私の夏
子供の頃、夏休みに、
私は旅行といったものに、
行ったことがない。
所謂、ホテルや旅館に泊まり、
見知らぬ町や村、山や海へ
行ったことは、
ただの一度も体験してこなかった。
それは、夏休みには、
母方の祖母の家に帰省して
いたからで、
私は、夏は祖母の家で過ごすものと、
信じきっていた。
旅行というのは、行き先を選び、
いつからいつまで、
どう過ごすかを決めてから
出発するような気がして、
何の決め事もない、
祖母の家での暮らしを、
旅行だとは思えなかった。
だから、旅行だと思えた体験は、
小学校の修学旅行が初めてと
いうことになる。
今でも夏の旅行とかいう言葉には、
違和感があってしょうがない。
夏は祖母に会いに行くもので、
それ以外は、考えにくい。
私の中で夏は、
まだ子供の頃のままになっている。