コンビニ
放課後、図書館脇のコンビニ。
「いらっしゃいませー……って、げ」
「げってなんだよ、げって」
夏樹がレジに立っていると、なぜか制服姿の冬が入ってきた。
「なんでいんの?」
「やー、夏樹、バイトはじめたつってたじゃん? 働きぶりをみてやろうと思って」
「うわー……」
「なんで嫌そうなんだよ」
むっとしてお菓子を見に行く冬。しばらくすると、グミとチョコ菓子を持ってレジに戻ってきた。
「人いないね」
「この時間ならね。368円になりまーす」
「おごってー」
「この前学食でサンドイッチ買ってやったとこでしょうが。今日はダメ」
「ちぇー」
ぶつくさ言いながら、お金を出す。
「夏樹、いつ終わんの?」
「今日は六時」
「そっか。じゃあ図書館で暇つぶしてるから、一緒に帰ろ?」
「別にいいけど」
断ったところでごねられるだけなので、最初から折れる。
「あ、ホットドックちょうだい」
「へいへい」
追加でお金を出し、袋を受け取る。
「ホットドックとかのソースってさー、このケチャップとマスタード入ってるや」
「お客さん入ってきたから、またあとでにして」
自動ドアを通ったのはスーツ姿の男性。話を遮られた冬は不満ながらコンビニを出た。
冬が図書館前のベンチで借りた本を読んでいると、学校の制服に着替えた夏樹がやってくる。パタンと本を閉じた。
「遅いんだけど」
「あがったら速攻着替えて走ってきたんだけど」
時計を見れば、まだ六時4分。
「あ、あとこれ」
そう言って冬が差し出したのは、ホットドックについていたソース。真ん中を折って指で挟むとケチャップとマスタードが出てくるあれだ。それにマスタードだけが残っていた。
「俺さー、マスタード苦手なんだけど、捨てるのもったいないからあげる」
「……ありがと」
パンにでも塗って食べようと、通学カバンに突っ込んだ。
「よいしょっ」
本をリュックに入れ、冬は立ち上がる。
「じゃ、帰ろっか」
そう言って、先に歩き出す。夏樹も並んで帰路についた。
「コンビニにさー、両手塞がった人が入ってきて、なんか慌ててる感じの。その人がファミチキ買って、『手ふさがってるから口に入れてください!』って言ってきたら、入れる?」
「すごい剣幕で言われたら入れるかなー。すっごい嫌だけど」
「あー、やっぱ迫力って大事だよねー」
そんな、壮絶なまでにどうでもいいことを話しながら歩く。
「じゃ、俺こっちだから」
「うん。また明日ね」
「はーい、じゃあねー」
二人で歩いた距離は、二百メートル足らず。それでも嬉しいのか、冬はやけに上機嫌だった。




