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その夜からこの夜も、この夜からまたの夜も、彼の居る夜を彼と居る夜を、彼と居てセイレンの夜は捲られていった。そして彼が部屋へ入っている間、夜空を見飽きた彼女は魔法の術等が記された書物を見るようになった。そして魔法を知れば知るほどに、シアの異常さを感じていった。セイレンが扱えるのは白の魔法で、彼女だけではなく皆それぞれに得意に扱えるのは一色に留まり、多い者で辛うじてニ色だった。それをシアは白に赤そして青を扱い、さらにそれ等を掛け合わせることで種類に質量や濃度、全てにおいて他の者と次元が違っていた。彼女がそれを感じながら書物を見ていると、そこへシアが戻ってきた。



「その魔法に、興味があるのか?」



彼はそう言うと彼女の隣から書物を覗き込み、そのまま左腕を伸ばして呟いた。そうすると、シアの手の平辺りから微かな音を立てて小さな氷が作り上げられた。机の上に転がったそれを拾い上げ、彼はセイレンへ手渡した。それを手に取りながら、シアを真似て彼女は右腕を伸ばして呟いた。しかしその手の平からは何も現れなかった。



「もっと想像するのだ。現し出したいものが、どういうものなのかを。そして強く思い、語り掛けるのだ。そなたなりの、言葉を通してな」



そしてシアは、彼女をまた城まで送り届けた。少しお辞儀をして去って行く彼を、手渡された氷を握り締めながら、今宵もセイレンは見つめる。そして眠りに辿り着くまでの間も、彼女の手の中で解けゆく冷たい筈の氷に温められながら、彼女の夜は瞼を閉じた。




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