第39話 ゴブリン殲滅計画
俺は手を打って微妙な空気をリセットする。
テーブルに尻を載せると、地図を持ち上げながらウェンに話を振った。
「ゴブリンの巣の破壊だってな。詳しく聞かせてくれよ」
「手伝ってくれるのか?」
「報酬次第だな」
「……分かった。最初から説明する」
一瞬、苛立った顔になったウェンだが、特に文句は言わなかった。
ここで喧嘩を売っても意味がないと理解しているのだ。
彼はポーカーフェイスを努力しながら説明を始める。
「現在、ブラックマーケットは崩壊の危機にある」
「そんな風には見えないけどな」
「瀬戸際で食い止めているだけだ。いずれ破綻する」
ウェンは断言した。
彼の目は、このイレギュラーな状況でも先を見据えられている。
きっとそれは便利であると同時に悩み事の種が増やしていそうだった。
「主な原因はグリーンモブ……所謂ゴブリン達のせいだ。奴らの襲撃が弾薬消費に繋がっている」
「探索もままならないしな」
「その通りだ。あいつらをどうにかしなければジリ貧だろう」
犯罪の巣における最たる脅威はゴブリンだ。
奴らが数に任せて襲いかかってくるせいで各エリアが占領されている。
数は少ないがスーパーゴブリンも混ざっているため油断大敵だった。
「二時間後、俺達はゴブリンの巣を強襲する。巣を焼いて根絶すれば、行動範囲も大きく広がるだろう」
「詳しい場所は分かるのか?」
「部下に調べさせた。アパートエリアの地下に奴らは住処を持っている」
ウェンは地図上にペンでマークを付ける。
それは計三か所の穴を示していた。
ゴブリンはそこから出現するらしい。
一階かと思いきや、さらにその下が本拠地だったようだ。
(この短時間でそこまでやっているのか。なかなかの手腕だな)
俺はウェンの仕事ぶりを評価する。
ブラックマーケットの治安を維持するだけでも難しいというのに、具体的な調査まで行っているとは。
かなり手際が良い男である。
少なくともリーダーシップにおいてウェンには敵いそうにない。
天性の才能に本人の培ったカリスマ性が合わさっている。
そんなウェンは真剣な顔で俺の肩に両手を置く。
「刺殺王。てめぇの力を借りたい。ブラックマーケットを存続させたいんだ。こちらで用意できる範囲なら、好きな物資を提供させてもらう。それが報酬だ」
「へぇ、奮発してくれるじゃないか」
「それだけ重要なんだ。忌々しい傭兵に頼み込まねばならんほどにな」
ウェンは苦い顔でぼやく。
冗談で言っているような風を装っているが、きっと本音なのだろう。
俺はニヤリと笑うと、ウェンの胸に拳を当てて宣言する。
「いいぜ。手伝ってやるよ。ゴブリンは俺が皆殺しにしてやる」




