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内閣情報調査室

105補給基地を襲った生物の死骸がテーブルに置かれている。

 大きさは子犬程、外郭は鏡のように周囲を映す、周囲が森であったなら目視するのは難しくなる。

 「ダーラニーが助けてくれた?」

 「はい、リリィ少佐たちにもよろしくと、そして近く街に降り立つと申しておりました」

 「なるほど、それでチヒロは内調に一時帰還したのか」

 「我々が探していたブレスガンについての情報をお持ちのようでした」

 「しかし、今この基地の優先順位はこの蟻だ、ジャックさん、これはなんだか分かるか?」

 リリィ少佐は珍しく及び腰だ、基本的に虫が苦手だった。

 「古文書にある記述では(見えない吸血蟻)、遥か古代の世界を滅亡に追いやった悪魔の使徒、千年に一度蘇るとあります」

 「今が復活の時だというのか」

 「それは分かりません、それにこの蟻には羽根があります、記述にはない状態にあります」

 「生物学の範囲だな・・・オックス教授に応援を頼むか」

 「そうですね、オックス姉さんなら何らかの知見を持っているかも知れません」

 Drエイラとローレル副隊長の姉、国立生物学教室のオックス・デルナシエ教授はダーラニーと交信できる神官でもある。

 「サンプルを届けて見てもらうことにしよう」


 「これは私の仮説なのですが、サガル神山の迷宮、あの道はこの蟻が作ったのではないかと思うのです」

 「蟻が迷宮を作った?」

 「迷宮を歩くと、等間隔で大きな広間があるのです、そこは貯蔵庫の様であり、孵化場の様でもありました、つまり巣です、迷宮とはこの吸血蟻の巣です」

 「あの巨大なサガル神山の内部に奔る迷路がこいつらの巣だと言うの!?」

 「そして赤い鱗ミミズは蟻を餌とする捕食者、彼等が蟻を追う課程で道を広げているのではないでしょうか」

 「むう、大胆な仮説だが合点が行く点があるな」

 「再びの襲撃があると思うか」

 「今まで地上では見られなかったこの蟻がなぜ突然地上に現れたのかが不明です、それ次第だと思います」

 「やはり備えは必要だな」

 「はい、空中で衝突すれば墜落の危険があります」

 「機体はともかく人体に衝突すれば相当な打撃になる、機体から振り落とされる」

 「蟻の危険があっても前線基地への補給業務は必要です、休むわけにはいきません」

 「機体のバージョンアップは私が早急に考える、ローレルはオックスのところへ至急飛んでくれるか」

 「はい、明日にも」

 「護衛のオウルゼロ、フェイリーは流石に無理だ、非武装でいけるか」

 「私には奥の手があります、ご安心を」

 「もしかダーラニーに会うことがあったらよろしく言ってくれ」

 「残念がると思います」

 「生きていれば会う機会はいくらでもあるさ」


 内閣情報調査室、ニシ長官のもとに各セクションのチームリーダーが集まった。

 内調機関に階級は存在しない、各作戦毎にリーダーが選出される、チヒロのように単独作戦もあり得る。

 「ダーラニーがそう言ったのか」

 ニシ長官は幾つものファイルを広げている、彼の頭の中は幾筋もの情報が交錯し断片のパズルを組み立てる。

 「はい、触れてはいけない、禁忌の武器だと」

 「チヒロ、お前はどう思う?」

 「はい、危険になのは確かだと思います、ですが触るな、同時に触らせるな、だと思います」

 「ナジリスも狙っているというのだな」

 「間違いありません、ガンガラシバナ神殿跡の掘削作業、途中ではありましたが奴らはそこにヒントがあるとの情報を得ていたのでしょう」

 「ナジリス潜入工作一般です、迷宮の地図の一部を入手しました、チヒロ諜報員が神殿跡でナジリス将校から取得したものとは別の地図です、それによると候補は二カ所、一つは冥界の神殿と呼ばれていたのがガンガラシバナです」

 「冥界?ガンガラシバナは標高二千メートル以上だぞ」

 「ああ、もう一カ所が天空の神殿、標高九千メートルだ、二千メートルは冥界だ」

 「標高九千メートル!ほとんど頂上じゃないか!」

 「遥か昔、到達した人間がいたようだ」

 「信じられん」

 「ナジリス軍の様子は?」

 「Vー1ロケットをカモフラージュにした偵察が行われています」

 「高度一万から神殿を探しているのか」

 「残念ながら我々の方が遅れているな、ダーラニーが情報を持っていると良いが」

 「次だ」


 「新型MDMA麻薬(イブ)についてだ」

 「麻薬取締部です、国内に展開しているマフィアにテッド・カドゥーナと呼ばれる組織が関連しているようです、しかし、根城が掴めません、内調さんに情報がありませんか」

 「テッド・カドゥーナ!危険度シングルナンバーの組織です、人身売買、麻薬、武器密輸、こちらでも全容は掴んでいませんが、先月人身売買用と思われるストックヤードを一つ潰しました」

 「人身売買?この時代に奴隷制度の国があるのか」

 「いえ、ある宗教儀式の贄にするようです、非常に高額で取引されているようです」

 「魔呪術教団、魔族の血を引く竜子と呼ばれる人間を食人するカニバリズム趣向、悍ましい宗教ですが文明未開の地では今だ信じられているようです」

 「竜子?何か特徴があるのか」

 「竜の鱗を持っているそうです、肌の色が白いほど価値があると言われています」

 「何だと!」

 チヒロが絶句する、フェイレルは竜子の条件に合致している。

 「チヒロ、心当たりがあるのか」

 「はい、リリィ少佐の105基地に該当者がいます」

 「フェイレル・レーゼ曹長、知り合いだったか」

 「ニシ長官はご存知だったのですね」

 「リリィたちも把握はしているが、事は逼迫してきているようだ」

 「フェイレルが狙われていると・・・」

 「相手がテッド・カドゥーナなら基地内でも安心できない、奴らがナジリスと通じていた場合、戦場での危険も倍加する、保護対象とすべきかも知れない」

 「ナジリス国内班ですが、こちらでもテッド・カドゥーナの名前があがっていす、鉱物の密輸疑惑がある組織です」

 「鉱物?希少鉱物か何かか?」

 「いえ、青い琥珀石です、ナジリス側で割と多く採掘されるものです」

 「何に使用しているんだ?」

 「それが不明なのです」

 「うーん、結び付けるには材料不足だな、ダーラニーの情報を待つか・・・陸軍航空隊、リオ大佐の震電なら一万まで上がれるのか」

 「可能だと思います」

 「よし、まずは天空神殿の防衛だ、チーム・ラプトルとの協議はチヒロに任せる」

 「はい」

 「各班調査を続行、的はテッド・カドゥーナに絞れ!」


 「室長!国立生物学教室から連絡、至急とのことです!」

 「もう来たのか、早かったな」


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