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セイレンの声にシアの中での考えは一筋に絞られ、彼はそれを掴み取るように立ち上がった。
「白王、そなたはセイの父だ。そのそなたを、我は敬っている。これは紛れの無い事実だ。しかし、王という権力を保持しながら、その力に溺れる貴様に同情の余地は無い。同等の権力を持つ場所に立つ者として、我は貴様を軽蔑する。あの魔法を、魔法としてみせる。その後にセイレンと、婚姻を結ばせて頂く。それまで溺れ死ぬな。我が救い上げてみせる。またそなたが、白王という我と対等の者としてその場に立てるように」
シアはそう叫ぶと、白王を睨め付けていた視線をセイレンに移し、じっと見つめた後その場を去って行った。それを白王は立ち尽くしたまま眺め、セイレンは彼を見送るようにただただ見つめた。シアは法院へ戻ると、月明かりの差し込む部屋の床へ腰を下ろした。前屈みに座り込み何をするでも無く、瞼を閉じてただただ頭の中で魔法を試行した。そして数時間考え続けた彼は、不意に目を開くとそのまま後ろへ倒れた。考えることに頭が疲弊して、何も思い浮かばないほどになっていた。シアに分かるのはただ倒れた時の痛みと、手の届かない場所から彼を照らす月だけだった。その月へ手を翳し、影のつく手を遊ばせるようにしていたと思えば、さっと下ろして腕が床に落ちる音が響いた。その痛みに怯むようにシアは起き上がると、少し赤らむ手の甲を見て不意に何かを思い付いた。彼は筆を取ると、手の甲と掌へ魔法陣を描いた。