ・・・・・・。
『エ、エクサキューさん!?
何やってんですかっ!?』
『ソウク殿の照れた顔可愛い。
ふふふ・・・・・・分かっているくせに。
言わせるな恥ずかしい。
前にソウク殿に頭を抱えられた時心地よかったのだ。 それを我も貴殿にしてやろうと考えた。
我の全身は、今貴殿だけのモノになった!!
さあ、夜は、まだまだ長いぞ・・・・・・ソウク殿、我の体で癒されてくれ・・・・・・』
『ああっ!? ダメですよエクサキューさん俺達まだ知り合ったばかりなのにそれに貴方は、誇り高き騎士の団長じゃないですかっ!?
貞操を大切にしてくださいダメダメダメエエェエエエェエエエェエエエエッ!!』
という所で、目が覚めた・・・・・・。
今俺は、藁の上にシーツを被せたベットの上で寝転がっている。
毛布は、俺の寝相の悪さのせいか、フローリングの床に落ちていた。
木窓の隙間から、朝の日差しと鳥の鳴き声が漏れ出ている。
今、俺の頭は、うまく働いておらず、心内は、虚無感で満たされていた。
そりゃそうだよな女慣れしてねぇさくらん坊ごときが、初めて会ったばかりの美女と一線を越えるなんて、有り得ねえもんな・・・・・・。
「ソウク殿、起きたか?」
この部屋の扉が開き、桶を提げたエクサキューさんが入室してきた。
「宿屋の店員に、ぬるま湯を分けてもらった。
これで軽く体を拭いてくれ」
彼女からタオル二枚とほのかに温かい桶を手渡される。
「我は、もう体を洗うのを済ませている。
お湯の残りを気にせずにな。 一枚目のタオルは、濡らす用、もう一枚目の方は、湿った体を拭き取る用にでも使ってくれないか」
「ありがとうございます・・・・・・」
ちきしょおおおっ!! エクサキューさんが鎧やら肌着を脱いで体を綺麗にするところ拝みたかったあぁああぁあっ!!
「・・・・・・・・・・・・」
黙って俯いている彼女に、俺は、 どうしましたか? と尋ねる。
「ソウク殿の出身地が ニホン というのは、伺っている・・・・・・確かそこでは、入浴文化やシャワーを浴びる習慣が、この国より根強いという情報も知っている。
・・・・・・済まないソウク殿。 この城下町では、貴殿が満足するようなお風呂やシャワーは、用意することができないんだ。
心苦しいが、これで我慢してくれ」
いや、申し訳なさそうにしてるけど、俺も人生の中でお風呂らしいお風呂入ったことねぇけどなっ!!
まあっ、昔から硫黄の匂いを嗅ぎながら湯浴みをするのが、念願の夢だってことも否定しねぇんだが。
「悲しまないでくださいよ。 濡れたタオルだけでも充分さっぱりしますよ?
ところで見られながらするのは、さすがに恥ずかしいので、別の所向いてくれません?」
それを聞いたエクサキューさんは、少し赤面し、俺に対して背を向ける。
待たせるのも悪いし、カラスの行水みたいにさっさと終わらせよう。
わざわざ一張羅脱ぐのも面倒だ。 カッターシャツのボタンを開けてベルトを緩めるくらいでいいや。
そうだ、頭も拭かないと臭いよね。
さて、ぬるま湯でいっぱい濡らしたタオルで洗って、そして再びこのお湯で濡ら・・・・・・。
あり? 何で、桶の中が黒く滲んでんだ?
まるでインクみたいに・・・・・・。
「あああああっ!!」
そうだ、前にタリウムのおっさんが俺の地毛を黒に染めたんだった!!
「どうしたっ!? ソウク殿!!」
いきなりの大声に、何事かと勢いよく振り向くエクサキューさんの頭部を、とっさに俺は、慌てて抱えて、胸元に力強く押し付けた。
「ムググムグッムググググ!?」
まずいまずいっ!! この金髪を見られたら、彼女に俺が演技してたことバレちまうっ!! そうなったら何やかんやで国王にバレて、ティアさんに危険な目に遭っちまうかも!
