OWL(梟)-01
「リリィ少佐、内閣情報室より秘匿回線で入電です、繋がっています」
「チヒロか!」
補給基地に連絡が入ったのはフェイリーたちがレゾリューを離陸した頃だった。
「こちらサメ、式典の準備中、酉に納品をお願いする、客の数は二十人に増えた、クレーマーは一人だ、支払いは現金で頼みたい」
「受注した、食べ過ぎるなよ」
「追加がひとつある」
「追加?」
「コーンスネークは巣に戻ったか?」
「まだだ、しかし無事だ」
「あの小さな羽根はそちらの仕込みか」
「いや、天然だ」
「食べ過ぎだ!中毒死するぞ、自嘲しろと伝えてくれ」
「フフッ、伝えよう」
「以上、通信終わり」
チヒロは作戦準備を完了した、午後3時狼煙は上がる。
リリィは再度秘匿通信をR293に向けて打電する。
「ニイタカヤマノボレ」
作戦発動の暗号。
「それでフェイリー、どうやって撃墜地点まで移動したって!?」
リリィ少佐を始め全員が呆れ顔なのは仕方が無い。
フェイリーの答えは予想どおり、ガンガラシバナから飛び降りただった。
「ほんとに飛んだの?」
「はい、滑空飛行は十分可能です」
「誰にでも出来ることじゃない、真似する奴が出ないようにしないと」
フェイリーがギクリと身体震わせる。
「お金を積まれても断りますね」
ローレルが両手を広げた。
「そうだな、普通やらないな」
「だが、殉職者を埋葬してくれたこと、感謝する」
「お前のお陰で我々も、あの墓標の上を通る度に祈ることが出来る、ありがとう」
リリィ少佐がフェイリルの手を強く握る。
「いいえ、お役に立てて良かったです」
「帰ってきたばかりですまないが、もう一度レゾリューに行って貰いたい、行けるか」
「昨夜の睡眠は十分でした、いつでも行けます」
「良し、付いてきてくれ」
ローターが運んできた機体、VTOLカカポに7.7mm旋回機銃を装備した直営護衛機。
OWL-01、オウルゼロワン(梟の爪)。
「フェイリー、お前に搭乗してほしい」
「これは・・・銃装備が・・・」
「そうだ、これで仲間たちを守ってほしい、非武装の二機編隊から護衛機を先頭にした三機編隊に組み直す、今回調達できたのは二機、私とお前で隊の護衛をする」
「なぜ私なのでしょうか・・・」
「操縦技術、目の良さ、何より人を思う心だ」
「私は・・・人を不幸にします、きっと私だけが生き残ってしまう、私が仲間たちの運を全て食べてしまう・・・不適格です」
「違うな、そうであれば今回ローレルたちはレゾリューに辿り着いていなかった、お前が運を引き寄せた、いや運などではない、フェイリル、お前自身の手と足、痛みと苦痛が彼女たちを助けたんだ」
「私が助けた・・・?」
「そうだ、もう一人もな」
「?」
「チヒロだ、やつは今、迷宮の出入り口の封鎖作戦のため渓谷に潜んでいる、我々を的にする敵から守るために命を張っている」
「チヒロ!」
「チヒロから伝言だ、無茶するな!死ぬな!」
「お前のムササビ飛行を何処がで目撃したようだ」
あの平場でみた影はやはり、幻ではなかった。
また心臓が暴れ始まる、不整脈がフェイリルを戸惑わせる。
自然と手が胸を掴む。
「敵とはいえ人を撃つことは恐ろしい、一つの命を奪うことは、その命に関わる多くの人たちを取り返しの付かないほどに傷つける、でも、私たちは神ではない、全てを救うことはできない」
「なら、自分の手の届く者たちは幸せになってほしい、それは罪だと思うか?」
「私は・・・私には恐怖心がありません、その他にも多くの感情が抜け落ちた出来損ないです、自分が普通ではない自覚はあります、集団の中での異端は隊の秩序を乱し、全体を危険にします」
「至極真っ当に聞こえるが、普通じゃなくてもいいんだ、私だって隻眼で体力的には平均以下だ、ローレルのエンパス能力だって異常だ、意図せず他人の感情が解ってしまう苦痛は想像を絶する、皆生きている以上何らかのリスクは背負っている」
「苦労自慢はいらない、お前を邪魔だと思う者もいるだろう、でもな、それ以上にお前を必要とする人はいるんだ」
「・・・」
「共に戦え、死ぬために生きるな!」
「!」




