1.3
あおいから発せられた願い。
それは、バスケ部の助っ人だった。
凪高校は運動部の部員が少ないのだ。
レギュラーがぎりぎり埋まるくらいの人数の部活も少なくない。
バスケ部はそのうちのひとつだった。
「あおいは引っ張りだこだもんね」
ふわっとして穏やかな雰囲気だけれど。
その雰囲気のまま、どんなスポーツも卒なくこなす。
正直そこが一番すごいし、わけがわからない。
ともかく、そんなあおいはいつも部活の手伝いに行っていて、
今日はバレー部に行くらしい。
いくらあおいといえど、ふたりに分裂することはできない。
できない……? できてほしいな……。
ふたりのあおいに挟まれて甘やかされたら、
しあわせの花畑から戻ってこれなくなってしまいそう……。
「それ、りんに任せてよ!」
冬村りん。
暴走する妄想からわたしを引き戻したのは、りんの声だった。
りんは、運動神経は抜群だ。ただし、体力があまりない。
短く深い超集中で派手なプレーを量産する手品師なタイプだ。
「りんちゃんありがとううう」
「じゃあ自分は冬村の観戦でもしていようかな」
見える──。後方保護者面をして腕を組んでいるかえでの姿が脳内にくっきりと浮かぶ!
「さくちゃ、私たちも観に行かない?」
「いいね、りんの勇姿を拝みにいこうじゃないか」
「授業参観かな!?」
ゆずとわたしの参戦に驚くりんも可愛いんだよな。
わたしは、しあわせの波に呑まれているのだった。
◇登場人物
夏松ゆず :わたしの友達。笑顔がかわいい。
さくら:わたし。凪高校一年生。
かえで:わたしの友達。きつめに見えて実は優しい。
冬村りん :わたしの友達。体力はないが天性の運動神経。
風祭あおい:わたしの友達。救世の天使。