な、何かこのピンチを潜り抜ける方法は・・・・・・そうだ!
錯乱しているエクサキューさんの身体を他所に、ベットの隣にある棚上に置かれている『虫食い本』を急いで手に取り、片手でページをめくってなんとかお目当ての術を探る。
(あった! よし発動!! 黒色に変更で)
「『髪色変更 タイプ黒』」
そう俺がつぶやいた瞬間、インクで汚れた自分の地毛の色が、真っ黒に染まった・・・・・・ような感触を覚えた。
手鏡や鏡台が無いから、確証が持てない。
「ムグーッムグーッッ!!」
しかしこのままにする訳もいかず、彼女の体に頭部を返した。
「ゼェーゼェーッ・・・・・・・。
ひ、ひ、酷いでは、無いかソウク殿。 窒息する所だったんだぞ!? い、い、いきなり強引に胸元に押し付けて」
流石のエクサキューさんもおかんむり。
でも俺の髪色を見ても何とも無い反応・・・・・・魔法は、成功したってことだな。
さて、どうやって誤魔化すか・・・・・・。
「申し訳ございません。エクサキューさん。
貴方の髪にある埃を取ろうとしただけです!」
流石に言い訳苦しいか・・・・・・?
度が過ぎている俺の行為に、彼女は、激怒するかと思いきや。
「そ、そそそそ、そうか?! あ、あ、あ、ありがととととうううううっ」
顔を真っ赤にして震えている。
(と、殿方の胸板、殿方の胸板・・・・・・)
俺は、今回ラッキースケベを味わえなかったけど、どうやら堪能できたのは、彼女の方らしい・・・・・・俺が思うのもブーメランだが、どんだけ、男の免疫が無いんですかエクサキュー団長。
起床して身支度するだけなのに、色々手間取った感じがするが、すぐに俺達は、身支度を整える。
まずは、魔導書を脇に抱え、棚にもたれかけている剣を・・・・・・。
この魔剣『カウント』は、鞘から抜き、素振りするのを条件に、持ち主が指定した相手を戦闘不能にする強力な能力を持つ・・・・・・が、効果を発揮できる人数が制限されている。
はっきり言って、こんなインチキな力、本当に存在すんのか? 疑心暗鬼になる。
使える回数は、残り20。
攻撃する相手には、慎重に選ばないとな。
考え無しに使うなんざ、論外だ。
部屋を出ては、一階に降り、店員のおじさんと話してチェックアウトした。
宿屋から出て俺は、大通りにて、気持ちの良い朝日を浴びながら背伸びする。
「くうぅうう・・・・・・」
「さてソウク殿・・・・・・。
朝食は、我がお勧めする飲食店で摂ろう。
そこでこれからのことを一緒に考えようでは、ないか」
「分かりました。楽しみだなぁ、お勧めのり・・・・・・」
「やあやあそこにいるのは、ハスキー アウクシリアでは、ないかね?
君の唯一無ニの大親友 ペルシャ ディマシュキー が会いに来たぞ?
おや・・・・・・? 髪の毛を大胆にイメチェンしているね? 短髪の黒髪も似合っているが、自分的には、金髪の長髪の方のイメージが強いから違和感が凄いなぁ。
所で君の横にいる麗しい騎士様は、もしかしてハスキー君の彼女かい?
もしそれが本当なら嫉妬で狂いそうだよ。
しかし自分は、素直にハスキー君を祝福しよう・・・・・・!!
だって、真なら友人は、例えお互いどんな状況でも相手の幸せを祈るってもんじゃないかっ!!
あ、そうだハスキー君。 自分もこの前、行商人の就職が決まったよ。
だから君の奢りで自分の就職祝」
俺は、何の躊躇いもなく魔剣『カウント』の能力を行使した。
外気に晒された刃から素振り音が鳴る・・・・・・これの刃の付け根に刻まれた数字が20から19へと瞬時に変貌。
魔剣を革製の鞘に納刀したのと同時に、身バレ告げ口野郎のペル公の身体が、石畳の上に伏せた。
まさかまさかの本物!?
