1.4
十数分後、体育館。
既に練習が始まっていて、りんは急いで着替えて参加しようとしていた。
わたしたちは、体育の見学みたいに壇上に座って足をぶらりと出して練習の様子を眺めていた。
「でも試合とかならまだしも、練習まで参加して大丈夫なの?
冬村は体力持たないんじゃないの?」
かえでの懸念はもっともなのだけど、
わたしはそれよりもかえでの方に意識を吸われていた。
思い描いていた姿そのままに腕組みをして眺めているかえで。
この絵面は、雑誌の表紙にしても違和感がないな……。
凛々しさと美しさの共存。そこに鋭さと可愛さを隠し味として加えたようなーー完成品の光景がそこにあったのだ。
「ねえ、春原、なんか変なこと考えてない……?」
本質を発揮してわたしに問うてくるけれど、まだ甘いな……!
今までに脳内で無限回は開かれてきたわたしの妄想展覧会にまでは、想像は至っていないらしい。
いや、至らなくていいのだけど、ほんとに。
ともかく、わたしたちは、ポニテを揺らして駆けるりんの勇姿を見ていたのだけど、
それはもう本当に理解を超えていた。
自分が体力がないことを自覚しているから運動量は多くないけれど。それすら利用して速度変化で鮮やかにブロックをかわしてゆく。
りんのプレーは、連続性を予測させない。
ドリブルで相手を抜く最中に、ボールを放り投げてシュートを放つような、嘘のような技を使ってくる。
しかもそれでいて、シュートの成功率も──部員たちほどではないけれど──それに迫るくらいの精度がある。
身体中の元気を弾けさせるりんの姿に、わたしはただ見惚れていた。
◇登場人物
夏松ゆず :わたしの友達。笑顔がかわいい。
春原さくら:わたし。凪高校一年生。
かえで:わたしの友達。きつめに見えて実は優しい。
冬村りん :わたしの友達。体力はないが天性の運動神経。
風祭あおい:わたしの友達。救世の天使。