27
シアが居なくなり九日が経とうとしていた夜、セイレン達はようやく城へ戻っていた。捜索に出ていた魔法使い等に状況を聞いても、彼は見つかっていなかった。白王はそれに溜息をつき、引き続き捜索と樹の国から来る騎士達との協働を指示して城へ入って行った。それを共に聞いていたセイレンは、直ぐに城へ入る気になれずに、少し外の空気を吸おうと城の外を見回る魔法使いに挨拶をしながら歩き始めた。願わくばシアがふらりと帰っては来ないだろうかと、彼女はそう思いながら夜空を眺めて散歩を続けていると、茂みの方で音が聞こえてその方を見ると、薄らと人影が見えた。恐怖に身構え逃げようと後ず去ると茂みから「我だ」と、彼女が待ち望み今最も求める声がセイレンに届いた。木々を掻き分け出てきたその姿を月明かりが照らすと、その人影は紛れも無くシアだった。
「そんな…、どうして?!今まで何処へ居らしたの」
セイレンは戸惑いながらも、シアに駆け寄り抱き着いた。彼は彼女の頭を撫でた後、何かを思い出したように懐から何かを取り出した。
「これを、そなたの部屋の中へ飾ってくれ。我への、目印になる物だ」
そう言ってシアが取り出したのは、一輪の花だった。青白く淡い色にも関わらず濃い色のその花は、光っているように見える物だった。
「三日目の夜、この花を頼りに我はそなたに会いに行く。それまで、もう少し待って居てくれ」
セイレンは頷くと、またシアを抱きしめた。その後二人で城の入口まで来ると、そこに居た魔法使い達がシアの姿を見て、大慌てに白王を呼びに行った。急いで駆け付けた白王は、衣類が多少荒んではいるものの以前と何ら変わりの無いシアの姿を見た時に、あの遺体の姿が頭を過ぎった。それを振り払いまた彼の姿を見た白王は、「化け物……」と呟いた。しかしそう感じたのは、白王だけでは無い。周りに居た魔法使い達ですら、それを感じ恐怖を抱いていた。