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井の中の蛙

 パンッ パパンッ パンッ 六人立ちのコンクリートに囲まれた射撃場はれた室内に銃撃音が響く。

 二十五メートル先の円盤の的を狙う拳銃射撃の訓練場だ。


 ウルヴァチームの全員が参集している、統一された9mm拳銃での射撃訓練。

 

 専用の訓練場は武器庫も兼ねている、基本的に戦争屋であるウルヴァチームの武器は多彩だ、拳銃から小銃、散弾銃、狙撃銃、重火器、軽戦闘車両、流石に戦車はないが陸軍装備の基本的な物を揃えている。

 「諸君、仕事の時間だ!ターゲットは竜子の女がひとりとブレスガンと呼ばれる骨董銃だ!今回の敵はリーベン国 内閣情報調査室、いつものヤクザ相手はではない、向こうもプロだ、やっと実力を発揮出来る機会が訪れた」

 「アル・ラーテル!敵の装備予想は?」

 整列した隊員の一人が手を上げる。

 「私の考えを言おう、相手は内調の命を受けた警察官および陸軍兵士が同一行動をしていると思われる、しかし表立った動きはない、大部隊の投入はないだろう」

 「我々を誘き出そうとする罠ではありませんか」

 「フッフッフッ、罠ならどうする?」

 問われた隊員の口元が上がる。

 「望むところです」

 「多少のハンデはくれてやらないと勝負がつまらないものになってしまいます」

 「その通りだ、この戦いは我がウルヴァ・チームを世界にアピールするのに絶好の機会、困難な状況を乗り越えてこそ価値がある」

 「装備はマカロンPM 9mm、小銃はAK15 7.62mmだ、過剰装備はいらん」

 「あとは・・・これだ!」

 コンバットナイフを抜く、片刃で刃の厚みがあるカーボンスチール製だ。

 アル・エーテルはナイフによる戦闘術を極めている、特にジャングル内、暗闇での肉弾戦が特技でもある。

 「良いか、各チームのリーダーはテッド・カドゥーナの連中にまかせろ、我々はあくまで戦闘を引き受ける、つまらん拉致などはどうでも良い、殺せ、我らは犯罪者にあらず、兵士である!」

 「オオッ!!」


 「出撃せよ!!」


 ウルヴァ・チーム総勢12名は幌トラック2台に分乗するとデッド・カドゥーナと合流するため街へ向かってアクセルを踏んだ。


 西の大国であるタルシュ帝国の正規陸軍、十年前の対ラライ油田でのナジリス対リーベンの戦い、ナジリス側の援軍として一個中隊を率いてラーテルは参戦した。

 結果は倍の人数をもっての大敗、敵将ジョシュ・アイゼン大将の前に完膚なきまでに潰された。

 ラーテル自身も後方指揮所に居たにも関わらず狙撃手に狙われ胸に銃弾を受けた。

 幸い用心のために着用していた防弾服と射撃距離が並外れて遠かったことが弾丸の威力を弱めたため肋骨を折られただけで済んだ。

 推測される射撃距離は二千メートルを越えていると思われた。

 

 恐怖より嫉妬が心を焼いた。

 自分には不可能な作戦、投入した師団内にも、いやタルシュ帝国内にもそんな技術をもった狙撃手は存在しない。

 山岳地帯の狭い戦闘区域、遠距離からの狙撃は人的にも、兵士たちの精神的にも崩壊をもたらした。

 最も遠く、そして重大な影響をナジリス軍に与えたのはエゾ・ヤマモト陸曹。

組織の中では常勝無敗のエリートだった人生設計が崩れた、国に帰った時すでに敗戦した将の席は軍にはなかった。

 関係機関のへの異動、閑職が待っていた。

 人生初めての屈辱に塗れた、リーベン共和国への怨念が募る。

 この後の人生を机の木目を数えて過ごすことなど我慢出来るはずがない、由緒ある貴族の出自であり、体力、知力全てにおいて秀でていた自分が井の中の蛙であったはずなどない、認めない。

 

 「南の小国ごときにこの私が!このままでは終わらんぞ!」


 ラーテルは軍を退職し、新たな組織を作るため海を渡り、敵国に潜入した。

 敗れたのは事実、その原因を知るためには懐の中に入るのが合理的だ、とは言え敵国の軍人が易々と入国できるわけもない。

 繋がったのはマフィア組織、テッド・カドゥーナ。

 油田戦争と同時期に進行していた麻薬内腐作戦時に接触、取引があった組織だ、その発祥は不明だが政治干渉のない純然たる犯罪組織はラーテルにとって組し易い相手、マフィアにとっても熾烈化するマフィ同志の抗争の切り札となるのはプロの傭兵、双方のメリットが重なり活動を共にすることとなった。

 今はまだ一マフィアの囲い兵に過ぎない、ようやく十二名、使えそうな人材を揃え訓練とヤクザ相手の実戦をつんできた。

 訓練所に装備、資金も十分だ、この辺で名前を売りテッド・カドゥーナからは独立する。

 

 フリーの傭兵団として規模を大きくしていくのだ。


 トラックの助手席で揺られながら果て無き野望を、フロントガラスに映る自分の顔に思い描いた。


 テッド・カドゥーナ襲撃部隊との集合場所は念のため二班に分けた、一か所はフロント企業のひとつであるショッピングセンター駐車場、もう一か所はポッター病院だ。

 各隊員が二名ずつ六台に乗り込む、テッドカドゥーナから各チームの要員が二十四名、各車に六名。

 総勢三十六名の部隊だ、女の子ひとり拉致するために動員にしては非常識に多すぎるがドン・フッジャに取引額の概要を聞いて納得した。

 同重量で換算すれば純金の百倍以上の金額になる。


 拉致チームの一台は医療班が乗り込み、万が一の事態に対処できるようにバックアップ体制を整えている、ターゲットの生死は買い取り額に大きく響く、百万単位なら痛くもないが数十億単位となれば失う金額にしては大きすぎる。

 フッジャの目の色が変わるのも仕方がない。

 

 それほど高額な資金を集められるノスフェラトゥ教団の方が脅威なのかもしれない、竜子の贄にどれほどの効果があるのかは懐疑的だが、金を出しているのは数人であるはずがない、信者には相当大物が名を連ねているに違いない。


 「これを機会にビジネスルートを開拓出来るかもしれん」

 栄光への道標を描くうちに目的地は迫っていた。


 「我が誇りを取り戻す!」

 

 

  


 



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