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第46話 ご挨拶

 その部屋は、応接間のように整えられていた。

 実際に来客を迎える際に使っているのだろう。

 ローテーブルを挟んでギャングと異世界人が対峙して座っている。


 ギャング側は、ウェンとその部下が二人。

 異世界人側は、例の三人組のみである。

 右から革鎧の男、金属鎧の男、それにローブ姿の美女だった。


 入室した俺に視線が殺到したので、片手を上げて応える。


「よう、お客さんの顔を拝みに来たぜ」


「事態がややこしくなるから帰れ。アパート帰りで疲れているだろ」


 ウェンは緊張を滲ませる顔で発言する。

 俺は構わず扉を閉めると、壁にもたれながら笑った。


「気遣ってくれるのかい」


「違う。邪魔なんだ」


「はっきり言ってくれるじゃないか。俺のガラスハートが割れちまいそうだ」


 俺は胸を押さえて傷付いた素振りを見せる。

 後ろでベッキーが「ダイヤモンドより硬いくせに」と呟いた。

 俺は気にせずに視線を異世界人に向ける。


 革鎧の男は警戒していた。

 さりげなく剣の柄を手にしている。

 状況次第ですぐに抜き放てるように備えていた。


 金属鎧の男は槍を持っており、こちらは堂々と所持していた。

 殺気に近い眼差しを俺に投げかけていた。

 敵愾心を隠す気もない。


 ローブの美女は澄ました顔だった。

 絵画のように端正な容姿で、特徴的なのが耳だ。

 先が尖っているが、そのような身体的な特徴を持つ種族を知っている。


 俺は親しげに笑いながら歩み寄る。


「こっちのお嬢さんはエルフか? とんでもない美人じゃないか」


「おい待て! その女性は――」


 ウェンが俺を止めようとするも、その前に美女が無言で立ち上がる。

 そして、いきなり俺の頬をビンタした。


 乾いた音が鳴り響く。

 美女は侮蔑に満ちた表情で何かを呟いた。

 俺の習得する言語のどれにも該当しないが、きっと罵倒を口にしたのは表情だけで分かった。


 俺は呆けた顔で美女を注視する。

 やがて肩をすくめて笑いを洩らした。


「……ハハッ」


「おい、やめろ」


 ウェンが何かを察したようだがもう遅い。

 俺は堂々とエルフを見据える。

 飛んできた二度目のビンタを前腕で防ぐと、舌を出してほくそ笑んだ。


「……異世界の挨拶は随分と過激なんだな。お礼にこっちの世界のも見せてやるよ」


 次の瞬間、俺はフルスイングで美女の顔面を殴り飛ばした。

 高い鼻を砕く感触が伝わり、折れた前歯が宙を舞う。


 吹っ飛んだ美女は、鼻血を散らしながら壁に激突して倒れた。

 手足を痙攣させるばかりで起き上がろうとしない。

 その直後、激昂した金属鎧の男が槍を持って報復を仕掛けてくる。


「おっ、やるか」


 俺は素早く抜いた拳銃で応戦する。

 四連射した鉛玉が男の額と首を捉えた。

 狙いのずれた槍が、俺の肩の上を素通りして天井に突き立つ。


 驚愕していた革鎧の男が、何事かを叫びながら斬りかかってきた。

 俺は振り下ろされた刃を回避し、その首をナイフで滅多刺しにする。

 頸動脈から噴き上がる鮮血を躱すようにして男を蹴倒した。

 死体となった男は、床を赤く染め上げていく。


 俺は金属鎧の男の死体を踏み越えると、エルフの美女の髪を掴んで引き起こした。

 彼女は鼻血と涎と涙で顔を汚してみっともないことになっている。

 美人が台無しだ。


 俺はそんな彼女にフレンドリーに告げる。


「ようこそ犯罪の巣へ。異世界人でも大いに歓迎するぜ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 女に優しくないと思ったら優しい方だった
[良い点] また爆笑しそうになったw 「和を以て貴しとなす」という金言を全力でぶち壊すかのごとき、主人公の所業www [一言] 続きも楽しみにしています。
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