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プロローグ 召喚の儀は、なろうあるある

 安心してください。ちゃんとハーレム・チート・ザマァ展開を用意してます。

 今まで書いてきた(エタッたのも含めて)小説の集大成になってる作品です。

 不定期投稿です。改稿もたくさんすると思います。

 「ベノ・レギー国へようこそいらっしゃいました。

 地球と呼ばれる異界から、はるばるご足労頂きまして大変恐縮です。

 我々ベノ・レギー国国民一同、勇者である貴方様がこの世界に現れるのを、今か今かと待ち侘びていたのです」


 視界一面に眩い光が、広がったかと思えば、すぐに止んだ。

 脇を流し見すれば、金属の杖を抱える美少女と視線が合い、自分の足元を見下ろせばチョークで幾何学模様が描かれた純白の石畳が確認でき、見上げれば上から下方向に天井に咲く鋭利な水晶の反射光で瞳が痛み、横方向を見渡せば、微かに月の光で色づく緻密で荘厳な絵のステンドグラスに目を奪われる。


 いや、だから俺は・・・・・・。


 「ああ、これは失礼致しました。

 わたくしは、ベノ・レギー国の聖女である ティア マナライン。

 そしてここは、ベノ・レギー国王城の北側にある礼拝堂です。

 唐突に異世界であるここまで召喚されて戸惑う気持ちは、痛いほどわかります・・・・・・本当にごめんなさい・・・・・・」

 金の刺繡に縁どられている純白の頭巾と法衣を身に着けた青髪の少女・・・・・・ティアさんは、悲しそうな雰囲気のまま微笑した。


 いや、別の件で俺に謝ることがあるだろ!?


 「唐突なことで驚かれると思いますが、今から0.5サンムーブ・・・・・・地球換算では、一時間ですね。 一時間後に謁見の間にて国王陛下にご挨拶してもらい、そして任務を拝命してもらいます。

 時間が来る前にこの国の礼節を最低限説明させて頂きますね?」

 冷や汗を流したことで、ただでさえ冷たいここの空気が、いっそう凍てついたと自分は、感じた。

 陛下に謁見・・・・・・嘘だろ?


 「マナラインよ、召喚は、成功できたかね?」


 「タリウム様! ええ、成功しましたよっ!」 

 礼拝堂の出入り口から、あごひげを蓄えたガタイがいい法衣を着たおっさんがカバンを担ぎながら入室してきた。


 ティアさんは、興奮気味に彼を紹介する。

 「彼は、私のお付きのタリウム様です。アーミラリー神殿の神官なんですよ!」

 ・・・・・・いや、説明しなくていいから。だって・・・・・・。


 「おおっ! 良かった。召喚儀式用の水晶が無くなったと知った時は、どうなるかと思ったがなんとか成功したとは・・・・・・!!」

 俺の本意を無視するように二人は、不自然なほど喜びを表している。


 いや、あの、だから・・・・・・・・・・・・。


 「いや召喚の儀に参加する度思うのだが、異世界出身である彼らと我らは、よく言葉が通じるなと、常々不思議に感じますな。勇者殿もそう思いで?」


 そりゃ伝わるでしょ。だって・・・・・・。


 「もうタリウム様! あと一時間で勇者お披露目会があるのですよ!?

 それに勇者様の名前をまだ伺ってませんよ?

 ね? 勇者様教えてくださいな」

 微笑みを保ったまま、こちらに静かな圧をかけてくるティアさん。

 

 もちろんすぐ答える。

 「ああ俺は、 ハスキー アウクシリア・・・・・・」


 「違いますっ!! 勇者様、貴方の名前は、 ヨウトウ ソウク です!!

 貴方は、地球の日本人という設定なんですからっ!!

 騎士名簿に記載された名前は、一旦忘れてください!!

