1.6
凪高校は、通学路の坂を下ったところに駅があって。
それを通り越して、数十分歩いたところにボウリング場はある。
「まって、よく考えたら遠くない!?
りんたち徒歩だし!」
駅に着こうと言うところで、問題提起は為された。
「ふむ……、確かにそうだね。
往復になるわけだし。なら、こんなのは?」
「?」
かえでは何を言うつもりだろう。
「タクシーに乗るのはどうだろう」
「っ、貴族階級がいる……!!!!
こいつが犯人だ、捕まえろー!!」
りんが警察、かえでが犯人。
その連行現場はあまり想像がつかないな。
むしろ逆だと思う。
「何の犯人なの! あたしだってばかじゃないわ。
タクシーなら四人乗れるし、割り勘すればバスと大差ないでしょう」
「おい、あとひとりは!」
「あたしは走っていくわ。
代わりに、着いたら受付でもしといてよ。
そんなに待たせないから」
かえでの化け物じみた持久力は知っている。
趣味でハーフマラソンをやっていることも。
けれど。
「さすがにそれは悪いよ」
「あら、まさか走ってボウリングしたあたしに負けるのが恥ずかしい?
そんな醜態で恥辱に悶えるのが嫌ってこと?」
何言ってんだこの人!?
「りんは負けないもん!!!!」
「わ、私だって勝つからね!」
あ、これ、収拾つかないやつだ──。
わたしは即座に達観した。
そして話は紆余曲折の末、最下位全額自腹ボウリングへと変貌したのだった。
どうしてこうなった!?!?
◇登場人物
夏松ゆず :わたしの友達。笑顔がかわいい。
春原さくら:わたし。凪高校一年生。
かえで:わたしの友達。趣味でランニングをしている。
冬村りん :わたしの友達。体力はないが天性の運動神経。
風祭あおい:わたしの友達。救世の天使。