第2話 探せェ!!
そう、下界は天界のように常に快適なわけではない。経った年月から考えるに今は6月末。梅雨の時期が終わったあたりだろうか。
俺は目の前の門をくぐって街に入った。見渡すと、昔に比べれば発展しているようだったがどことなく昔の雰囲気が残っていた。
さて、まずは金を確保しなければ。確か左のポケットにあの宝石が入ってたはず…。
あった。この見る角度を変えると色が自由自在に変わるこの宝石を売ってみよう。道具屋は目の前だ。
俺が店内に入ると、少し懐かしい雰囲気を漂わせる道具屋だった。
「いらっしゃい。何か買ってくかい?それとも売るかい?」
「ああ、実は売りたいものがあるんだが…。これって売れるか?」
「こ、こここ、これは…!?シャインタイト!?しかもこんな大きさで…。ダメだ、こんなモン買い取ったらウチが潰れちまう。他所を当たってくれ」
これ、そんなにレアなヤツなのか?確か、岩の神ルーザから友好の証とかいって貰ったやつだっけ?とりあえず、ヤバいのは分かった。
*
色々考えた結果、俺はコレをギルドに売ることにした。あそこの換金所なら馬鹿みたいな量のお金があるだろうし、俺がどんなヤバいヤツを売り飛ばしても問題無いだろ。
俺がギルドに入った時、俺は一瞬ただの酒場に入り込んだのかと思った。俺が生きていた頃のギルドは殺伐とした雰囲気の漂う場所で、ギルドの中での殺し合いや抗争なんて日常茶飯事と言っても過言ではなかった。
それなのに、これは何だろう。冒険者たちが和気あいあいと酒を飲みかわし、争いなんて起きそうにもなかった。
「何じゃこりゃぁぁぁぁ!?」
「い、いらっしゃいませ。冒険者登録やドロップアイテムの換金でしたらあちらへ、お食事はこちらになります」
「あ、はい」
ギルドがこうなってることも驚きだが、多種多様な種族がいるにも関わらず俺の知らない種族が一切いないし、俺の知ってる種族は1人でもいた。つまり、この3420年間一切種族の出現も絶滅も起きていないことになる。
「すみません、これ換金したいんですけど…」
「冒険者証明書はお持ちですか?」
「冒険者証明書?」
「はい。それがないと換金はできません。冒険者登録がお済みでなければこの場でできますが、どうなさいますか?」
「じゃ、じゃあ、お願いします」
「では、この紙の円の部分に血を一滴垂らしてください」
俺は指示通りそこに血を垂らした。すると、証明書は金色に発光し出した。
「ふ、普通なら証明書は青色に光るはずですが…」
それ、多分俺が神の所為だと思うんだけど…。って言いたいところだけどあえて言わずに成り行きを見てみよう。
発光が収まった証明書には色々と文字が書かれていた。字の形は似ているけどやっぱり昔のものと少し違った。
「え…?こ、こんな数値が出るはずは…」
やっぱり、神だからステータスは異常なのだろうか?
「最初からレベル16、攻撃12/100、魔法23/100、物理防御41/100、魔法防御33/100、素早さ14/100、運25/100…。光はおかしかったのに異常なステータスは2種類の防御だけ、むしろ攻撃と素早さがこのレベルではあり得ないほど低い…。すみません、何かも間違いかもしれないのでもう1回垂らしてもらっていいですか?」
「え?これって何回垂らしても変わらないんじゃないのか?」
「あ、そう、そうでしたね。申し訳ございません」
と、とりあえず俺の適正は防御にあるの?最初っからレベルが16もあるのはいいこととして、どうやって神具の回収の為に敵に立ち向かえっていうんだ…。そもそも、何で俺が戦う前提なんだ?
「それで、何を換金されるんでしたっけ?」
「あ、このシャインタイトとかいう鉱石なんですけど…」
「こ、この大きさのシャインタイトが存在するなんて…。こ、これを換金するんですか?」
「はい」
「しょ、少々お待ちください」
それから、俺は少々というか2時間近く待たされた。
*
「お、お客様、大変お待たせしました…」
さっき俺の担当をしていた従業員が青ざめた顔で出てきた。
「そ、その、上司と議論したのですが、5000万メイルということで、一気に支払うとギルドの方が危ないので、ここでは一旦1000万メイルお支払いしますので、毎月100万メイルずつ40か月払いとさせていただきます。一括払いできず申し訳ございません」
「あ、はい…」
まさかこんな金額になるとは思ってもみなかった。が、これで俺も小金持ちだ。でも、冒険者やってるだけじゃ情報収集ができないかもしれない。
ここは、いっそギルドの酒場で働いてみるか。
*
とりあえず、俺はそこにいた店長らしき人に話しかけた。
「すみません、求人を見て来た者ですが…」
「いいですよ。ホール希望ですか?キッチン希望ですか?」
「あ、ではキッチン希望で」
「では明日から来てください」
「あ、はい」
こうして、明日から俺は冒険者兼アルバイトとして神具回収に近づく努力を始めようとするのだった。