 勇者様は、異世界出身なんですっ!!」


 目頭に温かい雫を溜めて叫ぶティアさんに負けじと、俺は思いっきり叫ぶ。



 「俺は、異世界転移なんてしてねぇええええええええええええええっ!!」



 ※※※三十分前※※※


 俺は、王城の門衛塔近くにある修練場にて、夜遅くまで鎖付フレイル鉄球モーニングスターの練習をしていた。

 最近あんまり寝れなくて、暇つぶしとして腕を磨いている・・・・・・翌朝になると筋肉痛になってヘタレて先輩にどやされるのがテンプレとなっているが・・・・・・。


 「精が出るな・・・・・・」


 「あ、こんばんわです。 テンバイヤー副騎士長!」

 こちらに声をかけた方を向くと、険しい顔つきをした筋肉隆々の男性が、西門に向かっているのが見えた。

 彼は、この国の近衛騎士団副騎士長なのだ。

 今、テンバイヤー副騎士長の脇には、白い布に包まれた塊が確認できる。


 「夜中に騒ぐな。皆の迷惑になるぞ? 修練を積むのは、いいが明日は別に君の非番ではないだろう。

 さっさと休息をとるといい」


 小声で返答する俺。

 「はい。ところで副騎士長は、こんな夜更けに何を・・・・・・?」

 対して軽く取り乱す彼。

 「い、いやいやただの散・・・・・・じゃなくて、先程城下町で置き引き事件が発生した報告があってな。国の平和を護るのが使命な吾輩としては、断じて許すことはできないっ・・・・・・!

 故にこれから城下町まで行って、悪者を成敗してくると、そういう訳なんだな。

 え? 手伝いたい? いやいやせっかくのご厚意だが心意気だけ受け取ろう。

 故にこれで失礼する・・・・・・ハスキーよ、あまり無理はするなよ?」

 長く語った副騎士長は、急ぎ足で城壁の西門を潜って向かって行かれた。


 いや~こんな騎士見習いである俺の名前を、騎士の中でもエリートのテンバイヤーさんは、覚えてくれた・・・・・・こんなにうれしいことはないよ。


 さあ、俺もそろそろ寝ますかね・・・・・・ん? 何か二人組が慌てた様子でこちらに向かってくるぞ?

 一人目は、法衣を着ているあごひげのおっさん・・・・・・衣装を見るに、アーミラリー神殿関係者か?

 二人目は・・・・・・なんとっ!? 国中の野郎共のハートをことごとく射止めまくった絶世の美少女 ティア マナライン ・・・・・・王城に来てたのか。うれしいサプライズだな。


 お近づきになりたいが、こんな騎士見習いが彼女と関係を持つなんて・・・・・・。


 「探しましたよハスキー様!! 貴方地球の情報についてお詳しいハスキー様ですよね!? 夜分遅く失礼だと承知しますが、少しの間付き合ってくれませんかっ!?」

 藁にもすがるよう必死になって俺に話しかけるティアさん・・・・・・あれ? これ夢か?


 「ああ、そうか俺夢見てんだ。副騎士長様に名前覚えてもらっているし、みんなのアイドルが付き合ってと言ってくるし・・・・・・寝るか」

 

 「わぁああああっ!? 夢じゃありません夢じゃありません。門衛塔に向かわないでください。お願いですから話だけでも・・・・・・!!」


 泣きじゃくり、こちらを懇願するよう見上げながらティアさんの幻影は、俺の手をつ、つ、掴み・・・・・・スベスベのちょっとヒンヤリした感触!?

 次の瞬間、俺は意識を保ったまま茫然自失になった。



 ※※※回想終わり※※※


 礼拝堂にて魔法の発光に晒され、俺は、我に返ったってわけだ。

 「あの、何が何だかわかんないんだけど・・・・・・」

 困惑している俺は、目が泳いでいるティアさんに説明を求める。

 

