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そして城へ書物を届ける当日、結局彼女はシアに同行した。まだ朝靄の立ち込まぬ夜更け時、彼等は王や魔法師達と書物の事柄について話した後に、セイレンの事を聞いた。
「あの、王様。セイレン様は、どうお過ごしでしょう。ここ最近法院へ、
顔を見せられないので。体調など崩されてなければ、良いのですが」
「おお、そうであったな。あの娘が世話になっているようで。邪魔をしてなければ良いのだが。確かに最近は珍しく、夜な夜な部屋を抜け出す事もせず、むしろ部屋に閉じこもってばかり。何か考えを巡らせているようだが、食事時は顔を見せておる。心を配らせてすまない」
「そうか。それならば、心を安らごう」
彼等が帰り、朝靄に陽が差し朝が夜明けを歌い始めてしばらくに、眠りを寝かしセイレンの目は朝を迎えた。彼女が朝食に向かうと、父と母が居た。静かな室内に朝の音が入るそこで、大きく長い机にそれぞれと。彼女もまた、大きな空席に腰を据えた。
「そうだ、セイレン。シア殿達がここへ訪れた際、お前へ心を配らせていたぞ」
「いつよ。いつ来られたの?」
「夜明け前だ」
「どうして起こしてくれないの!?」
「あら、法院のシア様とは。私もお会いしたいものね」
「晩餐へ迎えられれば良いのだが、良い青年だ。母と娘で取り合わぬ事を願う」
その言葉に王妃は食器を置く音を響かせ、何も言わずに部屋を出た。その様子に動じる事無く王は食を進め、セイレンは俯き空の器を眺めた。