第21話 扉の先の惨事
室外でギャングとゴブリンが殺し合う一方で、俺は部屋の中の物資を漁る。
残念ながら大したものはなかった。
とりあえずギャングの死体から拳銃と予備弾を貰っておく。
ちなみに洒落た彫金の施されたリボルバーだ。
こんなものに戦術的な価値はない。
死んだギャングはスカした野郎だったのだろう。
それでも貴重な銃には違いないので頂戴する。
探索の途中、入口の扉が激しく叩かれた。
どうやら外のゴブリンが扉を開けようとしているようだ。
俺が咄嗟に隠れたことに気付いたのだろうか。
「うるせぇな。そっちで仲良くやってろよ」
バリケード越しに銃撃すると、ひとまずノックは止んだ。
しかし、ここの部屋も長くは持たないだろう。
さっさと脱出しなければならない。
俺は窓を開けて壁の構造を確認する。
あちこちに凹凸があり、下には鉄格子の付いた窓もあった。
「よし、いけそうだ」
俺は移動術としてパルクールを習得している。
どんな地形でも素早く動けるように訓練したのだ。
普段は使わないものの、こういう時に役立つ。
装備の重さも苦にならない。
日頃から鍛えているので問題なかった。
俺はこのまま三階へ戻るつもりだ。
部下に声をかけて封鎖した窓を開けてもらえば、邪魔されずに帰還できる。
そこまで時間はかからないだろう。
リスクはそこまで高くないはずである。
それにしても、ギャングとゴブリンはどちらが勝つのだろうか。
数は圧倒的にゴブリンが優っているが、ギャングには銃火器がある。
今のところは戦力的に拮抗しているようだった。
足音から判断すると、ゴブリン達は続々と五階に来ている。
ギャング達は反撃しながら上の階に向かっていた。
ここで追い返すのは難しいと考えたのだろう。
この違法建築のアパートは七階が最上階だ。
他のエリアにはさらなる高層まであったりするが、少なくともギャング達の住むこの区画は七階である。
連中はいよいよ追い詰められたことになる。
まあ、奴らがどうなろうと知ったことではない。
個人的にはギャングもゴブリンも全滅するくらいが好都合だった。
もっとも、そう上手くはいかないとは思っている。
今後の展開にもよるが、二階に戻ったら部下と共に二階に繋がる階段を封鎖するつもりだ。
そして上階のギャングやゴブリンを皆殺しにしてアパートを占拠する。
この建物全体を奪ってから次の計画に進みたいと思う。
俺は開けた窓を跨ぎ越える。
そのまま降りようとした時、ギャングと寝ていた女が血相を変えて走り寄ってきた。
「ちょ、ちょっと待って! 私も連れて行ってほしいの!」




