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第1話 働けェ!!

3420年前、地上はおろか地下世界や天界まで巻き込んだ恐ろしく大きい戦争が起きた。多くの種族が手を組み、あるいは欺きながら互いに自分の種族の保身だけを考えて戦った。

その頃、互いの種族間の裏切りを極度に恐れていたこともあってかどこも異種族同士の恋愛禁止は暗黙の了解だった。

しかし、とある村に人間の少年と虎人(タイガー)の少女のカップルがいた。

それはもう、途轍もない両想いで、虎人の一族も人間に守ってもらっていることから誰もが見て見ぬふりをして許していた。


それなのに…。


戦争が終わりに近づいた頃、少女は少年を庇って死んだ。少年は多くの種族の負の感情によって汚染されたとある魔剣を使って自分に敵対する全てを薙ぎ払い、惨殺した。

少年は全ての元凶とされていた<魔帝二十四騎士>との闘いの際に我を取り戻し、魔剣を聖剣にファルセットし、何とか封印することに成功した。その最後の一撃で自らの身体も滅ぼしたが。


少年は死んでから自分が暴走している間に罪のない多くの人を惨殺したことや、少女が死んだことは覆しようのない真実だということに絶望し、それと同時にそんな自分があっけなく死んだことに少し安心した。

少年は今すぐあの少女に会いたいと最高神に申し出たが、少女の魂が既に天界に存在せず、転生先に会いに行っても記憶が無いから無駄だと告げられ、精神状態が不安定になり、そのまま数百年寝込んだ。

その後、少年は叩き起こされ、勇者として世界を平和に導いた報酬としてずっと空席になっていた怠惰の神を押し付けられた。



それから2000年と少し、今に至る。

こうやって振り返ると、やっぱり俺の人生って悲惨だ。あーあ、今日もニカがいればな…。ああ、会いたいのに、こうやって毎日毎世紀ぐだぐだしてても会えないことは分かってるのに…。


「イデア、そろそろ地上で仕事でもしてきたら?」

義姉(ねえ)さま、俺みたく普段暇なヤツらが下界で仕事するのって、ぶっちゃけ最高神様とか忙しい神様のパシリだと思うんだけど…」

「それでも、近いうちにあなたが封印した<魔帝二十四騎士>が復活するかもしれないっていう話が出ているんですよ。それに、現状あの封印岩の周辺では高レベルのモンスターが大量発生しているんです。もう時間がないんですよ、きっと。それに、もしもあなたが神具の1つを回収し損ねたのが原因でニカちゃんとイデアのように間を引き裂かれてしまうようなことがあったら…」

「俺たちのことを話に出すな!!…いいよな、義姉さまは静寂の神だからきっと何の苦労もなく過ごしてきたんだろ」

「私だって苦労はありますよ。どっかの義理の弟に世話を焼かなくてはいけないので」

「…義姉さままでそんなこと言わないでくれよ。俺だってまだ辛いんだよ」

「冗談が過ぎました。謝るから機嫌を損ねないでください」

「分かったよ」


俺自身、俺が心の古傷に浸り続けてるだけの弱い野郎だってのは知ってる。それでも、それだけニカがいなくなったことが俺には辛く、苦しい。


「ミナセ様、イデア様、最高神様からお呼び出しです」


最高神秘書の1人が直々に呼び出しに来た、ということは何か重要な案件でもあるのだろうか。



随分久しぶりに見上げたこのヒゲオヤジ_最高神様_は、何か言いたげにこちらを見下ろしていた。


「ミナセ、イデア。久しぶりだな。直接会うのは200年くらい振りか?それにしても、イデアはいつになったら下界で働くのだ?勇者だった頃の元気はどこに置いてきた?」

「俺はただニカが居ないことを受け入れたくないだけですよ。それに、義姉さまの手伝いくらいはしてますよ」

「御託は要らない。ミナセに迷惑をかけていることは事実だろう。それに、我は貴様らをパシリにするつもりなど一切ない。しかし、神同士の支え合いがなければあいずれ下界も支え合いがなくなってしまう。貴様は恋人たかが1人を死なせたくらいで折れるようなへなちょこだったか?」


恋人たかが1人?随分酷く言ってくれるじゃねえか…。もう我慢できねえ!!


「このクソヒゲオヤジ!!お前みてえな一生童〇のヤツに言われたくねえぞ!!」

「き、貴様も童〇だろうが!!働け!!元勇者…、いや、怠惰の神!!下界で人間に紛れながら神具を集めてこい!ミナセの手は借りるなよ!!」


働いてやるもんか!…なんて思っていたら足元に魔法陣が展開だれた。


「まず神具を1つ手に入れるまでは天界に戻って来れないようにしてやったからな。ざまあみろだ」

「こ、このクソ野郎!!」


俺が叫び終わろうとした頃にはもう青い光に包まれて次第に視界か真っ白になっていった。



俺が目を開けると、そこは人間の住む街の前の門だった。


…っていうか、クソ暑いな!?

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