表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

プロローグ 03





 ーー二日後。私が後宮入りになる日が来た。


「お姉さま、後宮には幸いなことに私を知っている方はあまりいません。幼少期に会った方はいらっしゃいますがそれ以降交友関係を気付いている方は後宮にはいませんのでご安心下さい」

「教えてくれてありがとうね」


 後宮にいるのは基本的に貴族主義派が多い。平民主義派の人たちは半分以下になっている。人付き合いも派閥のことを考えてしていたのもあるが、それよりも私たちはまだ15歳になったばかり。社交界デビューは15歳からというのがこの国だ。私に関しては一度のみ出たがその一度はほぼ別の部屋で過ごしていたので社交界デビューをしたのか疑わしい話。

 だって、話についていけれなかったし、なにより私が出て家に傷をつけたくなかったから。


 後宮には宰相様がなにか手を回しているらしい。正直な話、助かる。社交界での令嬢は確かに怖かったが後宮ではそれ以上だろう。

 ギラギラと光ってて獲物を狩りに来た目は本当に怖かったあぁ。


「それでは馬車に乗りましょうか。後宮から来た騎士様もいらっしゃることだし、なにか情報を引き出せたらいいのだけれど……」


 護衛として来た人は二人。後宮では人攫いの事件で大変な為、人員をこちらに回せるだけ有難いと捉えるか。


「ティグルス・メルヘールと言います、お見知り置きを」

「メティシエ・チェルティシアと言います、お見知り置きを」


 女性一人、男性一人の計二人。女性がいてくれて正直助かった。男の人と何を話せばいいのか分からないですもの。

 って言ったけど、どうせ後宮についてしか話さないから関係ないわね。


「マリー、お父様、お母様、どうかお元気で。早めに帰れるように頑張りますわ」

「ああ、いってらしゃい」

「エリーはたまに無理をしますからね。適度に休憩を挟みなさい」

「お姉さまぁぁ!!トルテ様との結婚式は必ず来てくださいね!」


 マリーよ、そんなことをしたらバレるのでは?


 それはともかく、後宮での戦い、頑張らなくては。




 ☆ ☆ ☆




 馬車の中には二人の騎士様と私が向かい合って座っている形で外の景色が見えやすいように窓が大きい。内側からは見えるが外側からは見えない窓で相当高い。


「エリシエナ様、宰相様からお話は伺っております。後宮に着いてからも私は専属の護衛になるようになっているので覚えておいて下さい」

「あら、そうなの? 後宮に護衛って必要かしら?」

「ご令嬢方がやらかした前例があり護衛を付けることが数ヶ月前に決定されております」


 護衛を付けないといけないほどの前例って何をやらかしたのよ、一体。


「ティグルス様は?」

「見てから決めることになっている、…ます」


 なんか敬語が慣れてない感じね。


「ティグルス様、別に無理して敬語を話さなくても大丈夫ですよ。むしろ気を使わなくて楽ですし」

「いや、それは……」

「なら他の方がいない時のみ敬語を取ってくださいませ。メティシエ様も」

「了解です」


 メティシエ様は受け入れが早いわね。それに比べてティグルス様はぎこちない。


「早速で悪いのだけれど後宮について知っていることがあれば教えて欲しいの」

「はい、私たちが知っていることであれば」


 後宮では主に四つに別れている。貴族主義派、平民主義派、中立派、それと、どこにも所属していない人。

 派閥ってなに?とよく分かっていない人もいるらしい。それに派閥は親が決めたことで子供が決めたことではない。なので親が貴族主義派でも中立派に入っている令嬢もいるという。


「気を付けて頂きたいのが3名いらっしゃいます。一人目はメグリーユ・グレーエイト様です。派閥は中立派。彼女は伯爵の家の出身ですが力はあります。あと財力は公爵家よりも持っており、お金の使い方が荒く、後宮のお金を根こそぎ使っているようです」


 うわぁ……。そんなやつ追い出せばいいのに殿下は一体なにをしているのだろうか……。


「二人目は世界は私を中心に回っていると豪語しているシズル・ヒイラギ様です。派閥はどこにも属しておりません」

「……? 珍しい名前ね」

「彼女は女神様のお告げで異世界からやって来た聖女なのだそうです。彼女が来てから魔物は確かに減りましたが、ただ性格が厄介で他のご令嬢方を貶しているそうです。陰気な虐めを行っているようですが証拠隠滅がとても上手で証拠が出て来ません。しかも聖女のため、不憫な扱いを出来ず立場上ならばこの方が一番厄介でしょう」


 性格が厄介なのに聖女って……この国は本当に大丈夫なのかなぁ?

 殿下はあれだし、王妃候補の後宮での令嬢はヤバい面子しかいないからなぁ……。


「そして三人目はエルクティアラ・フォーングスト様です。エリシエナ様も存在は知っているかと思われます」

「ええ、知らない貴族はいらっしゃいませんから」


 エリクティアラ・フォーングスト。建国から王族を支えて来た歴史のある公爵家の長女。勿論、派閥は貴族主義派。この女がいるなら貴族主義派を纏めているのはこの人で間違いない。

 噂で耳にした事はある。とても非道極悪人な方で必要な方以外、いとも容易く縁を切るとか。逆らった者は社交界に出れないように何かをしているとか。要するにいい噂を聞かない。


「一見は百聞にしかず、ですわ。エリクティアラ様に一度はお会いしないとですね」

「ですが、危険です」

「そんなことぐらい百も承知ですよ? 一人ならまだしも護衛が二人もいらっしゃるのです。危険なことはないはず」

「ま、待ってくれ。俺は護衛をすると決めた訳では…!」

「あら、引き受けてくれないのです?」

「そ、それは…!」


 二人も護衛をしてくれるのは駄目なのかしら。人攫いで人員が減っているのは知っているけれど……。


「……分かりました。引き受けます。その代わり剣の稽古の時間は設けて下さい」

「それでいいの?」

「俺にとっては大事なことですから」


 ほほう、いい護衛を手に入れた気がした。

 稽古を欠かさずやってるなんて真面目な人ね。


「エリシエナ様、まだ到着までには時間はたっぷりございます。作戦を練りましょう。あと宰相様からのお手紙です」


 〝人攫いの事件を解決してくれたら報酬を出そう。もちろん、危険だと判断したら中断して下さいね? あと出来ればで良いんですが……殿下の性格を何とかして下さると助かります。こちらに関しては言い値で報酬を出します。お姉様はお金があまりないと聞いたのでこうすると引き受けてくれるとマリーが言っていました〟


 ……マリーはまたしても余計なことを言ったようだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