2.2
クレープを食べたあとは、パフェを食べたり、スタバでだべったりして。
そしてプリクラを撮り終わったわたしたちは、ゲーセンから外に出る。
デートだなんて意気込んだけど、結局は普段通りの遊び方になっちゃったな。でも、自然体で楽しいというのも悪くはないなって思う。
外はもう夕陽に包まれて橙がかった世界になっていた。
……わたし、夕暮れは苦手だなあ。
楽しかった時間がぜんぶ強制的に終わってしまうような、そんな寂しさと切なさで満たされているから。
「……」
そんなわたしの苦い気持ちをわかってくれたのかもしれない。
ゆずは、後ろからそっとわたしを抱きしめてくれた。
「今日はありがとうね。すっごく楽しかった」
「わたしも。ゆずのおかげだよ」
過ぎ去ってほしい世界のなかで、けれどこの瞬間は永遠に続いてくれればいいのに、って。そんな気持ちばかりになる。
どれほどの時間が経ったのだろう。
ゆずの体温が離れてゆく。
思わず、あっと小さく声が漏れたのは、ゆずに聞こえてしまっただろうか。
「ねえ、さくちゃ」
目と目が合う。
言葉はいらないと思った。
あるいは、かける言葉が見つからなかっただけ──?
「わたしも、さくちゃといたらしあわせだよ? 隣にいるとね、心があたたかくなるの」
わたしは、ゆずの頬にキスをした。
わたしはなんて、ずるいのだろう。
触れたゆずの熱がわたしを焦がすと思えるほど。
そんな時間のなかにわたしたちはいて。
「ゆず」
けれど、そうじゃないのだ。
「わたしも、ゆずといるとしあわせ。一緒にいてすっごく楽しいし、でもゆずといると一番落ち着くの。わたしの居場所はここなんだな、って」
「さくちゃ……」
「今日はありがとう、また明後日ね」
そのままわたしは、ゆずに背を向けたまま、帰路についた。