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空対地

襲撃班六台の車両はラライダム手前の林道にハンドルを切るとライトを消して慎重に進んでいく。

ラライダム側道は閉鎖されていた、やはり内調はこちらの動きを読んでいる。

 「もとからダム側道など通るはずもない、湖上から船の機銃で狙われたなら逃げ場がない」

 予想どおりダムの上には監視艇が浮いている、この道は下方向からは死角だ、見えてはいない。

 「音をたてるな、静かにすすめ!」

 ラーテルは車列の真ん中から指示をだしている。

 ザアアアッ バサッ ザンッ

 「なんだ!?」

 先頭車両の前に青い影が舞い降りて道を塞いだ。

 先頭車両が停車するに合わせて隊列がストップする。

 「先頭、ハンターチーム、グレイ、どうした?なぜ止まる!?」

 「ラーテルさん・・・あれはダーラニーってケツァルの親分じゃないのか」

 「なに!?」

 「道の真ん中にいる、こっちを見てるぞ、そうだ、確認する、一瞬だけライトを点けるぞ」

 「まっ、まて、ライトは駄目・・・」

 その指示は一瞬遅かった、ライトは点灯された。

 クアアアアアオオオオオオオッー 鼓膜を通り越して内耳と脳を直接殴られたような衝撃が来る。

 ダーラニーのソニックウェポン、その声は兵器だ、神殿でチヒロ達を助けるために放った時とは違う、最大出力での咆哮。

 「ギャアアッ」

 「耳がっ、頭が割れる!!」

 立ち塞がったダーラニーは喉を膨らませ、ライトが点灯される一瞬を待っていたのだ。

 バシィィッン 先頭車両のフロントガラスが音圧で吹き飛ぶ、凄まじい声。

 その声は遥か昔、この世界を統べていたドラゴンの叫び声、聞いた全ての生き物が神の怒りから身を隠す。


 バヒュッ 放ち終わるとダーラニーはロケットの如き加速で天空へと突き刺さっていく。


 「やっ、やられた!あの鳥にこんな能力があったとは!ライトを消せ、早く」

 怒鳴ったラーテルの声に反応出来る者はいない、全員の聴覚が異常をきたしている。

 「くそっ!」

 ヨロヨロとドアを開けてずり落ちるように外にでる、後方の車両からも何人かが降りてきていた。

 手招きで先頭車両のライトを消すように合図すると、一人が意を察して先頭車両に向かった。

 両膝に手をついて頭を振ると聴覚が少し戻ってくる。

 「なんて奴・・・!?」

 ラーテルに対してニシ長官の次のカードが振られる、聴覚が異常な状態でも分かる爆音が高空から降ってくる、その音は星形十八気筒二千馬力の咆哮。

 R293陸軍航空隊 機体番号J7W1 機体愛称 震電 夜間空対地射撃の体制に入っていた。

 先頭車両の点灯されたライトをめがけて突っ込んでくる。


 「まっまずい!!退避!!退避ーー!!」


 ラーテルは斜面を転げ落ちながら叫んだ、何人反応出来たかは分からない。


 ガアアオオオオッーーーーッ  ギャギャギャッギャンッ 30mm機関砲の雨がトラックに直撃する、曳光弾が赤い線を引きながらトラックに吸い込まれる。

 ガババッバゴォッ ドゴオォォッ 凄まじい衝撃音が地面を揺らす、地面を穿つ銃弾はマ弾と呼ばれる爆裂弾、容赦のない選択、必ず殺すという意思がラーテルを青ざめさせた。


 ギユュュウウゥゥゥゥッ ゴオオオオオオッー バオオッー 地上すれすれを反転離脱する震電はディアボロス以上の怪鳥に見えた。


 「くそおっ!これが目的だったのか!?」

 ダーラニーが危険を冒してまで道を塞いだ本命の攻撃は震電による空対地攻撃、ソニックウェポンは布石だった。

 「なんて奴だ、夜間、山岳地帯での空対地攻撃など正気の沙汰ではないぞ、狂っているのか!?」


 十八気筒の排気煙を赤く引きながら震電は夜空をR293方面に飛び去っていく。

 パイロットはチーム・ラプトル ローター・グランツ少尉、空対地攻撃のエキスパート、コードネーム・ファイヤーフライは蛍を意味する。

 夜の闇に一瞬だけ銃撃の炎を灯し消える、猛毒を持った蛍だ。

 

 恐る恐る斜面から顔を出すと、そこにあったのはちぎれた破片だけだ、原型が車であったものを示す物はなにも残っていない。

 拳銃弾やライフル弾とは違う、重爆撃機や戦車を対象にした30mm機関砲、しかも爆発するマ弾だ、トラックの外装など紙同然、生物にいたっては痕跡も残らない。

 「まさか・・・全滅?」

 絶望の冷や汗が伝う。


 「ラーテル隊長!」

 暗がりから声がした、振り向くと林道の下にトラックが生き残っていた。

 「おお!無事だったか!?」

 後方にいた三台のトラックは銃撃の前にバックしていたため無事だった。

 三台からよろよろと襲撃犯が降りてくる、ソニックウェポンによるダメージはあるが外傷は負っていないようだった、生き残ったのはラーテルも入れて14名だ。

 トラック3台と十名が一連射で消失した。


 「どうする?ラーテルさんよ、俺達の行動は奴らにバレバレのようだ」

 後方にいた警備チームのマルスが頭を振りながら話しかける、前の車両が壁となってダメージが少なかったようだ、震電の攻撃を寸前でバックして躱すことが出来た。

 「冗談じゃないわ!警告なしの問答無用で銃撃してくるなんて!法律違反も甚だしいわ、なに考えているのかしら!?信じられない!」

 怒り心頭なのは営業チームのルチルだ。

 「グレイは?」

 「・・・」

 マルスが顎で示した先にあったのはトラックと、十名の人間だったものの痕跡だけだ、その存在を確かめることは最早出来ない。

 「うそ!?そんな・・・」

 絶句した口を押えた両手が震えていた。


 ルチルとグレイは出身を同じくるする幼馴染でもあり恋仲だった、覚醒は得られなかったが成績優秀であった二人は国内の一流企業で働き始めたが、最初にルチルが仕事のプレッシャーから麻薬に走った、ベータロイン事件の粛清を受けて逮捕は免れたが退社したあとは人生を転がり落ちた。

 麻薬患者として復帰プログラムで入院していたところをフッジャにスカウトされたのだ。

 その間もルチルを見捨てずにいてくれたのはグレイだけだった、犯罪組織の一員となった自分を受け入れただけでなく自分も組織の一員となった。

 自分がグレイを巻き込んだ、その挙句に殺してしまった。


 ルチルは胸ポケットからMDMAの入った小瓶を取り出すと直接口の中に放り込む、ガリガリと噛み砕きゴクリと喉を鳴らして嚥下した。

 たちまち充血してきた目を見開き呟く。


 「許さない!ブチ殺してやる!!」

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