第54話 大歓迎
隊員の犠牲を嘆いていると、スナイパー達が追撃を行ってきた。
俺はベッキーを持ち上げて肩に担ぐと、飛来する弾を避けながら来た道を駆ける。
「一旦下がるぞ。俺達は人気者すぎる」
「どこまでもポジティブねっ」
ベッキーが声を張って突っ込んだ。
俺達はホテルの近くの物陰に避難し、そっとスナイパー達の様子を窺う。
僅かに顔を見せただけで、すぐに弾丸が飛んできた。
俺は肩をすくめて首を振る。
「歓迎のクラッカーが激しすぎるな。サンタクロースと見間違えられたか?」
「プレゼントを貰ってるのは私達だけどね」
「まったくだ」
連続する狙撃音に晒される俺達はジョークを飛ばし合う。
そうでもしないとやってられない状況だ。
ベッキーもどこか開き直ったテンションである。
俺の言動に毒されてきたのだろう。
だんだんと元気になってきたベッキーを見つつ、俺はホテル側の動きを監視する。
スナイパー以外に特筆すべき点はない。
迎撃役は彼らだけらしい。
ベッキーはその場に座り込み、どこかからくすねた煙草をくわえて吸い始めた。
「これじゃあ近付けないわ。どうするの?」
「決まっているさ。このまま堂々と突っ切る」
俺は答えながらホテル側に戻っていく。
それを見たベッキーが、ぎょっとして後を追いかけてきた。
「待って! 撃たれるわっ!」
「心配すんなよ。大丈夫だ」
言っているそばから狙撃されるも、軌道を予測して回避した。
常に射線に身を置かないように意識して疾走する。
これにはスナイパー達も慌てて連射してきた。
しかし、それで当たるほど俺は間抜けではない。
ここまで何度も狙撃を目にしたのだ。
彼らの人数や位置関係はほぼ完璧に把握していた。
だから避けるだけではなく、反撃に移ることだってできる。
「楽しい挨拶のお返しだ」
俺は両手に拳銃を握り、頭上に向けて五発ずつ発砲。
すると断末魔が連鎖して、被弾したスナイパーが落下してきた。
彼らはコンクリートの地面に頭をぶつけて破裂させる。
そんな光景が一瞬で十回ほど繰り返された。
以降は棒立ちになっても狙撃されない。
迎撃役を皆殺しにしたのだった。
俺は二丁拳銃を回転させてからホルスターに戻し、ベッキーにウインクする。
「ほら、避けて撃ち殺せばいいだけさ」
「それができるのはあなただけよ……」
安堵した様子のベッキーは、ため息を吐いて呟くのであった。




