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糸口

 欺瞞情報の通り囮役でリリィとローレルがR293基地まで飛ぶ、カカポ機で飛行出来る限界高度まで上昇している。

 小銃での狙撃は不可能な高さだ、危険なのは航空機だがリーベン国内、制空権の中では民間機でも近づくことは出来ない。

 姿を晒して堂々と基地に降り立った。


 ルート周囲には内調や警察関係者が目を光らせている、さすがに発砲してくるような馬鹿はいないが比較的低空を飛んでいた時にローレルのエンパスに引っかかった者がいた。

 すぐさま地上部隊に無線連絡が発信される、狭い行き止まり林道へ車両を突っ込んでいた男たちは警察車両に道を塞がれ行き場を失い投降した、狩猟に来たなどと言い訳をしていたがリーベンの警察は甘くない、徹底的な追及を受けることになる。

 しかし、孫請け以下の輩だ、叩いても本筋には辿り着けないだろう。


 「さすがに簡単には釣れませんね」

 「いえ、そうでもないわ」

 リオ大佐が無線傍受をしていた内調からの連絡を持ってきた。

 秘匿化された暗号通信、オリジナルな物だろう、内容は分からない。

 特殊な物である事、解析出来ないことが返って正体を明かしている、隠すなら平凡の中に隠すべきなのだ。

 「発信元は辿れましたか?お嬢様」

 「ええ、特定出来たわ、見て!」

 リオが差し出したのは航空写真。

 「これは・・・ショッピングモールの駐車場ですか!?」

 「そのとおり、その端に止まっているトラックよ」

 「なるほど!内調がヤサを掴めないはずです」

 「本部に不動産はあると思うけど、事務所は絶えず移動していたのだわ」

 「囮作戦も無駄ではありませんでした」

 「そうね、国内の駐車場に止めて安全圏にいると思っているなら甘いわ」

 「お嬢様、無茶は行けませんよ!?」

 「奴らが5.56mmや9mm弾だけを想定しているなら大間違いだってことを教えてあげるわ」

 ラプトル(猛禽)の目が光る。


 フェイリーたちは大きく迂回してラライダムを越えバナマ運河までやって来る、途中で襲われる脅威はなかった。

 禁忌のノルマン自治区にカカポ機を降ろす、新たに作られた仮設車庫にカカポ機を収納する。

 

 「無事着いたね」

 「途中で襲撃があるのではとヒヤヒヤしたよー」

 「囮になったリリィ隊長とローレル副隊長が心配です」

 「心配ないよ、フェイもすごいけど、あの二人は化け物だよ、リリィ隊長なんかカカポ機で背面飛行するし、ローレル副隊長から隠れるなんて不可能だし」

 「そうそう、あの人たちはカカポ(オウム)に乗っていてもラプトル(猛禽)だもの」

 

 ガサッ 木立の影から大きな影が姿を現す。

 「誰!?」

 三人とも身を縮めて腰の拳銃に手を伸ばした。

 「おっと、撃たないでほしいね、銃は怖いね」

 「えっ!?あなたは・・・」

 「迎えにきたね」

 「ダーラニー様!!」


 木立の影から姿を現したのは神獣ダーラニーと二鳥のケツァルだ。

 三人は片膝を付いて頭を下げた。

 「ダーラニー様がどうしてここに?」

 「迎えにきたね、ここからセーフハウスまでは僕たちが連れていくね」

 「?どういうことでしょうか」

 「ニシやリリィたちとも話は出来ている、安心して乗るといいね」

 言うとダーラニーはクルッと背を向け、嘴で乗れとゼスチャーする。

 「ダーラニー様の背に乗るなんてとんでもない、罰が当たります」

 「これも作戦のうち、ちなみに僕はリーベン国軍特別参謀総長を拝命しているね、これは上官命令だね」

 「参謀総長!!」

 高度一万メートル、雲の上の階級。

 「はっ!失礼しました」

 三人は直立不動で敬礼する。

 「よろしいね、じゃあ僕の背にはフェイレル曹長が乗っておくれ」

 「あっ、いえ私は・・・」

 「呪いの心配なら無用だね、僕たちは神獣だね、呪いがあれば祓い清めてあげるね」

 「さあ、早く」

 三人は顔を見合わせると、おずおずとその柔らかな羽根の上に身体を持ち上げ翼の肩に跨った。

 「良し、準備はいいね、セーフハウスまでひとっ走りだね」

 「走る!?飛ぶのではないのですか?」

 「飛べるけど、飛んだら目立つね、この木立の中を走っていくね、僕たちは走るのとっても得意だね」

 「揺れるからしっかり掴まっていてね!」

 「はい、ダーラニー様」

 フェイレルがダーラニーの瞳を覗き込んで頷いた。

 「Erste Mutter Herzlichen Dank」

 「えっ、なんて仰ったのでしょうか?」

 「なんでもないね」

 目を伏せたダーラニーの顔は満足そうだった。


 フェイレルはチヒロの時のような既視感をダーラニーには覚えていない。

 力強く地を蹴るダーラニーの足は鳥というより恐竜に近い、馬以上のスピード木立の中を移動する。

 ダーラニーたちは迂回に迂回を重ねて、本来の目的地、発電所のセーフハウスで脚を止めた。


 カカポ機の飛来からダーラニーたちとの接触、無事にセーフハウスに到着したのをチヒロは行程を見渡せる山脈の岩場から望遠鏡で周囲を警戒していた。

 神獣ダーラニーの背から降り立つプラチナブロンドが見える。

 「フェイリー、無事だな、でもまた痩せてる」

 見えるはずもないのに見える。

 その表情に前より感情を感じる、なにがあったのだろうか、好ましい変化に思える。

 「後で教えてくれよな」

 望遠鏡の中のフェイリーに語りかける。

 

 「!?」

 フェイリーが振り向き、ひと山を挟んで視線が合った。


 ダーラニーの背から降りたときチヒロの視線を感じた。

 「チヒロが見てる・・・」

 感じる、間違いない、私の視界内に彼がいる。

 「あそこだ・・・」

 高い岩場の先端、見えないけれど見える。


 彼 に手を振る。

 彼女に手を振る。


 「誰に手を振っているの」

 ステラとリンダが不思議そうにフェイが見ている先を見るが人影は見えない。


 「 Erste vater Herzlichen Dank」

 

 ダーラニーの瞳に涙が光った。


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