 「は、はいどこから説明したものか・・・・・・。

 ハスキー様。異世界人を召喚するための召喚の儀に必要なものは、ご存じですか?」


 「俺は、騎士の見習いだから詳しくは知らねぇけど、書物によれば特定の魔法陣と膨大な結晶の塊とそして聖なる力を持つ術者だと書かれていたぜ。

 それと、紫色の方の月が、満月になった時のみも前提条件だと」


 頷く彼女。

 「はい、その通りです。国王陛下の名の下、異世界人をついさっきまで召喚しようとしました。

 しかし・・・・・・失敗したのです。今までこんなこと無かったのに!!」

 泣き崩れようとするティアさんを、タリウムのおっさんが支える。


 あ~・・・・・・あの国王の命令を失敗してしまったか~。

 「失敗した理由は、判明したんですか?」


 「ええ、周囲を見渡せばすぐわかりました。礼拝堂の床に設置された水晶の塊が無くなっていたんです! きっとどなたか、持ち去ってしまったのでしょう・・・・・・!!」

 

 「そんなはずは・・・・・・っ! 今日の礼拝堂出入り口の警備は、腕が立つテンバイヤーさんが担当してたんだぞ」

 反論しようとした俺の脳裏に、何か白い布に包まれた物を抱えながら足早に去っていく彼の姿が浮かび上がっ・・・・・・まさかな。


 ちょっと冷たい口調で、ティアさん達に尋ねる。

 「責任重大の任務を失敗したことについて、心中お察しします。

 ですが、その件と俺と何の関係があるのですか!?」


 対して朗らかな声でティアさんが答えた。

 「ですから、ハスキー様が異世界人の代わりに異世界召喚された日本人の演技をして、勇者として陛下からの任を拝命して下さい」


 あまりの飛躍した突拍子もないお願いに、俺は困惑を極める。

 「だ・か・ら。何で俺に白羽の矢が立ったんですか? 他にも候補がいるでしょう?

 いくら見習いとはいえ、しばらくの間この城で暮らしてたんですよ。すぐにばれて・・・・・・」

 イラついて頭を掻こうとしたら、何か手の平にべったりとしたような嫌な感触がした。まるでインクやペンキのような・・・・・・それ以前に長髪であるはずなのになんか現在の俺の髪型がベリーショートになっているような・・・・・・。


 「そのことについては、大丈夫ですよ? 先程金髪だったハスキー様を日本人みたいに黒く染めておまけにばっさり散髪しました」

 口をパクパク動かして絶句している俺に、顎髭クソジジイは、黒い染料の瓶とハサミをカバンから取り出してはこちらに見せつける。

 「残念ながら顔そのものは、わたくし達の魔法でも整形できませんでしたが・・・・・・ハスキー様は、もともと塩顔なのでちょうど良かったですよね?」


 「ああ、自分もそう思いますぞ」


 「いや、だから何で俺なんだよっ!? 勇者の資質なんて大層なもの持ってねぇぞ俺!?」

 あまりの怒りに声を荒げる俺に対し、またもや俺の手の平を両手で掴むティア。

 まさか彼女は、自分が可愛いと自覚していて野郎を誑かせれるとでも思っているのだろうか?


 「お願い致します。

勇者の到来を楽しみに待ち構えたこの国の王様が、わたくし達の失敗に気づいたらどんな横暴で残忍な指令を下すか・・・この城にお住まいになられているハスキー様なら百も承知でしょうに・・・・・・。

 人助けだと思って頼まれてくださいよ・・・・・・」

 涙目でこちらを上目遣いで見てるティアさんを前に、俺は、撃沈しそうになる。


 だが駄目だ・・・・・・もし承諾するとして、あの王に変な芝居がバレたら、今度は、俺の首がヤバくなるんだぞ!!


 断固拒否しようと俺が口にする瞬間に、彼女は、俺の耳元で優しく囁いた。

 (もし承諾してくださるなら、国王陛下からの任務を終えた後、デートしても構いませんわ・・・・・・)


「はい、喜んで日本人させてもらいますっ!!」

 そうだ、ティアさんは、野郎を誑かせれるのだ。

 ましてやこんな女っ気の無いさくらん坊なら回避の仕様がない・・・・・・全く、自分の武器を自覚している人って怖いね。小悪魔だ。


 「では、まずは身なりから整えましょう。

 いつも着ている服装では、すぐに偽物とバレてしまいますぞ」

 そう言う顎髭ジジイは、服を一張羅用意する。


 「カッターシャツとズボンか・・・・・・」

 恐らく学園生のキャラデザのために着せるんだろう。

 シャツの方は、ヨレヨレなところを見るに、前の異世界人が着ていたものだろうか。

 

 「わたくしは、後ろを向いているのでその服をお召し下さい」

 こちらの着替えを覗かないよう向きを変えるティア。その時の彼女は、顔を真っ赤にしていた。


 「といっても、この服装は別にこの世界のとあまり変わらない気がするけど・・・・・・1番違っているところは、ベルトのデザインか?

