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森の妖精

キチキチキチッ ギャッギャッ  ザザザッ ホーゥホーウッ 夜の森は昼間以上に騒がしい。

 闇の中で生存競争が繰り広げられている、人間はよそ者だ。

 「くっそ、生き物の気配が多すぎる、敵が待ち伏せていても分からんぞ!」

 グレイの部下が悪態をついた、夜の森での戦闘など初めてだ、追い詰められている恐怖感が沸き上がる。

 「落ち着け!向こうからも見えてはいない、冷静さを失ったら負ける」

 「私が先頭を変わろう、夜間戦闘には慣れている」

 ラーテルたち三人が小銃を手に中腰で林道を進む、暗闇の中、遮蔽物の意味はない、藪に入ればかえって音が目立つ。

 三角陣形で中央、左右の警戒を分担すると静かに小走りに進んでいく、ぶら下げた装備も音が出ないようにテープで留めている。

 対してグレイたちは歩く度にカチャカチャと音がする。

 「ちっ、静かに歩け、気づかれるぞ!」

 「これだから素人は!」

 ウルヴァ・チームの隊員が悪態をつく。

 「うるせぇ、黙って歩け、役立たず共が!」

 「そうだ、俺達の弾避けにでもなっておけ、クソが!」

 普段からファミリーの内部ではウルヴァ部隊を良く思わないセクションが多い、なにより武装は金がかかる、稼いできた金を右から左に溶かされていることを知っている構成員たちは良く思わないのも当然だ。

 「だまれっ!仲間割れしている場合じゃないぞ、死にたいのか」

 マルスの一括でそれぞれが口を噤むが納得などしていない。

 

 「止まれ!!」

 ラーテルが身を屈める。

 「!!?」

 「何だ!?」

 「いる、こっちを見て居るぞ」

  

 ザワザワザワッ 風が魔笹を揺らしている。

 

  (この山は神聖な場所、お前たちが立ち入って良い場所じゃない)


「!?」

「これは!?」 

「頭の中に直接声が?」

「敵か!!」

 

(味方のわけ無いわ!)


ビシュッ  ドズンッ

 「がっ!!」

  

 先頭のウルヴァ部隊戦闘員の額に棒が生えた、コンパウンドボウ(洋式弓)による無音攻撃。

 「弓だと!?」


 「どこだ、どこから撃たれた!?前か?後ろか!?くそぉ!!」

 

 「まて!止める!俺は投降する、撃たないでくれ!」

 構成員の一人が恐怖に耐えかねて銃を捨てて立ち上がった。


 バシュッ ドズンッ

 「ぐはっ!」

 容赦ない一撃が心臓を直撃する。

 「どういうことだ、矢が木々を縫ってくる、カーブしてくるぞ」

 「だめだ、これではどこから撃たれているのかわからん!」

 「ひとつ確かなのは敵は我々を生かして帰すつもりはないってことだ!走れ!!」

 マルスの号令でラーテル以下全員が脱兎のごとくバラバラに走り出した、四方に散会したことで敵の攻撃は分散されるはず、号令を掛けたマルスは一人だけその場に伏せ、息を潜めて周囲を伺う。

 ラーテルたちの足音が遠ざかる。


 暗い森に静けさが戻る、虫たちの鳴き声が戻ってくる。

 「まいたか!?・・・」

 ずる賢く地を這いながら舌を舐めた。


 (馬鹿ね、私から逃げることは不可能よ)

 「!!」

 

 ガスンッ 目の前に矢が突き立った。

 「くっ!」

 装備していた短機関銃を前方に乱射しながら走り出す。

 視覚や聴覚でこちらの位置を把握していない、いったいどんな方法で索敵されているのか未知の力に底知れぬ恐ろしさを覚えた。

 撃ち尽くした弾倉を捨てて新たな弾倉をリロードする。

 「くそっ、化け物め!!」

 ガガガガガッ 腰だめで三百六十度に弾をばらまく。

 「どうだっ!!」

 死線を感じる、死神に魅入られたようだ、酷く口の中が粘ついている。

 「喉が・・・乾いたぜ・・・」

 

 ドズンッ 矢は天空から、真上から降ってきた、マルスの頭頂を正確に打ち抜く。

 意識が消える一瞬、森の中に月明かりに照らされた銀色の髪が揺れていた。

 「妖精?・・・」

 薄い笑顔が張り付いたまま意識は地面に呑まれた。


 バナマ運河、ルチル隊は既に二人を失った、相手の姿は見えない。

 倉庫らしい建物の裏に構成員が入った途端の打撃音、殴られたのか?確認にいった別の男は拳銃で撃たれた、大口径の拳銃、357か44マグナムだろう。

 襲撃して拉致する目的が大誤算だ、相手は警察ではなかった、法に則り手順を踏み逮捕を目的とする機関ではなく、今自分が相手にしているのは兵士だ、戦争のただ中に飛び込んでしまった、相手は逮捕ではなく排除だけを目的としている。

 脅しも言い訳も聞かない、領域に入ったとたん法外な戦力が待ち構えていた。

 内調は我々を単なる犯罪者ではなく国内の敵性国家と捉えている。

 

 殺気が充満しているのが分かる、自分に向けられている、理不尽だと思った。

 「グレイを返せっ!」

 建物の壁に銃口を向ける。

 パンッ パンッ パンッ 9mm弾の射撃音が軽く頼りない。

 建物の裏手を遠巻きに営業チームの二人が取り囲んで、タイミングを合わせて飛び出す。 「!?」

 誰もいない、裏扉があったのだ、取り囲んだ二人が首を振る。

 「弄んでいるのか!私たちを馬鹿にしているの!」

 血走った目線の先は暗い森、冥界の悪魔の嗤い声が聞こえる。

 (ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!ふざけ:.u!2x@:.u1X/x/xxyth !!!)   

MDMAイヴ大量摂取、幻覚、幻聴を見せる。

 

 ・・・ドドドッ・・・ガアッン・・ギャ・・・

 (XZYJVF!!!???・・・さい・・・CXFCD・・・うるさい!!)

悪魔が頭の中に入った!髪を掻きむしった。

 (出て行け!私の頭から出ていけ!!)


バシィッ 「!!」頬を張られて視界が戻ってくる。

 「ルチル!!しっかりしろ!乗れっ、早く!!」

 「はっ!?」


 煤だらけの顔、服は焼けて燻っていたが、そこに居たのは生きたグレイだった。 

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