「あぁあ〜何てことだっ!!
見知らぬ顔も名も知らぬ通行人が、な・ぜ・かいきなり倒れたぞぉ〜睡眠不足か? 持病か〜?
これは、大変早くお医者様のところへ連れてかねば〜・・・・・・」
急いでペル公の元へと駆け寄る俺。
どうやら気絶とまでは、いかずとも目を回している・・・・・・素人判断だが命に別状は無いだろう。
ペル公改めペルシャ ディマシュキーの特徴。
髪型は、ストレートの銀髪、瞳は糸目、体躯は、俺と比べれば身長は、やや高く、華奢な方で、肌も白い。
今こいつが身につけている物は、ウール製三角帽子と襟と袖口ににレースがついてある上着、ゆったりしたズボンの上に脚絆、それと革靴だ。
「どうしたソウク殿!? おや、男の人が行き倒れているぞ! まだ朝食も摂っていない所、申し訳ないが彼を近くの病院まで連れて行くのを手伝っては、貰えないだろうか?」
良かった、俺が『カウント』を使ったことバレてないっぽいな。
「はいっ!! 早速行きましょう。 このまま俺が彼を背負います」
「ここから病院は、近くだが成人近くの男性相手をそのまま救助するのはきついだろう。 先程の宿屋で担架を貸して貰う方が確実だと思うぞ!
ところで、さっきの抜刀音と素振り音は、何かご存」
「担架ですねっ!? 早速おじさんにあるかどうか聞いてみます!!」
「うむ、頼んだぞ! その間、倒れている彼に、意識があるかどうか伺ってみる。
話は、変わるが先程ハスキーとかイメチェンとかの単語が聞こえ」
「では、行って参りますっ!!」
エクサキューさんの質問を振り切って、猛ダッシュでさっきまでいた宿屋に戻り、カウンターにいるおじさんに担架はあるかどうか聞いてみる。
すぐに彼は、カウンター奥の扉に入り、布製の担架を用意してくれた。
次に俺とエクサキューさんで彼を近くの病院まで運んだのである。
やれやれ・・・・・・まぁ、俺のせいだけど。
医者が言うには、 身体には、何の異常も無く、特に危険な様子は見られない だそうだ。
あと、 自分は専門じゃ無いから断言は、できないけど病気や怪我というよりも呪いに近いらしい とも。
そりゃなぁ、魔剣の影響で倒れたんだもん。
・・・・・・今回ばかりは、すまんなペル公。
今度の就職祝い、是非盛大に祝ってやるからな。
「無事で良かったな彼。 原因は、判明してないのが不穏だが。
さて、朝食は、まだだったな・・・・・・。
我のお勧めのレストランは、近いぞ!」
「おおっ、騎士団長が太鼓判を押す店は、期待が高まりますねっ!!」
病院から俺達は、出発した。
道中、大通りの露店で買い物をする九本の尻尾を持つ狐タイプの獣人や、ベンチで日向ぼっこしているトカゲ人間や、往来する人にウザ絡みしてる胴体犬顔並びロリ人魚を見かける。
「人間以外の種族が気になるか? ソウク殿。
露店にいるのは、九尾の狐、ベンチにいるのは、リザードマン、朝から泥酔してる不届者は、スキュラかな?
地球出身の貴殿にとっては、珍しいかもしれないが、道行く人をちらちら見るのは、少々失礼にあたるぞ」
「すみません」
「さあっ! 着いたぞ。
ここが我のお気に入り、隠れた名店・・・・・・『ヤミー&デリシャス』だ!!」
エクサキューさんが示す店の特徴は、木骨造の一回建てで、入り口傍に付けられてる釣り看板の文字がデコデコに派手に飾り付けされている。
・・・・・・うん、何が嫌な予感は、してたんだよね。 うん・・・・・・当たった。
一昨日、ウォンバット先輩達と一緒にパトロールの昼休憩時に行ってたんだよね。
この前の休みなんて、ペル公とも食べに行ったし。
うん・・・・・・なんか、世界って、狭いね。
店内に入り、テーブル席に着く。
幸い、早朝の時間帯なので、客も少なく待たずに座れた。
羊皮紙のメニュー表を俺に見せつけるエクサキューさん。
「ソウク殿、ここのソーセージソテーが絶品だ。
あと、ミューズリーも頼んで後悔は、無いとおもうぞ?」
「おおっ、是非それで!
