表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/22

両親

二学期も終わろうとする今日この頃。

冬は今日も夏樹の部屋で漫画を読んでいた。

「……なんで、入り浸ってるの?」

「えー? だって落ち着くし」

ベッドの上で足をぱたぱたさせながら、おやつに手を伸ばす。

「夏樹ー。壁ドンってほんとに効くのかなー?」

「冬くんは無理だねー。ちっさいからねー」

「うっさい」

「いてっ」

クッションが飛んできた。夏樹の頭を直撃する。飛んできたクッションを抱え、夏樹はスマホに向き直った。

「冬くん、クリスマスどうするー?」

「夏樹とデートかなー」

「そっかー」

ぽちぽちと、スマホを操作する夏樹。

「いきなりなに?」

「いや、友達からパーティ誘われたから」

「じゃあ断って」

「もう断った」

この二人の空間において、夏樹に人権はないので冬の意見がそのまま通る。

「そういやさー」

「なに?」

「俺一回も夏樹のお父さんに会ったことないんだけど、どこいるの? 死んだの?」

「……中学の時にね」

「へー」

冬はこれといった反応も示さず、マグカップのココアをすする。それからほおと息を吐き、

「——いいなぁ」

そう、呟いた。

夏樹はほんの少し、クッションを抱く力を強める。

「……冬くんってさ、お父さんと仲悪い?」

なんとなく、気づいていた。

会話の節々から滲む父への憎悪、恐怖。父親と一緒にいる時の、夏樹といる時に見せるものとは違う、夏樹が嫌いな笑顔。

冬はしばらく無言でページをめくる。

秒針の音だけが鳴る空間。ページを繰る音がとまった。

「……別に、普通」

「そっか」

それからは、また無言でページをめくり始める。

「クリスマスさー、どこ行く? またお肉?」

問うと、冬は枕に顔をうずめ、布団の中で足をばたばた。

「……っ、学校と反対方向で」

「あー、はは。また一緒にいるとこ見られるかもしんないしねー。クリスマスとか、絶対からかわれるし」

「うん。俺これ以上ひどくなったら学校やめる」

「やめるなやめるな。冬くんがいなくなったらさみしいでしょ?」

「したら俺ここ住むから」

「……お母さんは、喜ぶだろうね」

なぜか、夏樹ママは冬のことを気に入っている。むしろ、最近は自分の娘より冬を可愛がっていた。夏樹は、ほんの少しだけさみしかった。

「夏樹、おかわり」

「はいはい」

マグカップを受け取り、夏樹は部屋を出た。

それから、いつも通りの時間に冬は帰っていく。次会うのはクリスマス。来週の土曜日だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