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城を出て冷たい風に当たろうとも、気の晴れないままシアは法院へ戻った。そうすると、いつも以上に活気づく魔法使い達で、広間は賑わっていた。それを不思議に思いつつも彼が使用している机まで来ると、山になっている筈の書物が整理されていた。そしてその真ん中に、纏められたであろう書物が置いてある事に気づいたシアは、それを手に取り机に腰掛けた。違和感無く読み進め書物を閉じようかとした時、「如何でしょう」と彼は声を掛けられた。シアが書物を閉じると、右側にヒスイが立って居た。
「流石だ。城へ届けるのが、勿体ない」
「血の研究にも、進展がありました。次は他への渡血を行います」
「……そうか。これらも、纏められないか」
シアが整理された殴り書いた物を見て言うと、「そうする他、無いようですね」と、ヒスイは言って両腕で抱えて書物の一部を持って行った。そしてシアイが安堵する様子を、遠くから魔法使い達が覗いていた。その夜シアはまたひとときも無駄にしないように、魔法陣や影を扱う魔法をより一層想像していった。それから数日後、城内の広間にセイレンの声が響き渡った。
「嫌よ、絶対に嫌!どうして急に隣国の方との、婚姻を結ばなければならないのよ」
「直ぐにと言うことではない。良い縁になればという話だ」
「私はシアイ様と誓を結びました。お断りします」
「その様な幼事には付き合わぬ。一度会え」
その後も彼女の泣き喚く声が響き渡り、その話は法院へも直ぐに聞こえてきた。そして夜になりシアが顔を見せると、魔法使い達から話を聞いた彼は直ぐに城へ向かった。