さぁどんな味がするんですかね〜?」
知ってるわいっ!! なんならこの店で頼む物は、いつもそれじゃいっ!!
羊皮紙のメモ帳と羽ペンを用意しているウェイターがこちらの席に尋ねてくる。
「御注文は、お決まりでしょうか?」
「ソーセージソテーセットとミューズリーをそれぞれ二人前・・・・・・あ、そうそうソウク殿、ドリンクは、何か頼むか?」
その質問に俺は、エールと答えるのをグッと堪え、レモンティーと答える。
地球の法律では、未成年が酒を飲むのを禁止しているらしい。
俺がアルコール類を頼んだら怪しまれるからな・・・・・・やけ酒、したかったな。
「ドリンクの方は、レモンティーとコーヒーで」
「はい、かしこまりました。 ソーセージソテーセットとミューズリーがそれぞれ二つ、お飲み物は、レモンティーとコーヒーですね。
御注文は、以上でよろしいでしょうか・・・・・・?」
よろしくねぇよ、だってまだとっておきのオーダーが追加してねぇから。
「ああ、それで頼む」
いやああっ!! 知らないんですかエクサキューさんっ!?
裏メニューっ!! ソテーの方は、頼めば、プラス金貨一枚でトロトロのチーズをのせてくれるし、ミューズリーも無料で材料の牛乳を豆乳に変えてくれるしでもったいねえぇええええぇえええっ!?
通の食べ方知らねぇのかよおっ!!
去っていくウェイターの背中を眺めることしかできなかった・・・・・・まあ、裏メニュー言おうもんなら即、俺が異世界出身じゃないことがバレちまうからな。
料理ができるまで俺達は、会話で時間を潰した。
エクサキューさんは、俺にこの世界のことについて丁寧に教えてくれる。
「この国では、亜人だけではなく魔物すらも人間と共存して生活しているが、元々は、人間と我ら魔物は、昔、敵対していたんだ。
しかし、分かり合えるとは思えない両者の手を繋げた偉人がいる。
レオバルト一世様・・・・・・そう、ソウク殿が昨日深夜に出会った国王陛下の父親だ。
そのお方が、人間と魔物の仲を取り持つよう、生涯わたって身を粉にして尽力してくれた・・・・・・だから、現在我々は、人間の領土で平和に暮らせるのだよ
まあ、近隣諸国のマルウェー国やウェーデンス国に比べたら魔物友好国の歴史は、浅いと思うがね」
うん、知ってる。
「話を変えようか。 この都から南西の遠方に魔王城が存在する。
その城の主人である魔族が魔王だ。
奴は、魔界から魔物や魔族を引き連れてこの国に攻め込んできたのだよ。
まあ、その軍隊も、信じられない話だがレオバルト一世様の献身的な対話で改心させて無力化したからな」
うん、知ってる。
「そうそう、間違ってもエルフやドワーフに対して亜人扱いは、しない方がいいぞ。
失礼に当たるからな。
最近では、魔物を魔物扱いするのを良しとしない思想家や宗教家が台頭している。
発言には、気をつけることだ」
いや、知ってるって!! この事に関しちゃ親から耳にタコが出来るくらい聞きまくってるってっ!!
