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第12話 エリア外

(ひでぇなこりゃ)


 俺はゴブリン達を傍観する。


 奴らはギャングの死体を肉塊に変えて大喜びしていた。

 よほど嬉しいのだろう。

 その残虐性に感心したくなる。


 ちなみにゴブリン達はアパートの敷地の外に出ているが、ギャングのように苦しむことはない。

 平然と死体の解体作業に勤しんでいた。


 これについては理由が明白だ。

 ゴブリン達は元からこの世界の生物と思われる。

 だからどこにいようと平気なのだ。


 対して異なる次元からやってきた俺達にとっては、何らかの境界が存在する。

 具体的な原因は不明だが、異世界の土地に踏み込むと肉体に支障が出るらしい。

 現状、アパートの敷地内から出ることは不可能ということだ。

 俺達は見えない檻に捕えられている状態である。


 一方で、ゴブリン達はこちらの世界の領域であるアパート内でも平然と活動していた。

 やせ我慢をしている感じでもない。

 リスクを背負っているのは俺達の側だけなのだろう。

 なんとも不平等な話だが、誰に文句を言えばいいのかも分からないシチュエーションだった。


(運が良かったな。もし真っ先に草原の探索を始めていたら、とんでもない被害を貰うところだった)


 俺は灰皿に煙草を押し付ける。

 ギャング達の犠牲には感謝していなければならない。


 とにかく草原に向かうのは危険だ。

 あのギャングどもの二の舞になってしまう。

 あいつらだけが特殊な制限をかけられているという可能性もあるが、さすがに都合が良すぎる。

 俺達も等しく出られないのだと考えるべきだ。


 そのうちゴブリン達は、解体した死体を持ってアパートに引き返す。

 かなり手慣れた様子だったので、狩りのつもりなのかもしれない。

 あいつらは人間を食うことが日常みたいだ。


 一階からギャング達の声は聞こえない。

 ゴブリンが占拠しているのだ。

 最初の混乱に乗じて奪い取ったに違いない。


 耳を澄ますと、階下からゴブリンの喚き声が聞こえた。

 かなりの数だ。

 最初の段階より増えている気がする。

 急に自然発生するとは考えにくい。


(どこかにゴブリンの巣があるのか?)


 考えられるとすればそのパターンだろう。

 異世界に転移したアパートは、ゴブリンの巣の真上にあるのではないか。

 もしくは隣接する形で巣があるのかもしれない。


 どちらにしても近くに奴らの住処がある可能性が高い。

 今はまだ大人しいものの、態勢が整ったら再び上階の侵略に来る展開が考えられる。


 逃げようにも上にはギャングどもがいる。

 敷地の外は即死エリアだ。

 俺達は限られた物資で対抗しなければならなかった。


「ハハッ、問題が山積みだな」


 思わず笑いながらぼやく。

 客観的に考えると絶望的な状況だが、俺の心が折れることはない。

 むしろ滾る殺意と狂気を抑え込むので大変なくらいだった。

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