第4話 行動指針
その後、室内の人数を確認する。
何人かが行方不明になっていることが判明した。
一連のどさくさではぐれてしまったらしい。
なんと盗癖持ちのマイケルも不在だった。
彼からは返してもらっていない物がある。
再会したら謝罪を要求しようと思う。
ひとまず残ったメンバーで臨時の作戦会議をした。
いつまでも閉じこもっていられない。
これからどうする決めねばならなかった。
板張りの窓から見える景色はやはり草原である。
とりあえず何らかの超常的なトラブルにより、建物ごと見知らぬ土地に移動したと仮定した。
集団催眠を訴える奴もいたが、それでは話が進展しないので黙殺する。
現状、取れる行動は大きく分けて四つ。
隊員達の意見を参考にまとめてみた。
一つはこの部屋で待機して、事態の推移を見守ることだ。
最も無難な選択肢であった。
リスクも低く、もし何者かに襲撃されたとしても構造的に守りやすい。
消極的な案だと思うが、隊員のうち何人かはこの案に賛成していた。
二つ目はこのアパートからの脱出の優先である。
そうして安全地帯の確保を目指す。
室内はギャングどもが占拠しており、いつ銃撃戦になるか分からなかった。
奴らを放って草原に飛び出すべきだという主張だ。
必然的に近隣の探索もすることになるため、もちろんリスクは高い。
それでも、とち狂ったギャング達の相手をするより安全という考えだった。
この案については、とにかく逃げ出したい隊員が支持していた。
見知らぬ世界に飛ばされた混乱と恐怖に支配されているのだろう。
話し合いの最中も泣き言が多い。
同じ特殊部隊の人間として、実に嘆かわしい。
個人的な考えを述べるなら、どちらの方針も論外である。
この状況で後ろ向きな行動など必要ない。
チーム内で足並みを乱されても邪魔だ。
場合によっては、マイケルと同じ目に遭ってもらうしかないだろう。