「お待たせ致しました、ソーセージソテー二つとミューズリー二つとレモンティーとコーヒーですね」
おっと、相変わらずこの店は、早く料理が来るな。
こちらに再び寄ったウェイターは、料理を卓上に並べる。
湯気が立っている豚肉に自動でセットについてくる小さい黒ブレッドと野菜のスープ。
ナッツとドライフルーツ入りのオートミールを牛乳で皿いっぱいに充したミューズリー。
木のコップには、レモンティーが、陶器のカップには、コーヒーが注がれていた。
「では、ごゆっくりどうぞ」
「「いただきます」」
まずは、ソーセージをかぶり付く。
ありきたりな食レポだが表面は、カリッと弾力があって中は、柔らかく肉汁が溢れている・・・・・・美味なのは、美味なのだが隠れメニューを知っている俺としては、チーズが無いと物足りない。
すぐに黒ブレッドを喰み、さっぱりとした味付けのにんじんとキャベツのスープで味覚を整える。
「ふむ? そういえば今回の朝食は、貴殿がこの世界に来てから初めての食事では、無いのかな?」
「ん? まあ、そうなりますね」
「もしかして昨日の夜中から、ずっと空腹状態のまま我慢してたのか?
そうだとしたら済まない・・・・・・」
席についたまま申し訳なさそうに軽く頭を下げるエクサキューさん・・・・・・また頭部が落ちそうですよ料理店で猟奇的な状況を他の客や店員に見せないで下さい。
「いえ気になさらないで下さい。
ここの店の料理は、とっても美味しいです。
勧めてくれてありがとうございます」
「そ、そうか。 お気に召して何よりだ。
食べ終えたら次は、質屋か雑貨屋で冒険一式の道具を買おうか」
これからの予定を呟いた彼女は、コーヒーカップに口をつける。
俺もつられてレモンティーで一服。
爽やかな酸味と程よい温かさで心休まるな〜。
ミューズリーの方は、牛乳とナッツ、ドライフルーツの相性は、やっぱり良いな。 豆乳じゃなくても満足できる。
オートミール自体は、例えだがすり潰した大豆の味がする・・・・・・牛乳と共に口にしても喉が渇くな。
卓上に並べられた料理を平らげた俺達。
エクサキューさんは、近くに歩いているウェイターに 勘定を頼む と話しかける。
「はい、只今。 ソーセージセット二つ、ミューズリー二つ、レモンティー、コーヒー合わせまして金貨十六枚になります」
腰ベルトに留めてあるポーチから、財布を取り出した彼女は、チップ含めてウェイターに渡した。
「はい、確かにお預かり致しました。
ありがとうございます。 またのご来店をどうぞ」
席から立ち上がり出口に向かう俺達。
「すみません、エクサキューさん。
奢ってもらって・・・・・・」
「気にするなソウク殿。 そもそも貴殿は、異世界出身。 金銭に余裕などあるわけが無い。
逆に高給取りである我が払うのも道理だろ?
ん・・・・・・?」
話してる途中にエクサキューさんが、少しの間硬直した。
彼女の視線先には・・・・・・。
「え? あの客人のウインナーにトロトロのチーズがかけられてる?
なんて美味そうだ・・・・・・もしやメニュー表には載っていない隠された料理が・・・・・・」
「ほらエクサキューさん!!
店の出口付近で立ち止まったら、他の人に迷惑っすよ!
それに他人様の料理をジロジロ見るのは、マナー違反ですって!!」
肩を落としているエクサキューさんの背中を押して強引にここから出店する。
なんとか彼女を宥めながら、次の目的地である質屋に向かう。
そう時間がかからずたどり着く。
一見見た目が年季の入ってそうな石造二階建ての店に入店する俺ら。
その店の奥から・・・・・・。
「店主よ、吾輩は、急いでいるのだ!
ちょっと安く買い叩いてもいいから頼むぞ」
「いや無理なんだって!?
この水晶の正体知っているの?
『エーテルクリスタル』っつうめちゃくちゃレアなモノなんだぞ!! なんで騎士の貴方がコレを所持できているんだ!? 大神官クラスでも無いと所持すら許されないモノだ。
絶対にこれ引き取ったら、面倒な事にわしも巻き込まれちまうよっ!!」
首を傾げるエクサキューさん。
「ん? 揉め事か? フードを被って分かりづらいが、確かに彼は・・・・・・」
テンバイヤーさんっ!?
ペルシャは、商人の息子で、ハスキーの子供時代からの友人です。