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コウノトリ

 内調から不審車特定の情報を得た警察は、当該車両の特定を完了していた。

 登録は医療機器、薬剤、清掃会社、警備会社、運送会社とまちまちだ。

 報告を受けたニシは推理を加速させる。

 「登録書は本物、しかし各社とも大型のキャンピングカーを持つのは不自然だ、おまけに大出力の無線装備とくれば」

 「移動支店か・・・」

 内調事務所には陸軍航空隊リオが来庁している。

 「なるほど、不動産を持たずに仕事をしているのね」

 「頭のいいやり方だ、神話に登場するヒュドラーのように多頭の化け物がテッド・カドゥーナという組織なのだろう」

 「多頭でもその心臓は一つでしょう?」

 「そのとおり、本体があるはずだ」

 

 机に並べられたキャンピングカーは、車種も仕様も違うように見える、しかし荷台の上に伸びるアンテナは同じものだ。

  

 「医療機器、薬剤メーカー、頻繁に出入りしても不自然ではない施設・・・」

 

 「病院か!」

 「病院ね!」


 ニシがデスクの電話に手を伸ばし各所に指示を飛ばす。


 「攫った竜子の隔離施設、MDMAの保管施設、隠れ蓑には最適だな」

 「マフィアが病院をフロント企業にしているなんて・・・」

 「経営者が麻薬か女か堕されたか、いや魔呪術教信者かも知れん」

 「医者なのに呪術を信じるというの?」

 「真実を知れば絶望する機会も増える、精神を病んだ人間は何かに縋りたくなる、医者や兵士は堕ちやすい」


 「奴らは乗ってくるかしら」

 「ああ、リリィ少佐の話ではカカポライダーの何人かがMDMA中毒の症状が見られるそうだ、ローレルのエンパスでは間違いなくスパイに落ちている」

 「そんなところにまで触手を伸ばしているなんて・・・許せない!」

 

 「ノスフェラトゥ教団に潜伏させた諜報員からの連絡では月蝕の夜、盛大な宴があるらしい、そこで竜子が必要なら近々にフェイレルを手に入れようとするだろう」

 「セーフハウスを襲撃するところを潰すのね」

 「ああ、車両が特定出来ていればラライダムから先の林道でお出迎えだ」

 「任せて!熱いキスをプレゼントしてあげるわ」

 「チームと迎撃方法は任せる、監視は任せてくれ」

 「ダーラニーとの連絡は?」

 「チヒロに任せる」

 「フェイレルとチヒロ、覚醒しちゃうのかな」

 「どうかな、ダーラニーによればどちらも危険だと言っていた、特に彼女の方が危うい」

 「接触は避けた方が良いじゃない?」

 「分からん、ダーラニーの頼みだ、任せてみるしかないだろう」

 「ダーラニーには何が見えているのかしら」

 「五百年の時を見てきた神獣だ、我々の想像を超えた生きる記憶の海そのものだ」

 「我々はたかだか四十年、桁が違う」

 「ちょっとニシ、私は三十前半、一緒にしないでくれる」

 

 「たいしてかわらんだろ」

 「リリィ姉に言いつける!」

 「それは止めろ、姉を殺人者にするつもりか」 


 深夜、チヒロが野営するテント近くに青き翼が舞い降りる。

 「!!」

 「チヒロさん、お疲れ様、女の子たちから差し入れだね」

 コウノトリのように嘴に袋を咥えている。

 「ダーラニー様か!?」

 袋の中身は暖かいスープとパンだ。

 「わざわざこれを届けに?ありがたいが夜だって安心は出来ない、危険だ」

 「フェイリーがどうしてもと言うからね、チヒロだけ特別だね」

 「フェイリーが・・・彼女は元気か?」

 「まあそれなりだね、ずいぶん無茶が好きなようだね」

 「ダーラニー様から良く言ってやってくれないか、無茶するなと」

 「僕よりチヒロから言ってあげた方が喜ぶね」

 「喜ぶ?なぜだ?」

 「会えば解るね、でも今じゃないね」

 「なんの話をしている?」

 「ふふっ、それより今はニシの伝言を聞こうか」

 「ああ、襲撃は明日にも始まるかもしれん」

 「いつの時代も争いがない時はなかったね、世界はそういうものだね」

 「襲撃があれば合図する、ダーラニーは天空へ引いてくれ、フェイリーたちは俺が守る」

 「相手の数によるね」

 「リオ大佐の網を潜るのは簡単じゃないと思うぜ」

 「そうだね、でも相手は非道で冷酷、疑問無き殺人者、油断出来ないね」

 「ああ、この森には俺の他にも諜報員が潜んでいる、ネズミ一匹通さない」




 「おっと、お喋りしすぎたね、遅れるとステラとリンダに叱られてしまうね」

 「伝えてくれ、無茶するなと!」

 ブワッ ひと掻きで夜空に舞い上がる、次の瞬間には山肌を飛び去っていく。


 「二人は似ているね、無茶は昔からだね」


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