目的地。
『皆、変わらんな』
そう言って笑んだのは一番遅れてきた亮だった。
それに私は何も反応を返さなかった。
それよりも私は亮の額に浮いた大量の汗の方が気になっていた。
『そうだね~』
と、言って『久しぶり!』と付け加えて笑ったのは確か里穂だった。
それにも私は無反応を貫いた。
9月のはじめ、そこに集まったのは私を含め9人の同級生たちだった。
皆、小中と一緒だったり高校も同じだったり中には保育園から同じだったりする同級生だ。
各々に色々と語らいたいことはあるだろう。
集まった理由が同窓会などの気楽な会ならそれぞれの顔に笑顔を浮かべて時間を忘れて話すだろう。
けれど、今日は・・・。
『皆揃ったし・・・そろそろ行こうか?』
皆が躊躇っている言葉を私は発した。
ここでたむろしていても仕方ないし、時間が押せば押すほど目的地へ向かうことが躊躇われると思ったから・・・。
『そう・・・だね。行こう』
そう賛同してくれたのは私のすぐ横に居た葵だった。
葵と私は小中高と同じで家もそれなりに近いということもあり、その親交は中々に深い。
と、言ってもその親交が深くなったのは高校2年の頃からなのだけれど。
待ち合わせ場所から歩いて3分ほどで目的地であるそこに着いた。
赤い外壁がお洒落なまだ新しい家・・・。
その家の玄関の前で男子3人、女子6人が固まる奇妙な光景・・・。
誰もが『お前が行けよ・・・』みたいな感じになっていた。
私は大きな溜め息を吐き出すと一歩二歩と前に出て気が付けば目の前のインターホンを殴るように押していた。
インターホンを通さずに『はい』と声が聞こえた。
それは玄関ドアの前から・・・。
名乗ろうと口を開いたところで閉ざされていた玄関ドアが開かれた。
その開かれたドアの先から漏れだしてきた線香の匂いが鼻腔の奥を嫌にくすぐった・・・。