1.12
わたしたち五人は、駅でまた再集合した。
「とはいっても、帰路はばらばらなんだけどね」
ちょっと寂しそうな、切なそうなあおいもまたかわいい……。
いつでもその儚い表情を浮かべていてほしい。
だ、だめ! やっぱりしあわせになってくれ!
「明日また会えるんだから。元気を出しなさい」
明日も楽しく過ごして、明後日はゆずとお出かけ。
わたしはなんてしあわせものなんだ……。
「じゃーね、またあした!」
「うん、ばいばい」
りんは住宅街の方へ向かっていった。
いい立地だよなあ。
みんなで押しかけて平日にお泊まり会したい(迷惑)
あおいは学校方面へ歩いていった。
歩く姿は百合の花、とはこのことかな。
残った三人が電車組だ。
かえでは少し遠くから通ってきている。
えらいなぁ、ほんとに。
わたしなんて朝起きるのもぎりぎりだし、そんなことできそうにない。
かえではしっかりしてるから、そういう心配もなさそうだけれど。
わたしはゆずと同じ方面だ。
ホームが分かれているので、駅に入ってすぐお別れだ。
かえでは鮮やかに手を振って歩いていった。
手を振るのに鮮やかも何もない、と思うかもしれないけれど、
かえでは一挙一投足が美しいのだ。
それも、モデルさんみたいだって思う理由のひとつかもしれない。
そして、わたしはゆずと電車に乗り込む。
ふわっ。
柔らかな感触と、ほんのりと伝わるあたたかさ。
ゆずの手を通じて体温が流れ込んでくるようだった。
って!
「なぜ手を握る!」
ゆずはいたずらっ子みたいににやりと笑って、
「お返しだよっ」
わたしの手をふにふにと握っていて。
それは不思議なことに、すごく心地いいなって思えたのだった。