1.5
「みんなありがとねー!」
着替え終わったりんが、体育館から出てくる。
バレー部も終わっていたので、あおいも含めて全員が揃っている。
これ、結構珍しくないか。
普段は割と即帰宅組と部活組に分かれる印象がある。
いや、別にわたしは帰宅部の暇人とかいうわけでは……!
学生生活を謳歌してるだけだもん! 何か悪いか!?
「別にわたしたちは何もしていないけどねっ。
りんとあおいこそおつかれさま!」
親指を立てるりんと、この世で一番可愛いくらいに微笑むあおい。
直視したら目が壊れる気がして、ふいと逸らす。
「久しぶりだねー、こうしてみんなで帰るの」
あおいから溢れ出た嬉しさが流れ込んでくる気がした。
まあ、あおいはひとりで帰ることも多そうだしね。
「そうだよね、なんだか嬉しくなっちゃうな」
「わかる」
ゆずの意見に完全同意だけど、なんか小学生みたいな感想しか出てこない自分が悔しい。
やっぱね、本当に心が揺れ動いたとき、
人は何も言えなくなるものだよ!
それを差し置いてもわたしの語彙力は小学生並みだが……。
「せっかくだから、どっか行かない?」
ナイスゆず!
わたしは心のいいねボタンを連打した。
SNSのそれは加算されていかないけれど、心の中のはいくらでもカウントされるからね!
「ふふ、賛成!」
あおいは綻んで(かわいい)
小さく挙手をした(かわいい)
「どこに行くのがいいかな。ボウリングとかはどう?」
「楓ちゃん、なかなか渋いねえ!」
「そ、そうかな?」
渋いと評すけれど、かえでの提案はりんの琴線に触れたらしい。
三人もそれに賛成し、通学路の坂を下ってゆく。
ボウリングかあ。
わたしも運動は苦手じゃないけど、この万能たちとやるとなると、わくわくだけじゃなくてどきどきもありますね……!
◇登場人物
夏松ゆず :わたしの友達。笑顔がかわいい。
春原さくら:わたし。凪高校一年生。
かえで:わたしの友達。きつめに見えて実は優しい。
冬村りん :わたしの友達。体力はないが天性の運動神経。
風祭あおい:わたしの友達。救世の天使。