紫月さんが死んだら・・・。
ポツリ・・・ポツリ・・・と、私は昨日の出来事を叶に語った。
それは昨日の出来事のはずなのにもう2、3年も前のことのように感じられた。
しかし、それなのに伺った家の中に立ち込めた濃い線香の匂いと目を赤くしながら私たちを見つめ『来てくれてありがとう』と言い『頑張ってね』と優しく微笑み、言ってくれた同級生のご両親の顔は今もその場に居るかのように鮮明に覚えていて刻一刻とその生々しさを増していた。
まるで呪いかのように・・・。
「・・・紫月さんは・・・死んだりしないでくださいね」
私の話が終わるとすぐにそう言ってきた叶の声は明らかに震えていて涙声だった。
そんな叶の声を聞いて私はヘラっと笑っていた。
それに叶は怖い顔をしたけれど、私は無視をした。
叶に突っ込んでいく勇気が今日はなかった・・・。
「紫月さん・・・危ないから」
叶からポツリと発せられたその言葉も私は無視をした。
なのに叶は話を続けた。
「紫月さんはちゃんとしているようでちゃんとしてなくて・・・強いようで凄く弱いところがあるから私・・・と、言うか陽輝さんも言ってたんですけど・・・心配なんです。何かあったらすぐに・・・その・・・何も言わずに居なくなってしまいそうで・・・消えてしまいそうで・・・」
叶の言葉に私は呆れていた。
自分の不甲斐なさに・・・だけれど・・・。
全てが図星だ。
全てがあっている。
だから言い返せない・・・。
「紫月さんが死んだら私・・・たぶん・・・生きていけない・・・。身体は生きていてもきっと・・・心が死んでしまうから・・・だからっ・・・」
叶の言いたい言葉の全てを聞くのが怖かった。
だから叶の口を私は私の口で塞いだ・・・。