雨音
訪れていただきありがとうございます。
雨音が聞こえる。だから雨音が聞こえる。澄んだ空から雨が降っている。だから澄んだ空から雨が降っている。僕はそれを伝えたい。だからそれを伝えたい。
普段は適当な音楽を聴きながら執筆をするA氏だが、雨の降る日は特別だった。全ての音楽とはこの雨音を人力で出す為の追求作業に過ぎないというのが彼の考えである。そこに現実的な近づけ方をするか、虚構的な近づけ方をするかの差はあれど、大した問題ではない。
彼の執筆もまた同様である。雨音を雨音として書くのか、死として書くのか、恋愛として書くのか。テーマは色々あり、それがどう関係しているのかは彼自身にすらわからないけれど、頭の中では常にあの音が流れていた。彼は再び作品の世界へ戻って行った。
花の咲く広い丘があった。姫がそこで寝ている。空にはドラゴンが飛び、天使は笛を吹いていた。姫が寝ている場所までは一本の道が通っており、王子はそこを歩いている。姫の元に膝を着くと唇を合わせた。ドラゴンは鳴き、天使は空へと還っていく。
だから
花の咲く広い丘があった。姫がそこで寝ている。空にはドラゴンが飛び、天使は笛を吹いていた。姫が寝ている場所までは一本の道が通っており、王子はそこを歩いている。姫の元に膝を着くと唇を合わせた。ドラゴンは鳴き、天使は空へと還っていく。
理科は実家で漫画を読むついでに、投稿サイトで小説を書いている。目の前には漫画がある。だから漫画があると書いておく。この文章を読むあなたがいる。ここに漫画があると書いてあるから、漫画がある。
雨音なんてものはない。家に液体がぶつかり、そのエネルギーの一部が音になる。それは家の音でもあるから純粋な雨音なんてものはない。
姫がいるから姫がいると書いてある。それとも。姫がいると書いてあるから姫がいる。
僕は雨音が好きだと書いておく。だから雨音がある。このとき僕が好きなものは一体なんなのだろうか。
お読みいただきありがとうございました。感想などお待ちしています。
これからの世の中の流れによっては意識しなければならない問題点かもしれない。