 こっちの方だと結び目があるけど、これは尾錠だけで止めるシンプルタイプみたいだな。着替えたぜ」

 

 こちらを振り返るティア。

 「まぁ、なかなかお似合いですわ」

 いやいやこんな廃れた服着て褒めても皮肉か社交辞令にしか聞こえねえよ。

 

 「異世界人は、例外なく魔法の才能に優れている特徴がありますわ。

 ハスキ、じゃなくてソウク様は、何か魔法をお使いになられますか?」

 ティアの質問にため息をこぼす俺。

 「名前訂正しないで下さいよ。  

 俺、魔法の才は、からっきしなんで」


 「ご安心ください! こんなこともあろうかと・・・・・・ちゃんと策は、あります!」

 虚空から収納魔法(?)で、辞典みたいに分厚い本を取り出すティア。

 

「それは、グリモワールってやつですか?」


 「フフフ、ご名答です。            この本の名前は、『虫食(ワーム)(ブック)』・・・・・・多種多様な魔法が、記載という形で、封印されているのです!

 なんと!! この本は、例え魔法の素人さんでも何の問題もなく記載されている魔法が行使できますよ。

 ソウク様、貴方には、これを預かってもらいます。 もちろん遠慮なく術を『浪費』しても構いませんわよ?」


 俺は、仰天した。

 「虫食(ワーム)(ブック)って・・・・・・一国につき一冊しかない国宝級の魔道具じゃないですか!?

 こんな大切な物を、一介の見習い騎士に渡すって正気ですか!?」

 とんでもない話だ。勇者の演技をしろってだけでも厄介なことこの上ないのに、こんなお宝を持っているのが国王とかにバレたら、マジで洒落にならん!!


 「ええ、苦肉の策ですか、私達は、これが最善だと思っています。

 ああそうそう、周囲に国宝を持ち出す心配は、必要ありませんことよ?

 『魔法の才能に優れた勇者様は、わたくしの持っていた虫食(ワーム)(ブック)を複製魔法で増やしておいた』という筋書き通りに演じるだけで大丈夫でございます」

 

 俺の考えは、お見通しか・・・・・・。

 例の本を、ティアから渡される。

 パラパラとその本の内容を俺は、流し読みする。

 辞書みたいに術の名前や内容が書かれているが、他のとは違い、アルファベット順ではなくて、魔法の種類順に記載されているようだ。

 ところどころページの行に不自然な空欄があるな・・・・・・やはり噂通りか。

 特に治療系や蘇生系や読心系が書かれているページは、かなりの欄がスカスカになっていやがる。

 やっぱ便利だからか。


 「もしかしたら勇者お披露目の会にて国王の前で使える魔法やステータスウィンドウを見せるよう命じられるかもしれません」


 「貴殿用のステータスウィンドウのデータは、あらかじめ自分が偽装したものを用意しました」

 クソタリウムは、でっち上げた情報を国王に後で伝えようとする作戦を実行する気だ。

 バレたら完全に終いだぞ、分かってんのか?


 「一度試しに魔法を使ってみても大丈夫でしょうか?」

 

 「・・・・・・残念ですが、お時間が来たようですな」

 出入り口の方に目線を向ける髪切りのクソジジイ。

 奴の視線先には、一人の騎士が入室してきたのだ。


 いよいよか、ああ緊張する・・・・・・。


 「国王陛下がお呼びだ。

 すぐにご足労願う」

 ご覧くださりありがとうございます。

 最近改稿した時期は、5月23日です。

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