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第4話 治せェ!!

さっきから遠目で様子を見ていた感じ、俺の知っているクレアではない。

パーティーメンバーと談笑し、昨日のようにローブも纏っていない。何か誰にも話していないことがあるのだろうか。


クレアの方も気まずそうにこちらを見ていた。


「な、何で君がここにいるの?」

「いや、俺も一応冒険者だから…」

「そ、そうだったのか…。なら、1つ約束してほしいことがあるんだけどいい?」


そう言ってクレアは俺の耳元でこう囁いた。


「昨日のこと、というか、私があそこでバイトしてることは内緒にしてほしい」

「え?何でだ?まあ、そこにも事情があるんだろうから深堀はしないでおくけど」


すると、何か俺とクレアが特別な関係だと勘違いし出したパーティーメンバーが茶化し出した。


「まさか、クレアに彼氏!?」

「そんなワケないだろ。いくら容姿と性格が良くても<龍殺し>の称号を持った嫁さんなんか男が持ちたがるかよ。浮気したらぶっ飛ばされちまうからな」


クレアはそんな冗談に頬を膨らませながら反論した。


「違います。この人はただ昨日偶然会っただけの知人だよ。イデアさんって言うんだけど、このパーティーに入れてもいいかな?」

「まあ、クレアがパーティーに入れたいって言うってことはそれなりの実力者なんだろ。俺はいいぞ」

「私もオッケーだよ」


パーティーメンバーは俺のことを歓迎してくれた。でも、入りたいって言ってないのに何で入れてくれたんだ?確かにパーティーに加入してた方が色々と有利だが…。



俺たちはクエスト『ランクB以上のモンスターの魔核石を5つ回収』を達成する為に強いモンスターが多く出現する森へと向かっていた。


「なあ、何でお前はあそこで働いてることを隠そうとしてるんだ?」

「私には私なりの事情があるし、それに、あそこで働く日の私は病気で寝込んでる設定になってるから…」

「なるほど、パーティーメンバーにウソをバレたくないってことか」

「いや、まあ、それもあるけど…」


「止まって!」


目の前を歩いていた1人のパーティーメンバーが急に止まり、剣を鞘から引き抜いた。


目の前には魔狼の群れがいた。確か、ランクはB⁺。今見ただけでも5匹以上はいる。これを全部倒せばすぐにクエストはクリアだ。


「あああッ!?」


さっきすぐに臨戦態勢になったはずの目の前のパーティーメンバーは左腕を魔狼に嚙みつかれていた。


「これでも喰らえ!」


俺はその魔狼に持っていた短剣で切りつけたが、軽く切れて血が流れたくらいだった。昔の聖剣と同じようにはいかないか…。

その後、その魔狼は俺に飛びかかって肩に噛みついてきたが、全く痛くなかった。これが異常な防御の効果?いや、単純に神だからモンスターからの攻撃が効かないのか?


「イデア、動かないで」


クレアは剣で俺の肩の魔狼を切り裂いた。魔核石と少しの毛皮だけが残ってその魔狼は消滅した。

それを契機に後ろで待機していた残党もクレアに飛びかかろうとした。俺が盾になればきっと手間取らずに済むはずだった。

俺が走り出した刹那、紫色の斬撃と血の雨が俺には見えた。


クレアはその魔狼たちを舞うようにして全て切り裂き、一瞬にして片づけていた。


「ごめん、またやりすぎちゃった?いやぁ、また怪我してないのに血まみれになっちゃった」


こうして、俺が予想していたよりも呆気なくクエストは完了を迎えたのであった。



その後、俺たちはギルドで各自シャワーや着替え、手当てを終えるとクエスト完了の手続きとドロップアイテムの換金、それを山分けして解散した。


ただ、俺にはまだやるべきことが残されていた。いや、ストーキングと言われてしまえばそれまでのことだが…。

クレアが何を俺たちに、いや、全ての人に隠しているのかを調べるのだ。そうすれば、きっと…、いや、俺の自己満足かもしれないが。


俺はうまいことバレずにクレアを家までつけることに成功した…。家?この前は宿だったのに?まあいい、<地獄耳>でも使って少し盗み聞きするか。

中にはクレアと、似たような髪色だけど角は生えていない1人の女性がいた。


「お母さん、もう少しで手に入るからね、お薬」

「そう…。悪いね、無理させちゃって」

「いいの。それより、あんまり喋らずに安静にして。お医者様に言われたでしょ」

「そうだったわね。それで、本当に300万メイルも集まるの?」

「うん、あと8万メイルあれば…」


300万メイル!?どこにそんな高額な薬があるんだ?一番高い薬でもジュマラ症候群の特効薬の聖薬で50万メイルがせいぜいのはず…。でも、見るにクレアの母親が患っている症状が全て発生する病気は何にも該当しない。だとすれば、これは高い技術でかけられた呪いかもしれない。


「ちょっと失礼」

「え!?イデア、何でここに?」

「悪い、お前が何を隠してるのか気になって。それより、そこをどいてくれ」

「あ、うん」


俺はクレアの母親の額に手を当て、神の力<呪力感知>を発動させた。

(<呪力感知>などの一部の【神の力】は、聖職者も使える。)

やっぱり、高度な技術で呪いがかけられていた。この隠ぺいの仕方は人間の所業じゃない。だとすれば、悪魔族の仕業だな。

ヒゲオヤジの最高神から貰った聖水でどうにかなるだろう。

俺はショルダーバッグから取り出した瓶に入っている聖水をクレアの母親に飲ませた。

飲ませてすぐは苦しそうにしていたものの、少しづつ表情が安らいでいき、起き上がるにまで至った。


「あれ、さっきまで体が重かったのに…」

「お、お母さん、元気になった?」

「うん、元気になったよ」

「よかったぁ…」


半泣きになりながら母親と抱きしめ合うクレアを見て、こんな表情もするんだな、と俺は思った。

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