第5話 みんなで脱出
不穏なことを考えつつも、三つ目の行動を紹介しよう。
これはすなわち任務の続行――アパート内に潜伏するギャングのボスの殺害だ。
生真面目な隊員が発案したが、生憎と賛同者はいない。
この状況で任務など二の次だろう。
アパートごと異世界にぶっ飛んでいるのだ。
ボスの殺害については否定的ではないので、余裕ができたら狙いたいとは思っている。
そして行動指針の四つ目。
これは実にシンプルで、元の世界への帰還方法を探すというものだ。
手がかりを求めてアパート内やその周囲を探索し、この最悪な事態を打破する。
ギャングとも可能なら協力するし、難しければ皆殺しだ。
他三つのアイデアを内包しながらも、最も難しい方針である。
誰だって脱出できるのがベストだと分かっている。
それが難しいと考えたからこそ、前述の消極的な案を出しているのだから。
「俺はこんな場所で野垂れ死ぬ予定はない。同じ意見の奴は残れ。他のチキン野郎は出ていけ」
煙草をくわえた俺は、部下達に銃を向ける。
緊迫した空気の中で動き出す者はいない。
程度に差はあれど、一様に覚悟が決まったようだ。
こうして俺達は、異世界からの脱出を目指すことになった。